第百四十七話 いないメンバー、自殺志願者！
噂をすれば何とやら、俺たちは声がする方へ走る。
声の発生源に到着すると、剣さんと春香さん……それと鎚を持つメンバーさんとシスターのような恰好をしているメンバーさんがいた。
彼らが戦っているのは……。
「『ワイバーン』だな。」
「あの4人で大丈夫か？」
「介入すると邪魔になる可能性がある、ここは見守ろう」
「あぁ」
シェダルの提案に乗り、俺たちは岩肌の陰に隠れ、様子を見ることにした。
接近戦が困難なのか、剣さんは攻撃できずにいた。
一方で春香さんは抜群の弓さばきで、ワイバーンを圧倒している。
「見たところ、大丈夫そうに見えるけど……。」
「いや、私からするとこれは剣さんたちが不利だ」
「そう？」
「あぁ、いくら春香さんの弓が命中しているとはいえ、近接担当の2人の攻撃が当たっていない、おまけに回復担当のあのシスターの人は味方の攻撃の甘さが仇となって、避けるのに必死な状態だ」
「そう考えると、回復担当っている？」
「馬鹿か！ 薬を持ち歩いていたら荷物が嵩張るだろう！ おまけにもし薬が切れたらどうするつもりだ？ 回復役を雇えるなら率先して雇った方がいいに決まっているだろう！ 回復役を切り捨てるパーティなんてただの自殺志願者の集団だ！」
「そ、そうか……」
確かに、そう言われると回復役は重要だな。
自殺志願者の集団って表現は言い過ぎだと思うけど……。
っていうか、回復スキルの人が冒険者の腕輪で変身するとああいう姿になるんだ、セントレアコーポレーションの人ってコスプレ事業も始めた方がいいんじゃないか？
「よし！ 俺を吹っ飛ばせ！」
「い、良いんですか？」
「安心しろ！ 俺は死なない！」
「じゃ、行きますよ……」
剣さんは鎚を持っているメンバーと何やら作戦会議をしているようだった。
吹っ飛ばせってどういう事だろう？
すると……。
「おい！ あれ正気かよ！」
「まぁ……考えとしては間違いではないな……」
「マジかよ！ あんなん真似できねぇよ……」
何が起きているのかというと、剣さんは携帯していた盾を持ってしゃがみ、鎚スキルの人がそれをゴルフのような感覚で吹っ飛ばそうとしているようだ。
一歩間違えば大事故じゃねぇかあれ！
「い、行きますよ！」
「どーんと行け！」
やばい……見てられない……。
俺は思わず目を閉じた。
「おぉ！ 凄いじゃないか！ 剣さん、ワイバーンの上に乗ったぞ！」
「嘘だろ！？」
アレで行けるってギャグ漫画かよ！
確かに目を開けてワイバーンを見ると、剣さんがワイバーンの首元に乗り込み、剣を突き刺そうとしていた。
「お前ら！ 離れろ！」
剣さんがそう叫ぶと、メンバーが離れていく。
「おらぁ！」
剣さんはそう叫び、剣を首にぶっ刺した！
そしてワイバーンは血を噴き出しながら墜落していき……動かなくなった。
