第百三十四話 ヴァンバット、考えてみろ!
「よし! この調子でどんどん行くぞ!」
「お、おう!」
俺たちは奥へと走っていく。
しばらく走っていくと、第9階層の入り口が見えてくる。
よし! この調子であの奥まで……。
と、その時だった。
目の前にモンスターが立ちはだかる。
そのモンスターは、巨大なコウモリのようだった、しかし顔はコウモリというよりも、オオカミのようだった。
その牙は、まるで象の物のように鋭く、アレに噛みつかれると恐らく、一瞬でお陀仏だと見て分かった。
「奴は……」
「『ヴァンバット』だな」
ヴァンバット……教科書で見たことがある。
デカいコウモリの怪物、獲物の血液と肉を食べる。
「コウモリって確か超音波で獲物を見つけるんだっけ?」
「そうだ、ヴァンバットも同じような生態だな。」
超音波ってことはこっちの居場所も丸わかりだ……。
こんな会話をしている間にも……。
「避けろ! 昇!」
「どわぁ!?」
ヴァンバットがこちらに向かって突撃してきた。
「ねぇ! こいつの弱点って何!?」
「自分で考えてみろ! 私が言ったら何にもならないぞ!」
考えろって……。
コウモリの弱点ってなんだよ!?
「そうだ! スマホで調べれば……」
「襲われてるのにどうやって調べるつもりだ?」
「そうだった!」
恐らく検索している間に、俺の血がすべて抜き取られ、お陀仏になっている。
そんな事を考える暇がないほどパニックになっているようだ……落ち着けよ俺!
「落ち着け! よく考えろ!」
「よく考えろ!? この状況で!? ってあぶね!」
ヴァンバットは俺らの会話の邪魔をするように襲ってくる。
「近接は無理そうだから遠距離で!」
『弓スキル!』
俺は持ち手に弓が描かれている鍵を腕輪に刺す。
弓スキル……最初に使った時は上手くできなかったけど、今回は行ける!
俺は鍵を回した。
『スキル解放! 射抜きすぎる! 弓スキル!』
俺は緑色の中世の戦士風の服装になる。
俺は矢を装填し、それを放つ。
しかし、超音波で矢の位置が分かるのか、奴は攻撃を避けていく。
「クソ! 当たれってんだ!」
命中する事を祈りつつ、俺は矢を放ちまくる。
何度か矢を放つと、奴が攻撃を見抜けなかったのか、羽に命中した。
「よし!」
奴は飛行が困難になり、右往左往しながらこちらに攻撃しようとする。
ちょっと待て。
「これ逆に狙いにくくないか!?」
「今更気づいたのか、この戯け!」
「戯けとはなんだ!」
「実際起こっていることをよく見ろ!」
どうやらシェダルは弓スキルは悪手だと知っていたようだった。
あぁ、もう! 俺のためとはいえ、放任しすぎも良くないって!
「お願いだからなんとかしてよ! シェダル!」
「普通に考えれば分かるだろ! ここはどこだ?」
「ダンジョンだろ!?」
何言ってんだこいつ? そんなん当たり前じゃ……。
「ダンジョンはどういう場所だ?」
「モンスターがアホみたいにいるところ!?」
「それもそうだが、もっと地上と分かりやすい違いがあるだろ?」
……わかりやすい違い?
なんだ!? 人間が少ない? 店が無い? 得体のしれない?
なんだ……?
俺は避けながらそれを考える。