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第百二十五話 みんな入院、親戚の病院

「いってー!」

「愁! うるさいよ!」

「いてーもんはいてーよ!」


 一旦鍵屋に戻った俺たちだったが、翔琉からの連絡で、病院にいることが分かり、すぐに向かった。

 病室のベッドに愁、悠里、薫が寝ていたが、3人とも元気そうで良かった。


「愁よ! 次は考えなしに突っ込むな! 死ぬぞ!」

「んなこと言ってもシェダルちゃん! あそこは行かなかったらやばかったって!」

「んもう! 結果的に何とかなったからよかったけど、ほんとに気を付けなさいよ! 愁!」

「わかったよ……」


 悠里の説得で愁は折れた。


「このくらい元気なら、すぐ退院できるだろうな」

「あぁ……翔琉、ごめんな、余計な出費を……」

「あぁ、ここは親戚が経営してる病院だから大丈夫」

「か、金持ちってすげぇ……」


 翔琉の御曹司ぶりがまたも発揮される瞬間だった。


「あの時の愁さん……かっこよかった……」

「そ、そう? 薫ちゃんに褒められると……照れるな……」

「何顔赤くしてんのよ!」

「べ、別にしてねぇよ! って痛い! 痛い!」

「ははは、何やってんだよ!」


 本当に、最高の仲間だよ、こいつらは。



 数日後の拘置所。

 意識が回復した青年は、そのまま警察に逮捕され、拘留されていた。

 そんな青年のいる拘置所に面会が来た、ラーメン屋の店主だった。

 アクリル板越しに、店主は青年に語り掛けた。


「お前……目は覚めたか?」

「……すみません、親方」


 青年は頭を下げた。


「謝る必要はねぇよ、というか謝るなら、あの商店の親父さんに言え」

「……はい」


 青年は涙を流し、項垂れた。


「何であんなことしたんだ?」

「……あの男は、このスキル社会を潰そうとしたんです、俺……スキル社会になる前は貧乏で……明日食っていけるのも分からなくて……でも、この社会になってから、人生が嘘のようにうまくいって、親方の店で働けて、幸せの毎日でした……でも、あの男のいるスキル社会反対運動は、その生活を潰そうとしていて……腹が立って……」

「……わかった」


 店主は頷きながらそう言った。


「それで、あんな変な物、どこで手に入れたんだ? 警察にも言われただろう?」

「……わかりません」

「……わからない?」

「き、気づいたら持ってたんです! 本当です! 信じてください! 腕輪を付けているときに、あの男を潰せって! そういう風に感じたんです!」


 アクリル板越しに詰め寄る青年を刑務官は抑えた。

必死に訴える青年を見た店主は、青年の目に嘘はないことを感じた。


「……わかった、お前を信じる」

「あ、ありがとうございます! 本当にありがとうございます! 親方!」


 青年は抑える刑務官を払いのけ、深く頭を下げた。


「すみません、そろそろ時間です」

「……わかりました」


 店主の後ろにいた刑務官が、面会終了の時間を伝え、店主は頷き、立ち上がった。


「……俺は待ってるからな、ちゃんとムショで罪を償ってこい」

「は、はい!」

「……次はちゃんと時間通りに来いよ」

「……はい!」


 青年は店主の後姿を見て、希望を感じた。

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