第百六十六話 アイスワイバーン、華麗なターン
しばらく滑っていると、水色のワイバーンが飛び回っているのが見えた。
近くまで行ってみると、その水色が氷の塊であることが分かった。
「あれは……」
「アイスワイバーン、鋼鉄の氷で覆われたワイバーンだ」
見た目は確かにそんな感じだ。
……多分アレに突撃されたら死ねるわ、普通に。
「昇! 来るぞ!」
「おう! 迎え撃つぜ!」
奴はこちらに向かって水色のレーザービームのようなものを放ってきた。
俺たちは滑走してそれを避けた。
あぶねぇ……スケートスキルじゃなかったら死んでたわ。
奴がビームを放った跡地には……氷の柱が立っていた。
「アレを食らったら一瞬で凍死するぞ! 動き回って攻撃の隙を見極めろ!」
「あぁ!」
俺たちはアイスワイバーンの周りを滑走し始めた。
奴は俺たちを狙って攻撃を仕掛けようとするが、こちらの動きについて行けないのかそこら中を飛び回っている。
おいおい……その攻撃する隙がなかなか来ないぞ……?
「シェダル! これどうやって攻撃すればいいんだよ! 俺らの武器ってこの斧しかないじゃねぇか!」
「落ち着け! 攻撃する隙はいずれ来る!」
「いずれ!?」
いずれってなんだよ!
……シェダルは攻略法を分かっている筈だから恐らく合っているのだろうが……少し落ち着こう。
ふとシェダルの方に目をやると……。
「そーれ、3回転アクセルだ!」
氷上の上を飛んで回転していた……。
「おい! 遊ぶなよ!」
「いいじゃないか! お前も飛んでみろ!」
「戦いに集中しろよ!」
なんなんだ……一体……すると、回転したシェダルに向かって、奴が突撃してきた。
「危ない! シェダル!」
「大丈夫だ!」
シェダルは突撃してくるアイスワイバーンを……回転ジャンプで飛び越えた。
「どうだ? 私の大技は!」
「魅せプレイしてないで攻撃しろよ!」
「いいからお前も飛べ!」
「はぁ!?」
なんで俺が飛ばなきゃいけないんだ……。
えぇい! ここで滑走してても疲れ果てるだけだ! 飛んでやる!
俺はシェダルの真似をして回転ジャンプをした。
すると……
「昇! 来るぞ!」
「え? うおぉ!?」
奴が突撃してくる! やばい!
どうしよう……そうだ! ここもシェダルの真似をしよう!
奴はこちらに射程を合わせて突撃してくる。
俺はいつぞやの、剣さんがワイバーンに乗っかって攻撃を仕掛ける場面を思い出した。
……このまま奴の上に乗っかって攻撃を仕掛けよう!
奴はこちらに向かって突撃してくるのを見て……俺は回転ジャンプをした。
そして……俺は奴の氷の体に乗っかることに成功した……が。
「うおぉ!? これめっちゃ酔う! 助けて!」
「踏ん張れ! 攻撃をしろ!」
奴は俺を乗っけたまま飛び回っている。
酔い止め薬は飲んできたのだが、それでも揺れまくっているおかげで内容物がすぐにでも出そうだ……。
やばい……目線の先がぶれまくってて……
「おええええええぇぇぇ……」
俺は我慢できず……リバースしてしまった。
最悪じゃねぇか! ……好きな女の前で吐いた挙げ句、その内容物をこいつの体に……
……あれ? こいつの体が……溶けてる?




