第百二十九話 謎の送信機、シェダルの推理
「それにこれだ」
シェダルは工具を携帯のとある部品に向けた。
「これ? ただの基盤の一部ように見えるけど」
「これはどこかに送る為の送信機みたいなものだな」
「送信機?」
「あぁ、だが何の送信機かは分からん……」
確かに、一体何を送信するんだ?
「あ、もしかして……」
「電話やメールの為の物ではない、お前の携帯を分解したときにこんなものはなかった。」
「あ、そう……」
俺のあほさ加減が露呈してしまった。
「そしてこれは……モンスターのDNAを入れるケースのような物、そしてこれは……。」
「……」
シェダルはブツブツと部品について話すも、話についていけなくなった。
「あ、あのさ! シェダル!」
「なんだ? 今集中してるから黙っててくれ!」
「あ、ごめん……」
ちょっと息抜きしない? と言おうとしたが、どうやら邪魔されたくないらしい。
「いやはや、この機械の開発者……かなりの悪党だな」
「それはもう周知の事実でしょ」
「構造は大体わかったが、問題は……」
「入手先?」
「あぁ」
こんな怪しげな物、確かにどこで手に入れるんだ?
それ専門の売人がいるとか?
「そういえばお前の学校にいた生徒の証言、覚えているか?」
「確か……突然付けていた、だっけ?」
「それだ」
「それがどうしたんだよ?」
「恐らく、変身者ではない何者かが、その『突然』にあたる数秒の間に付けた……というのが私の推理だ」
「そんな数秒の間でか?」
そんなスキル、あるのだろうか?
「恐らく可能だ、これでな」
シェダルはそう言うと、作業台の上にあるケースから、一本の鍵を取り出す。
その鍵の持ち手に描かれていたのは……。
「時計?」
なんだろう……時間スキルとか?
「これは『時空』スキルだ、この鍵は未完成だがな」
「時空スキル?」
「これはユニークスキルの一つだ、時空に関するあらゆることができる、時間を止めることもできる」
「な、なるほど……」
そのスキルを持った誰かが、腕輪を取りつけたという事か。
「でも、時間を止めたのなら監視カメラとかにも……」
「時間を全体的に止めたのではなく、対象者と自身だけを止めたのだろう」
「そんなことができるのか!?」
「だから言っただろう、時空に関するあらゆることができると」
「凄いチートだな……」
「対処するなら、こちらも時空を操作して、奴を上から叩くしかないだろうな」
なんか……本当にそんな奴がいるのなら、かなりめんどくさいな……。
「本当に、そこまでして、何がしたいんだろう……」