第百六十一話 得た信用、俺もそうしよう
「羽田さん、娘さんを……俺たちを信じていただけないでしょうか?」
……ここは俺も言おう。
「俺も……翔琉と同意見です、信じてください」
「私からもお願いします」
シェダルも頭を下げてお願いをした。
……悠里のお父さんに届くのだろうか?
「……翔琉くんが言うなら、信じてあげよう」
「ありがとうございます」
「ただし、翔琉くん」
「はい」
「……悠里を、守ってあげてくれ」
「……はい!」
悠里のお父さんは翔琉の言ったことに納得したのか……基地の中に戻っていった。
「さて! 後は俺たちに任せて、お前らは体を休めててくれ!」
「何かあったら連絡するね」
「ありがとうございます、剣さん、春香さん」
俺たちは礼を言って、基地の外を出た。
ふぅ……一応悠里の家族には公認に……なったのかな?
◇
基地に門に、悠里が寄りかかって待っていた。
「……パパ、なんか言ってた?」
「あぁ、俺たちが事情を説明したら納得してくれたよ」
「……そう」
いつものテンションが高い悠里と違うので、なんだか不安になる。
翔琉は悠里をエスコートし、バギーに乗せた。
「それじゃ、またなんかあったら連絡頼む」
「おう!」
「気を付けて帰れよ!」
「昇とシェダルちゃんも、気を付けて!」
翔琉は手を振って、バギーを走らせた。
悠里は終始下を向いていた。
……大丈夫かな、悠里。
『何でそういう話になったのかは分からないけど……ウチは昇くんが昇くんらしくしていればいいと思うよ! そのうちそういうのは分かるって!』
『それにウチらまだ高校生でしょ? まだそういうのなんて分かるわけないじゃん! でしょ?』
……悠里に言われたことをふと思い出す。
俺らしく……か。
悠里はああ言ってくれたけど……俺はやはり、シェダルに認められるような男になりたい。
でも、悠里の言ったことにも一理ある……俺らしく、男になろうかな……。
「今日のお前、少し変だぞ」
「え?」
考え事をしていると、シェダルがそう言った。
「何かあったのか? 言ってみろ」
「……」
……男らしさ、大人らしさを2人に聞きに行って、戦闘中も、そして今も、そのことを考えていただなんて、言えるわけがない。
戦闘でも援護されっぱなしだったし……と言っても最後は決めたけどさ、翔琉と一緒にだけど。
「ほう、言わないつもりか」
「……」
俺は何かを察し……両手を広げたシェダルを避けた。
……いつもの抱き癖だ。
「こんな所で抱くんじゃねぇよ!」
「なんだ? 好きな女に抱かれるのは嫌か?」
「嫌……じゃねぇけど、こんな所でやるなよ!」
「ほう? 戻ったらいいんだな?」
「……」
シェダルはニヤニヤしながら俺をからかってくる
こいつ、本当に……。
「だから子ども扱いすんなよ!」
「お前は子ども! 何度も言わせるな!」
「そうかよ!」
俺は恥ずかしくなって、目線を逸らした。
全く、大人ってなんだよ……。
「さて、冗談はここまでにして、私たちも帰ろう、昇」
「……あぁ」
シェダルは転移スキルに変身した。
それにしても悠里、大丈夫だろうか? ……お父さんの事で何かあるのかな?
「おい、昇! 早く入れ!」
「あ、すまん」
転移ホールに入っている間、俺は悠里のテンションが気になって仕方がなかった。
◇
「それじゃあ、またな、悠里」
「……うん」
翔琉は悠里を喫茶店まで送った。
悠里は未だ、元気が無い状態だった。
「……ごめん、翔琉。気を遣わせちゃって」
「いいって! それよりも、今は体を休めよう、な? 変身して疲れ溜まってるだろ?」
「……翔琉の方が疲れてるでしょ?」
「ま、まぁな!」
悠里は翔琉と話をすると、若干元気を取り戻したのか、笑みを浮かべた。
「じゃあな!」
「うん! 翔琉も道中気を付けてね!」
「おうよ!」
翔琉は手を振り、バギーを走らせた。
悠里は喫茶店に入り、帰宅したことを中にいる母親に言った。
悠里は店のカウンターに座り、父親の事を考え始めた。
『悠里! 大丈夫か?』
『悠里……お父さん、頑張ったよ……』
「……パパ」
悠里は過去の事を思い出し……涙を浮かべた。