第百十八話 敵が移動、早く集合
「よし! ここだ!」
「……あれ?」
ニュース映像で見た場所へ来たが、誰もいない。
……関係ないけど酔い止め薬の力ってすげぇ、何ともないわ。
「どうやら移動したようだな、何か手掛かりは……」
確かに、市民は避難しちゃってるからどこに行ったとか聞けないし、警官隊や冒険者の姿もない。
どうすれば……。
すると、携帯の通知音が鳴った。
『みんな! ウチら現場に向かってるんだけど、総司大通りで交通規制行われてて行けない!』
『俺たちも! 総司大通りの前にいるぜ!』
悠里と愁からだった。
「どうやらヒューモンスターは総司大通りのどこかにいるようだな。」
「行こう! シェダル!」
「うむ!」
『俺とシェダルが転移スキルでそっちに向かう! そこで待っててくれ!』
『合流して一緒に規制の中に入るぞ!』
『OK!』
『待ってるね!』
俺たちはパーティのチャットに書き込みをして、転移スキルで移動を始めた
◇
「憎い……」
総司大通りのちょうど真ん中に位置するとある商店。
そこにゴブリンヒューモンスター率いる集団が押しかけてきた。
「や、やめろ……! 来るな!」
店の店主が箒を構えて抵抗をする。
ゴブリン集団がその箒を奪い取り、真っ二つに折った。
「ひええぇぇぇ……」
店主は怯え、後ずさりをする。
「お前は……この社会に反するゴミだ……スキル社会は我々の栄光だ……その社会を潰そうとするお前らなんか……消えてなくなれ!」
ゴブリンヒューモンスターに変身する青年は、この店主の事をよく知っていた。
そう、あの少年鑑別所の前でも会っていたのである。
「い、言っておくがな! 私の発言や行動は、表現や言論の自由によって保護されているんだ! お前が誰だか知らないが、私は主張を変えるつもりはない! この社会はゴミだ! このウトピアの犬め!」
店主は追い詰められているにもかかわらず、かなり強気な態度に出た。
もう死ぬかもしれないと思い、せめてもの捨て台詞のつもりで吐いたのだろうと、青年は判断した。
「……死ね!」
「ひえええぇぇぇ……」
ゴブリンヒューモンスターの腕が店主に向かって振り下ろされた……その時だった。
「ぐはぁ!?」
振り下ろそうとした腕が止まり、ゴブリンヒューモンスターが吐血し、口を抑えてもがき始めたのだ。
店主は、その様を見て、唖然とした。
「うわぁ……やっぱキモい……」
「だがナイスショットだ、悠里!」
「褒めてもらうのは嬉しいけど無理だってぇ……」
店の外から会話が聞こえ、店主は動揺する。
すると、店の前にたむろしていたゴブリン集団が一掃されていくのが分かり、店主はさらに動揺する。
「大丈夫ですか!?」
「は、はい!?」
突然、赤い装甲に身に纏った何者かが自身の安否を確認する内容の事を口にし、動揺してしまった。
すると、外に鳥のようなバイクと、金銀の装飾のバイクが店の前で停車したのが見えた。
赤い装甲の者は、それらに乗っていた計4人に対して叫んだ。
「みんな! 一般人がいる! 俺が外まで送る! ここは任せた!」
「わかった!」
赤緑青紫の装甲を身に纏った変人達よりも比較的まともそうに見えた、白い髪の少女が返事をする。
しかし店主は、この変人集団の仲間だと考えると、彼女も同類なのかと考えた。
「さ、こっちへ!」
「あ、あんた一体何なんだ……?」
店主は赤い装甲の男に連行され、外に止めていたバギーに乗せられた。
彼にとっては、カラフルな変人集団だろうが、助けてくれるなら何でも良かった。
「しっかり掴まってください!」
「え、えぇ!?」
店主はそのまま、大通りの外へ連行された。