第百二十三話 店主の説得、昇のビーム
後ろを振り向くと、バイクに跨る魔女っぽい女性と、バギーに乗る騎士風の男性と……あれは……。
『ラーメン屋の店主さん!?』
なんでこんなところに……?
「四郎! 四郎なんだろ!?」
四郎……? そういえば店主さん、バイトさんがどうのこうのって……。
『ったく、それにしても四郎の奴、おせぇな……』
『あぁ、ウチのバイトがなかなか来なくてなぁ、いつもは開店5分前には来るはずなんだが……』
……ということは、このヒューモンスターは……。
『ラーメン屋のバイトの人!?』
まさかラーメン屋のバイトの人が、スキル社会肯定運動の活動家だったとは……。
「四郎! こんなバカなことはやめろ! お前はそんなことをする奴じゃない!」
「ぐぅ……俺は……社会を守る……」
「そんな醜い姿で守れるものなんてない! さぁ、その腕輪をこっちに寄越せ!」
店主さんは説得しようとしているらしい。
その声は届くのであろうか……。
「お前は真面目で、仕事熱心で、凄い奴だ、社会を守ることなんて、そんな変なものを使わなくてもできる!」
「……」
「だから……これ以上は……」
「……うぅ……うぅ」
ヒューモンスターが泣いている……?
これは……?
「さぁ! それをこっちに寄越すんだ!」
「……るさい」
「まずい!」
冒険者2人が武器を構え、店主さんの前に出た。
ヒューモンスターの様子がおかしい。
俺も警戒し、戦闘態勢に入る。
「あああああああああ!! うるさい! うるさい!! 消えろ!!」
『危ない!』
ヒューモンスターは、店主さんを襲おうと立ち上がった。
同行していた冒険者は、店主さんの盾になる為に立ちはだかるも、ヒューモンスターに吹っ飛ばされてしまった。
俺は重たい体を動かして、店主さんを守ろうと動いた……が、やはりこの大理石を抱えているような状態では、動くに動けない。
クソ! 動きやがれ! 動け!!
「死ねええええええええええ!!」
ヒューモンスターは拳を店主さんに向けて出した。
俺は時間が無いと考え、倒れてでも守ろうとした。
ダメだ! 間に合わない!!
俺は店主さんを守るために、「全力疾走」をした……その時だった。
「とりゃああああああ!!」
銀色の影が、ヒューモンスターに激突する。
この影は……。
『シェダル!』
「昇! よくぞその体で頑張ったな!」
『誰のせいだと思ってるんだ!』
「まぁまぁ、それで十分こいつにダメージを与えられたろう?」
『そうだが……』
「とにかく、悠里と薫とそこの冒険者を大通りの外に出さなければな……」
『そういえば愁は?』
「既に大通りの外だ、翔琉が保護している」
『そうか……』
愁は無事なようだ、安心した。
ヒューモンスターは、シェダルの攻撃が致命傷になったのか、再び倒れている。
「よし! 必殺技を決めるぞ! 必殺の両腕から出るビーム!」
『おう!』
シェダルが俺の後ろに回り、俺の首についている鍵を回した。
『バイクスキル! 走り過ぎフィニッシュ!』
両腕からビームをだし、ヒューモンスターに命中する。
ヒューモンスターの体が砕け、中から男性が出てくる。
『とりあえず……ヒューモンスターは止めることができた……』
「よくやったな! 昇!」
シェダルが鍵を外したのか、俺は元の姿に戻る。
シェダルは携帯で応援を呼び、俺は薫と悠里に近づいた。