第百三十五話 今って昼? 写真を撮る
「あーそういえば朝飯美味かったなー、流石卓郎さんの料理だ」
「朝飯!? 今なんでそんな話を……」
「昇! 昼は何が食べたい?」
「昼ぅ!?」
今はそんな話してる場合かよ! なんで飯の話を……。
「っていうか今って昼だっけなー、ダンジョンにいると時間の感覚が無くなっちゃうよなー、この間も気が付いたら夕暮れだったし、ほんと、困っちゃうよなー」
「……時間の感覚?」
シェダルは棒読みで何かを語る。
そういえばこのダンジョン、常に真っ暗だよな。
確かに時間の感覚が……。
「……真っ暗?」
「ふふふ……」
シェダルは笑っていた。
まさか……。
「奴の弱点は光か!」
「よくぞ気づいたな!」
シェダルは俺を指差し、「ご名答!」と言いたげな顔をした。
しかし光か……どうやったら放てる?
魔法スキルじゃイメージしている間にやられちまう……。
「おい! 明るい物ってなんだよ!」
「さぁ?」
「さぁ!?」
ここに来てまたすっとぼけるのかよ!
えぇと光……光……何がある!?
ヴァンバットは考えている間にも、こちらに何度も激突してくる。
シェダルは呑気にスマホをいじっていた。
おい! こんな時に何やってんだ!?
そんな事を考えながら攻撃を避けると、シェダルの隣りあわせの状態になった。
するとシェダルは、突然、俺の肩を掴んだ。
え!? 一体何!? いきなり抱き癖発動!?
「そーれ昇、チーズ!」
「……って、写真撮ってる場合かよ!」
シェダルは、スマホの自撮り機能で撮影を始めた。
何やってんだよ一体!?
俺の目はフラッシュで辺りが点滅しているようになった。
余計に避けづらくなったじゃねぇか!
「いやぁ、最近流行ってるインクトックに写真を上げようと思ってな」
「上げんじゃねぇよ! つーか今は写真撮ってる……」
待てよ、写真?
そして、さっきシェダルは写真を撮る時フラッシュを焚いていたよな?
フラッシュ……写真スキルか!
「その顔……気づいたな。」
「お、おう!」
なんだよ、なんやかんやヒントをくれるんじゃないか。
俺はケースを弄り、持ち手にカメラが描かれている鍵を取り出した。
……というか、ウトピアにもカメラはあるんだな、でも仮にも大国の一つだし、魔道具も作れるんだから当然あるか……。
『写真スキル!』
俺は攻撃を避けつつ、腕輪に鍵を刺した。
そして気合を入れるために掛け声を叫ぶ。
「スキルチェンジ!」
『スキル解放! 写したすぎる! 写真スキル!』