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閑話 御曹司の過去 後編

 勇はすぐさま病院へ運ばれた。

 俺はお医者さんに勇の現状を聞いた。

 この時は、勇がすぐに良くなって、また学校で会えると信じていた。

「人がそう簡単に死ぬわけがない。」そういう感じで、楽観的に考えていたんだ。

だが現実は……甘くはなかった。


「残念だが……勇くんは……」

「そんな……」


 俺は病院の中で泣き崩れた。

意味が分からなかった。

 勇が……死んだ? 何故? どうして? 誰がこんなことをしたんだ? 誰が勇をこんな風にしたんだ?

俺はぶつける先の無い怒りと悲しみに駆られた。



 家に戻ると、父さんは部屋で仕事をしているのか、「入室禁止」の札が部屋のノブに掲げられ、母さんは居間で優雅に過ごしていた。

 俺は居間に入り、母さんに顔を見せた。


「翔琉、おかえりなさい」

「……」


 俺は言葉が出なかった。

勇が……勇が……。


「おかえり、どうかしたのか? 翔琉」


 部屋で仕事をしていた父さんが、居間に入ってきた。

俺はどうすればいいのか分からなかった。


「勇くん、大丈夫?」


 母さんが何気なく聞いてきた。

俺は正直に、勇がどうなったのかを言った。


「……死んだよ、あいつ、自分のスキルについて不安を口にして……このスキルじゃ会社を継げないとか何とか言って……それで……」


 俺は泣きながらそう言った。

それを耳にした父さんは……。


「ほう、まぁこのスキル社会で生きていくためには、そういう不安にも打ち勝たなくてはならん、翔琉、お前も将来的には私の席に座る身だ、その子のように負け組にならないようにな」

「ちょっと貴方!」


 あまりに非情な、あまりに残酷なことを言い放った。

 母さんが止めたようにも思えたが、俺はその言葉がはっきり聞こえた。


「いいか? 翔琉、スキル社会になってつるむべき相手が簡単に見極められるようになった、お前も変なスキルを持つ奴とはつるまないようにしろ」


 父さんはそう言って、部屋へ戻っていった。

スキル社会……? つるむべき相手……?

 なんでこんなゲームみたいなスキルで、なんでこんな意味不明な社会で……そのせいで、勇は……。


 俺は誓った、例えどんなスキルの奴だろうと、どんなに変な奴でも、対等に接しよう。

 俺は父さんみたいな非情な人間になんかならない、人を切り捨てるなんて最低な行為は絶対にしない、そしてもう二度と……勇みたいな人間を作らせない。

 しばらくして、中学に上がり、父さんの言うことを忠実に聞きつつも、学校では明るく振舞った。

 スキルに関係なく、友達を作った、不思議と皆、俺の周りについていった。

 そして中学の部活で、愁と親友になり、悠里と付き合い始めた。

 この2人との関係は父さんたちには黙っている、なんせ2人ともスキルは平凡で一般家庭なので、父さんたちが知ったら発狂するかもしれないと考えたからだ。

 そして高校も皆、同じ学校を志望した。

 最初は俺一人がその学校を志望していたのだが、愁と悠里も受験すると言ってきたのだ。

 2人はその学校の偏差値とは比べ物にならないくらい成績が良くなかったのだが、俺が勉強を教えたりしたら、なんと、合格してしまったのである、俺も驚いた。

 高校に上がっても、俺は友達を作った、勿論スキル関係なく。

だが、一人だけ友達になれない奴がいた、そいつは……。


「なぁ、あいつ、すぐどっかに消えるよな」


 俺はずっと一人で飯を食ったり、佇んでいる奴について聞いた。

こいつこそ、俺が今、友達になれていない奴の1人だ


「あぁ、金剛昇ね、落ちぶれた政治家の息子で、しかも『鍵』スキルなんだって、意味わかんないよね!」

「……」


 あいつ……あの時の勇に似ている気がするな……。

なんとかして、あいつとも友達になりたい。

 ……その思いが届いたのか、「ダンジョン探索」の授業であいつと同じ班になった。

しかも奇跡的に愁と悠里、そして最近友達になりそうな岩国薫さんも同じ班だった。

……こいつ、ひねくれてるところはあるけど、絶対に友達になってやるぜ!

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