第九十九話 使役しすぎる! テイマースキル!
「おりゃあああああ!」
『鍵スキル! 凄すぎフィニッシュ!』
俺のキックが炸裂し、モンスターが咆哮を上げ、斃れる。
「もうすぐだと思うだが……まだなのか!?」
一体どこまで来ただろうか……まだ第三階層の門は見えない。
……とりあえず、収納スキルでこの遺体を何とかしよう。
『スキル解放! 納めたすぎる! 収納スキル!』
遺体を解体し、リュックに仕舞う……毎度の事、この作業は嫌になる。
「何か手はないのか……?」
転移スキルの鍵はシェダルしか持ってないし、俺の移動手段は第三者がいないと動くことすらできないバイクスキルしかない。
何かないかと思い、ケースを探り始める……すると。
「なんだ? この鍵……」
俺が取り出したのは、持ち手が糸のような……そんなのが描かれている鍵だった。
「物は試しだ! 時間ないし、試してみよう!」
俺はその鍵を腕輪に刺してみた。
『テイマースキル!』
テ、テイマースキルだと!? 確かこれ、持ってる人はそこまで多くないよな!?
確か日本語的に言うと使役スキル……つまり、モンスターを使いこなせるってことか!?
こいつは利用価値がある! そんな気がする!
俺は掛け声を言って、鍵を回した。
「スキルチェンジ!」
『スキル解放! 使役しすぎる! テイマースキル!』
俺の体が光を放ち、テイマースキルに変身した。
下を見ると、俺は金のタキシード姿になっていた。
手には鞭を握りしめていて、頭を触ると、何やら帽子を被っていた……気になって、それを取って、じっくり見てみた。
「……これは」
……黄金のシルクハットだった、これじゃあまるでイギリスの名コメディアンじゃないか。
まぁいい、とりあえず早そうなモンスターいないかな……。
「……いた!」
リトルミノタウロスだ! こいつは絶対早い!
俺は鞭をそいつに向かって振り下ろした。
すると、鞭がはじける音とともに、リトルミノタウロスの目が青く光った。
……そして。
「おいおい、そんなんいいって!」
まるで騎士が王族に剣を捧げるように、俺に向かって跪いた。
「いいから立てって!」
そういうと、リトルミノタウロスは一瞬で立ち上がり、直立不動の状態になった。
「……なんか気味が悪いな」
だが、背に腹は代えられない、こいつに連れてってもらおう。
一応、お願いする立場だし、この……事実上の洗脳が解けたら何されるかわからないから、慎重にお願いしよう。
「あ、あのー……俺を仲間の下へ連れてっていただけませんか? っておあ!?」
俺がお願いを言うと、この牛さんは俺を抱え込んだ。
そして、全力疾走で走り出した。
……待てよ、これって。
「酔う! これ絶対酔う! ちょっと待って! あ、でも待ったら間に合わないか! でももうちょっと揺らさないように走ってくれぇぇぇ!!」
俺は牛さんに抱えられながら、小松たちの所へ急行した。
でも……。
「お願いだから揺らさないでぇぇぇ!!」