第百五十五話 砂糖は茶色く、君は君らしく
「それよりコーヒー飲んでよ! ママが淹れてくれたんだから!」
「あ、うん」
俺は脇にある砂糖を取った。
……あれ?
「この砂糖、茶色くね?」
「茶色い方が甘いし健康にも良いの! ママがそう言ってた!」
「へぇ~」
白い砂糖しか見たことなかったので、少し驚いてしまった。
料理の素材にうるさい叔父さんは使ってるのかな? 間近で見たことないから分からないけど。
翔琉を見ると、ブラックのまんま飲んでいた。
これはいけない、こういうところで男なのかそうじゃないのか、が分かれるのではないか?
ここは俺も……。
「……苦っ!」
「おいおい昇……無理しなくていいんだぜ?」
「昇くん、無理しなくていいよ! ウチも砂糖入れるし!」
気を使わせてしまった……というかこの状況、砂糖入れようとしたけど、翔琉の真似して失敗したのがバレバレじゃねぇか。
恥ずかしい……。
「それで、話を戻すけどさ、そもそも男らしさとか大人とかって、それって誰かが決めるものだと思うか?」
「うーん……」
そう言われればそうだけど……でもなぁ……。
「なーんだ! そんな話? 別にいいじゃん! 昇くんは昇くんで!」
「悠里?」
「何でそういう話になったのかは分からないけど……ウチは昇くんが昇くんらしくしていればいいと思うよ! そのうちそういうのは分かるって!」
「俺らしく……?」
俺らしいってなんだ? 意味が分からん。
「それにウチらまだ高校生でしょ? まだそういうのなんて分かるわけないじゃん! でしょ?」
「まぁ……そうかな」
高校生……か、シェダルが言うようにまだまだ俺らは子ども。
いずれ分かると言えば、そこまで長い道ではないのかな?
「翔琉だってまだまだ子どもなところとか女々しいところあるし!」
「お、おい……」
翔琉が……子ども?
「気になるな、それ」
「でしょ? 実はねーこの間遊園地にデートした時―……」
「お、おい悠里……」
悠里が話そうとしたその時、店内で流れていたラジオの音楽が、急に止まった。
突然の事に、俺たちは黙ってしまった。
『速報です、モンスター人間の情報が入ってきました、場所は……』
「翔琉! 悠里!」
「おう!」
「任せて! ママ! ちょっと行ってくる!」
俺たちは外に出た。
「そういえば、愁と薫にも……」
「あの2人はまだ入院中! ウチは大したことなかったけどあの2人は結構怪我が酷かったから……」
「そうだった!」
「まぁいい! 俺たちだけで行こう!」
翔琉はポケットからマシンラビットを取り出す。
……ちょっと待て。
「これ2人乗りだから俺乗れなくね?」
「転移スキルの鍵は?」
「シェダルしか持ってないんだよ……。」
すると、携帯の着信音が鳴る……俺のだ。
『昇! 今どこだ?』
「シェダルか!? 今悠里の喫茶店の前!」
『住所を言ってくれ! そこまで向かうから!』
「お、おう! 場所は……」
俺はシェダルに住所を伝える。
早くしないとヒューモンスターが……。
「俺たちは先に行こう!」
「うん! 昇くん! 先行ってるよ!」
2人は現場に急行した。
俺はその後姿を見つつ、シェダルを待った。