第百三十九話 めちゃくちゃ痛い! マッサージ!
「さ、服を脱げ!」
「おい掴むなよ! 自分で脱ぐから! つーかそれセクハラだろ!」
「だから言ってるだろう? 子どもの裸を見ても大丈夫だって」
「良いっての!」
「はは! 顔真っ赤じゃないか!」
「……」
こいつ……本当に……。
俺は服を脱ぎ、上半身裸になる。
「よし、こっちも準備をするからな!」
『回復スキル!』
「スキルチェンジ!」
『スキル解放! 癒したすぎる! 回復スキル!』
シェダルは変身動作をし、回復スキルの姿になる。
以前も見た、看護師のような姿だ。
「さ、横になって背中を向けろ」
「おう……」
俺は言われた通り、背中をシェダルに向けた。
「よし! 診察開始だ!」
「診察って……おい!」
シェダルは俺の体に圧し掛かった。
急になんだよ!
「乗っからないと診察できないだろう? それとも……重いか?」
「重くはないけどさ……」
「じゃ、いいだろ」
「……」
シェダルはやはり、何とも思っていなかった。
「よーし、じゃあ先ずは背中の上を癒すからな、力抜けよ?」
「おう……」
シェダルの指が俺の背中に触れ、マッサージを始める。
……って。
「いって! やっぱ痛いって!」
「我慢しろ! 男だろう!」
「だからそれ……っていって!」
やはり痛かった。
回復スキルって痛くしないといけないルールでもあるのか?
「よし! 次は背中の中央だ! それ!」
「いったい! 痛い! めちゃくちゃ痛い!」
力を入れている感じはしないのだが、めちゃくちゃ痛い。
癒しというより拷問だろこれ!
「よし! 背中は終わりだ!」
「はぁ……はぁ……やっと終わった……」
これでマッサージも……。
「んじゃ、次は足の裏だ!」
「足の裏!?」
「行くぞ!」
「ちょっと待っ……いてー!」
俺は今、悶絶している。
目から涙が出てきて、歯を食いしばっている。
これで癒されるって冗談だよな!?
「これで足の裏は終わりだ」
「はぁはぁ……もういいだろ?」
「ダメだ、次は肩だ!」
「もうやめて……」
俺の声はシェダルには届かず、シェダルは手を俺の肩に置いた。
「よし! 行くぞ!」
「もっと優しくしてくれ……」
「これ以上は無理だ!」
「そんなぁ……痛い! 痛いって! これ肩の骨粉々になる!」
「ならない! 我慢しろ!」
「もう勘弁してくれ……」
シェダルは俺の肩を「優しく」揉み始めた。
関係ないけど、指圧は英語でも指圧らしい……もはやこういうどうでもいいことを考えないとやっていけない。
めちゃくちゃ痛い拷も……マッサージが終わり、シェダルは鍵を外し、俺の横に寝始めた。
「どうだ? 気持ちよかったろ?」
「痛い……」
「おいおい泣くな!」
めちゃくちゃ痛かった……ある意味戦ってた方がマシだ。
「ほらほら体は軽くなったろう?」
「そんなわけ……本当だ」
体を動かすと、ダンジョンに入る前よりも軽くなったような気がした。
癒されてはいるようだ……その代償がデカすぎる気がするけど。




