閑話 出動
「モンスター人間に継ぐ! 今すぐ立ち止まりなさい!」
前進するゴブリンヒューモンスターに対して、警官隊はそう叫ぶ。
「うるさい……やかましい……ぐわあああああああ!!」
ゴブリンヒューモンスターが咆哮を上げると、地表から禍々しい大気が沸き上がった。
警官隊は咄嗟に銃を構えた。
「繰り返す! 直ちに止まりなさい!」
「け、警部……あれは……」
一人の警官が大気を指差す。
すると、巻き上がっている大気が徐々に一点に集まり、それが人型になっていく。
警官達はそれらに警戒しながら銃を構えた。
やがて、その人型は、冒険者にとっては見慣れている生物に変貌する、警官も、資料で知っている者が多くいる生物だ。
「あ、あれは……」
「ゴブリン……の、子ども?」
巻き上がった大気が小さいゴブリンたちに変貌したのである。
警官達はその数の多さに焦り始める。
「ここはまずい! 退却! 退却!」
警官達は乗ってきたパトカーを置いていき、立て直すために距離を置き始めた。
ゴブリンヒューモンスターは数多くの子どもを引き連れて、目的の場所へと足を進めた。
「これもこの社会を守るためだ……」
◇
『先ほどからお伝えしている通り、モンスター人間出没との情報です! 付近にいる方は命を守る行動を優先してください!』
「翔琉!」
「おう!」
翔琉と悠里は、街頭ニュースを見て、現場に向かう決意をする。
付近には既に市民が逃げおおせていた。
翔琉はウサギの像に鍵を嵌め、マシンラビットに変形させる。
「行こう! 悠里!」
「もち!」
二人はバギーに乗り込み、現場へ急行した。
◇
「やべぇよ……どうしよう……」
愁は家でテレビを観て、一人で混乱していた。
愁の両親は共働きで、家には彼しかいなかった。
「早く現場に行かなきゃ……でも……」
愁は現場に行こうとするも、なかなか勇気が出なかった。
すると、インターホンの鳴る音が、固定電話を通じて鳴る。
愁は受話器を取り、それに応答した。
「は、はい?」
「愁さん……現場……行く……」
「か、薫ちゃん!?」
愁は子機を戻し、慌ててブルーハンマーを持ち、玄関を開ける。
「うおあ!?」
「……驚いてる……場合じゃない」
薫はヘルメットを被った状態で愁を出迎えた。
「早く……付けて……行く」
「は、はひ!?」
愁は手渡されたヘルメットを被り、薫が既に玄関前に停めていたマシンホークの後ろに乗る。
「じゃ……飛ばすよ……」
「お、おう!」
薫はマシンホークに跨り、間髪入れずにフルスロットル状態にした。
「か、薫ちゃん! 安全運転!」
「それじゃあ……間に合わない!」
二人は現場に急行した。