第百四十二話 おはよう! コンプリート?
「んん……?」
俺はゆっくりと目を開ける。
確か……ダンジョン探索をして……第9階層手前まで来て……安息の地まで来て……それで……。
「!?」
俺は我に返ると、シェダルの頭を包み込むように抱いていた。
なななな……なんだ!?
そ、そういえばあの後……俺はシェダルの思いを伝えて……それで……。
恥ずかしい! 今すぐ離れたい! でも……離れたくない、というか離れられない。
俺がシェダルから離れようと思っても、シェダルは俺の体をがっしりと掴んで離さない。
シェダルは安心した顔で俺の体に蹲り、寝息を立てていた。
そういえば、寝る前に言われたっけ……。
『この間は私が悪夢からお前を守ったが……今度は私を悪夢から守ってくれないか?』
お、俺……シェダルを悪夢から守れた……のか?
見たところ、シェダルは心地よさそうだけど……。
……というか、シェダルの体、相変わらず暖かいな。
掛け布団はそこまで厚くはないんだけど、シェダルの体のおかげで、まるで毛布を被っているかのように暖かい。
……あーだめだ! 俺としたことがまたいやらしい考えを……。
俺はシェダルのために、一人前の男になると決めたんだ! シェダルはそれを待ってくれると言ってくれた。
俺はこいつが起きるまで、悪夢から守らなきゃいけないんだ! ……ていうか、冷静に考えて、どうやってこいつを悪夢から守ればいいんだ?
さっきはノリで抱き締めて守ったように思えた……けど、ただそれは添い寝しただけじゃないのか?
あぁもう! どうすりゃいいんだよ!
「ふぁー……んぅ~?」
あ、やばい! シェダルが起きた!?
シェダルはゆっくり目を開け、こちらに目を向けてきた。
「おはよう……昇……」
「あ、あぁ……おはよう……」
俺は心臓バクバクの中、挨拶を返した。
「んぅ~?」
「お、おい……」
シェダルは寝ぼけているのか、猫のようにこちらの体に向かって頭を擦り付ける。
「お前……体……暖かいな……」
「あ、あぁ……」
「ふふ……心臓……バクバクじゃないか……」
「だ、誰のせいだと思ってんだよ!」
シェダルはこちらに暖かい笑顔を見せる。
……本当に猫みたいな奴だな。
「ははは……顔真っ赤だぞ?」
「……」
「ふふ……お前、意識しすぎだ」
こいつ……俺の事を子どもだと思ってるとはいえ、少しは俺が男だというのを考えろよ……。
誤魔化すために、俺はシェダルを強く抱き締めた。
「おい……どうした?」
「お前……いくら俺を子どもだと思っていても、俺はお前の事、一人の女としてみていることを考えろよ……」
「そうだったな……でも、私が寝ている間、ちゃんと悪夢から守ってくれたろう?」
「そ、そうか?」
ミッションコンプリート……ってことでいいのか? よくわからんが……。
「お前は一回り男になったな……褒めてやる」
「お、おう……」
シェダルは強く抱き締める俺の腕を触った。
俺はそれに従い、腕の力を緩めた。
シェダルは俺と目を合わせるように、こちらに近づいた。
「いい子だ……」
「だから頭撫でんなって!」
シェダルは俺を優しく撫でる。