閑話 暗闇の微笑
『ウチの子はそんな真似をする子じゃないんです……とっても優しい子で……』
暗闇の中、青白い光だけが、光っていた。
その青白い光をまっすぐ見つめる男がいた。
ヒースだ。
『一昨日起きた、県立祇園高校モンスター出現事件で逮捕された男子生徒の両親が、先ほど、報道陣を交えた会見を開きました、両親は、「息子はそんな事をしない、警察のでっち上げだ」と話しました』
「ふふふ……自分の勢力を煽る為に、こんな馬鹿げたことをするなんて……本当に面白い」
ヒースは彼らが反スキル社会活動家の一員であることを既に知っていたのだった。
『はい、というわけなんですけれども、実は、私たち独自で、この男子生徒の小学校の頃の同級生に取材をしました、同級生によると「この男子生徒は、自分をからかった生徒に対して、廃人になるほどに暴行を加え、周囲にも友達がいなかった」と語っています……』
「悲しい奴だ、だが、自業自得だな」
ヒースはそんなことを言いながら、不気味に笑った。
『現在、少年が拘留されている少年鑑別所前では、反スキル社会活動家が、抗議デモを繰り広げています』
テレビの映像が切り替わり、少年鑑別所前のデモ隊の映像になる。
『少年を解放しろー!』
『少年は無実だ―!』
『警察は未成年を捏造の道具に使うなー!』
また映像が切り替わり、スキル社会反対派と肯定派、そして機動隊との三つ巴戦の映像に切り替わった。
『また、現場では、スキル社会肯定派が妨害のために押しかけ、機動隊が……』
ヒースはテレビを消し、次の計画に使う腕輪と携帯電話を出した。
「カルデナ、いるかい?」
「はーい! なぁに?」
暗闇の奥から、カルデナがスキップをしながらやってきた。
「これをお願いできるかな?」
「やったぁ! またお使いだね! 次はどんな人?」
「次はねぇ……」
「……わかった! じゃあ、行ってきまーす!」
カルデナは暗闇の奥へと消えていった。
「ふふふ……次はもっと混乱するだろう……」