第百四十四話 マグマスライム、岩になる
「さ、いざ第9階層へ!」
「よっしゃ!」
俺たちは第9階層への一歩を踏んだ。
これまでのダンジョンとは違い、大きいマグマの湖がお出迎えし、所々に鉱石の柱が点在していた。
そして……。
「おいおい、もうモンスター出現かよ!?」
「昇! 落ち着いて戦闘態勢を整えろ!」
「お、おう!」
俺たちの目の前に現れたのは、毒々しい赤と橙色の模様をしたスライムだった。
「こいつは『マグマスライム』だな! さぁ昇、弱点は分かるか?」
「単純に考えると水だけど……」
今までのスライムは熱さが弱点だったけど、こいつは明らかに熱は大好物のように思える。
そんな風に考えていると、マグマスライムは、こちらに目掛けて突進してきた。
「うわぁ!? ホラーかよ!」
俺は思わずそう叫んだ。
ただでさえ普通のスライムはこちらに張り付いてきて気持ち悪いのに、こいつに張り付かれたら、一瞬のうちに全身やけどで死ねる自信がある。
とりあえず魔法スキルだ!
俺は魔法スキルの鍵をケースから取り出し、腕輪に刺した。
『魔法スキル!』
その瞬間、マグマスライムは再度こちらに目掛けて突進してくる。
ロック調の変身待機音が、ダンジョン内にこだまする。
俺はそのまま、掛け声を言って、鍵を回した。
「スキルチェンジ!」
『スキル解放! 唱えすぎる! 魔法スキル!』
俺は魔法スキルの姿になった。
金の衣装がマグマによって輝いている。
変身するや否や、俺は水をイメージする。
滝のような……海のような水を、このマグマスライムに!
俺は消防車の放水の如く、杖から水を放射した。
すると、予想通り、マグマスライムは岩のような姿になり、動かなくなった。
「よし! 次はこれ!」
俺はケースから、鎚スキルの鍵をケースから取り出す。
俺は魔法スキルの鍵を外し、その鍵を刺した。
『鎚スキル!』
「スキルチェンジ!」
『スキル解放! 潰しすぎる! 鎚スキル!』
俺は巨大な鎚を装備した姿になる。
俺は固まったマグマスライム目掛けて、鎚を振り下ろした。
……が。
「かった!」
あまりの硬さに、衝撃が腕まで響いてしまった。
腕を伝って脳みそにまで振動が伝わり、気絶しそうになってしまった。
「普通に崩すそうとするな! 必殺技で崩せ!」
「あ……そうか……」
俺は振動で気絶しそうになった体を制御しつつ、鍵を回した。
『鎚スキル必殺!』
腕輪から音声が鳴り、鎚にパワーが溜まっていくのが分かった。
俺は再び鍵を回した。
『鎚スキル! 潰しすぎフィニッシュ!』
俺はまた振動が体を駆け巡るのではないかという恐怖がありつつも、思いっきり鎚を振り下ろした。
すると、元マグマスライムの岩は粉々になった。
「ふぅ……何とかなった……」
俺は第9階層初めての戦闘の勝利に、少し安心した気持ちになった。
「さ、欠片を回収するぞ」
「お、おう!」
俺たちは収納スキルの姿になり、粉々にした岩の回収を始めた。