第百三十八話 君の感情、服を脱ごう!
「まぁ、戦闘続きでヘロヘロだろう……一旦安息の地へ行くか?」
「あ、あぁ……」
「よし、そうと決まれば早く行こう!」
シェダルは立ち上がり、転移スキルの鍵を取り出した。
『転移スキル!』
「スキルチェンジ」
『スキル解放! 移りた過ぎる! 転移スキル!』
シェダルは巨大なマントに身を包んだ。
そして俺の腕を掴んで、起き上がらせた。
「大丈夫か?」
「……ビンタされたところが一番痛い」
「ほーれ、よしよし」
「……やめろよ」
「嬉しんだろ?」
「……」
シェダルは再び笑った。
シェダルは本当に表情が豊かだ。
こちらも自然にそれに乗せられる。
魔族の血を引いているということは、そういう魔力があるのだろうか?
……考えすぎか。
「さ、行くぞ!」
「おう!」
シェダルは転移ホールを作った。
俺たちはそのホールに飛び込み、安息の地へと向かった。
◇
「よし! 到着!」
「……」
「どうした? 吐きそうか? 吐くならトイレで吐けよ?」
「……あぁ」
シェダルの心配そうな顔。
その顔を見ると、こちらも同調したくなる。
俺はやっぱり……。
「さ、ベットで休もう、運んでやる。」
「あぁ……。」
シェダルは俺を抱え、神殿の中へと運んだ。
抱えられながら、俺は考える。
シェダルはやはり、俺の事は子ども同然で、そういう感情に芽生えるわけが無いのだろうか?
シェダルは150歳で俺は今年で16歳。
……10倍以上年齢が違うともなると、やはりおかしいよな?
日本ではそうだが、ウトピアでは珍しくないのか?
どうなんだろう……今シェダルに聞いてみようか? でも、それだと変な風に思われるかな?
だがシェダルは俺の事を子どもみたいだと言っているから、単に無邪気な質問と受け取るのだろうか?
……やばい、なんか考え事をしていたら、今シェダルの首に架けられている俺の腕の脈が速くなっていないか心配になる。
心臓の鼓動はかなり高鳴っているのが分かる。
シェダル……俺は……。
「さ、着いたぞ! 寝室だ」
「へ!?」
「……どうした?」
急に話しかけられたので、俺は思わず大声を出してしまった。
「あ、その……ごめん」
「そうか? ならいいが」
シェダルは部屋のドアノブをひねり、部屋に入るや否や、俺をベッドに座らせた。
俺は心臓の鼓動を抑えようと胸を抑えた。
「よし、服を脱げ」
「あぁ……は!?」
急にシェダルが服を脱げなどと仰ってきたんですけど!?
なんですかいきなり!? 俺はびっくりして、またも大声を出してしまった。
「そう驚くな、ちょっと疲れているようだからマッサージしてやろうと思ってな。」
「ま、マッサージ!?」
「あぁ、こいつを使うのさ!」
シェダルはそう言って、回復スキルの鍵を取り出す。
まさか……。
「それ痛いやつだろ!? 嫌だよ俺! つーか怪我は鍵を外せば……。」
「違う! こいつは人を癒すこともできるんだ、便利だろう? 痛くはしないから安心しろ」
「あ、あぁ……」
なるほど、それでマッサージをすると癒されるという事か。
……なんかまたいやらしい事を想像してしまった。