第百十七話 上手いラーメン、来ないバイトマン
「いやぁ、美味しかったなぁ!」
シェダルはラーメンをたらふく平らげ、感想を述べた。
「お嬢ちゃん、良い食べっぷりだねぇ!」
店主はその姿に感銘を受けたのか、笑顔でそう言った。
確かに美味かった、また来ようかな。
……あれ?
「飯時なのに、客が少ないな」
店に入った時は11時をちょうど過ぎたぐらいだった。
その時は、「混んでない時でラッキー!」程度に思っていたが、食べ終わった今でも、客は俺たちだけだった。
人気の老舗の筈なのに、何故だろうか?
「あぁ、そうなんだよ。ここんとこ、モンスター人間騒動で外出する人が少なくなってきてるみたいでねぇ、こっちも商売あがったりなんだよ」
「そうなんですか……」
「まぁ、君たちみたいに来てくれる人がいるだけで、俺は嬉しいけどな!」
なるほど、確かにいつ誰がヒューモンスターになるか分からないからな、外出して面倒ごとに巻き込まれたくないんだろう。
店主さんは、お客が1人いるだけでも嬉しいらしいが、飲食店的に、この事態はかなりまずいだろうな……。
「ったく、それにしても四郎の奴、おせぇな……」
「どうかしたんですか?」
店主さんは携帯を見ながら、誰かを待っているようだった。
気になったので、聞いてしまった。
「あぁ、ウチのバイトがなかなか来なくてなぁ、いつもは開店5分前には来るはずなんだが……。」
サボりか? これが通常通りに混雑していたのなら、店にとってはいい迷惑だろう。
……だが、店主さんの言い方だと、いつもは普通に来ているのであろうか?
そんな事を考えていると、ラーメン屋の天井に吊るしてあったテレビがバラエティ番組から突如、速報が入ったのか、キャスターの映像に切り替わった。
「なんだ? またモンスター人間か? 困っちまうなぁ……」
店主さんは腕を組んでそう呟いた。
そうとは限らないとは思ったが、確かにオークの時と似た光景だったので、俺も身構えてしまった。
『速報です! モンスター人間出現の情報が入ってきました、場所は……』
場所はこの近くだった、早く行かないと!
シェダルも真剣な表情になり、俺と顔が合った
「昇!」
「あぁ!」
考えていることは一緒だった。
シェダルが万札をカウンターに置き、俺たちは店を後にした。
「釣りは取っとけ!」
「ごちそうさまでした!」
「あ、おいちょっと! ……あれは!?」