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閑話 科学者の過去 後編

「はぁはぁ……」


 私はどこかを走っていた。

 走ったところで逃げ場がないことは分かっていた。

 だが走り続けた、それしかないと思った。

 気が付くと、日が暮れていて、私は海岸の前にいた。

 ……もはや逃げ場所はない、どうすれば。

 そう考えていたその時、神は私を見捨てなかった。

 突如、地震が発生した。

 震源はどこかは分からないが、ここからそう遠くはないのは分かった。

 あまりの揺れの激しさに、私は地面に膝をついた、立っていられなかったのだ。

 揺れが収まり、私は海を見ていた。

 そこで見えたのは……


「なんだ……あれは」


 そこまでなかった筈の地表があった。

 初めは蜃気楼を疑ったが、ここまではっきり見える上に、地表から建物からの灯りが見えたため、そうではないと確信した。

 私は、神が用意してくれた逃げ道だと判断し、腕輪を使ってその地に向かうことにした。


『飛行スキル!』


 持ち手に羽が描かれている鍵を刺し、私は鍵を回した。


『スキル解放! 飛びたすぎる! 飛行スキル!』


 私は天使のような姿になり、その地表目掛けて無心に飛び続けた。

 途中で疲れそうになったが、最後の希望だと信じて羽を動かし続ける。

 あと少しであの土地に……


「まずい! 羽が!」


 羽が限界を迎え、消えようとしている!

 頼む! 持ってくれ!

 私は必死に飛んだが……途中で羽が消えてしまい、海へ落ちた。



「……ここは、どこだ?」


 気が付くと、私は波に打ち上げられていた。

 幸い、地表間近で落ちたこともあって、すぐに流れ着いたようだった。

 私は立ち上がり、鍵を外して、明るさのある場所に歩き出した。

 目の前に見えたのは、明らかにウトピアではない建物だった。

 高い塔のような建物、見たこともない石でできた屋根の家、眩しいくらいに明るい看板。

 私は思わず見とれてしまった。

 高い塔のような建物では、巨大な四角い何かがあった。

 人々はそれに見とれているのが分かった。

 四角い何かから、音声が流れ始めた。


『私は今、千葉県の九十九里浜にいます! ご覧ください! 突如として、地面が出現したのです! この近くでは火山活動もなく、その兆候もなかったということで、全てが謎に包まれています! また、ここからでも、文明でしょうか? 建物が見えます!』


 ……言葉は分からなかったが、映像には、ウトピアの地表が見えているのが分かった。

 続いて、四角い何かが、違う何かを出し始めた


『はい! こちら大阪市の中心部です! ご覧ください! 突如として謎の洞窟が……うわぁ!? なんだあの生物は!? 大阪市は今! 大変な状況に……』


 どうやら、ダンジョンのを映しているようだった。

 辺鄙な武器でダンジョンのモンスターと戦うのを見て、私は困惑した。


 ……ここまでで考えた私の推理はこうだった

 ここは恐らく、「ダンジョンの無い世界」だ、そして原因は不明だが、「ウトピアとこの世界が繋がってしまった」、……最初はそんなわけがないと思ったが、人々が困惑している姿を見て、そう確信せざるを得なかった。

 やがて一部がパニックになり始めた。

 人々はそれに乗せられ、どこかの建物へ集まり始めた。

 泣いてしまう者、なにかに怒り出す者、呆れて座り込む者。

 言葉が分からなくとも、この世の終わりだと、ここの人々は思っている、そう考えた。

 私はパニックの中、ダンジョンへ入ろうと思った、恐らく私はウトピアには戻れない、ならば せめて、この世界のためになるようなことをしよう、そう考えた。

 ……私は歩き続けた、ダンジョンのある場所まで、長い長い道のりだった。

 ようやく、それらしきものを見つけた、この国の軍隊と思われる者たちが厳重に警護していたのでよく分かった。


 私は中に忍び込んだ、中に軍隊は入っていない様子だった。

 すかさず私は、モンスターの退治を始めた、別の土地でモンスターを倒すのは、かなり新鮮だった。

 モンスターを退治し収納スキルに部位を収める、ウトピアでやっていたものと同じだ。

 大方、第一第二階層は潰し終わったところで、ここの土地の中継地点を作ろうと考えた。

 私は色んな鍵を出した。

 先ずは「削岩」スキルで穴をあけ、そこに「幻想」スキルで青空や花畑を描き、「魔法」スキルで、鍵スキル持ちしか入れないように調整した。

 その後、その中で「建設」スキルで神殿を作った、合わせて2日くらい掛かったかな。

 こうして、通称「安息の地」が完成した。

 その後、ダンジョンの奥の奥まで進み、最下層手前まで着いたところで、打ち止めにした。


 そして、地表に出て、まずはこの国の言語を覚えようと思った。

 混乱の中、私は図書館に足を踏み入れ、言語の本を読み漁った。

 3日ほどで、字の読み書きができるようになった。

 そして、四角い何かからの音声を聞き取ったり、道行く人の会話を盗み聞きして、会話の勉強をした。

 なにもかもが新鮮で、あっという間に時が過ぎていった。

 そして、ある日、四角い何かから速報が入る、その頃は全ては聞き取れなかったが、ウトピアがこの国に軍事支援をするというのは分かった。

 私は、こう考えた、「これはまさか、ウトピアの何者かの陰謀ではないか?」と。

 私は数日考え、「この国にもスキル社会が来る」と判断し、安息の地で一度眠る決断をした。

 かつて学会発表で恥をさらしたもう一つの腕輪を祭壇に入れ、生命管理装置に入った。

 長い眠りになり、下手をすればそのまま死ぬかもしれないとも考えたが、追われたウトピアで死ぬよりも、この土地で死んだほうがいいと考え、腹を決めた。

 そして……長くなると思った眠りから覚め、昇と出会った。


 昇はあの女と似ているところがたくさんあった、だからだろうか? 私はこいつの成長していく姿を、こいつがいつか来るであろう死ぬ時まで見たいと思った。

 昇……お前は私の予想を上回る形で成長している、いつか、お前とは別れが来るかもしれないが、私は、お前の命が燃え尽きる最後まで、ついていくつもりだ。

 沢山悩め! そして沢山吸収しろ! もしも挫けそうになっても、私が支えてやるからな……昇。

また長くなってしまいました。

申し訳ございません。

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