第九十八話 蟹の残骸、やってる場合!?
「はぁ……はぁ……」
どこまで進んだだろうか?
恐らく第四階層は抜けたと思われるが……
「早くしないと……シェダルが……」
一体シェダルは何を考えているんだ?
俺を試すにしても唐突過ぎる……。
走りながら色々考えていると、ここまでで何回目かは不明だが、またもモンスターに遭遇した。
「またマッコーシュか!」
以前にも戦った、ザリガニとカブトガニのミックス野郎だった。
前はバイクスキルで圧倒したが、今は操縦者はいない。
ここは硬い殻も潰せるやつで行こう!
俺は鍵を取り出し、腕輪に刺した。
『鎚スキル!』
その鍵は持ち手が直方体の形をしていた。
こいつならば、粉々にできると考えたのだ。
「スキルチェンジ!」
俺は掛け声とともに、鍵を回した。
『スキル解放! 潰しすぎる! 鎚スキル!』
俺は鎚スキルの姿に変身した……何気に初めて変身する。
下を見ると、まるで工事現場の作業員の服装をカッコよくしたような恰好をしていた、そして相変わらず金色である…...この調子なら髪も金色だろう。
両手には金色のどデカい鎚を持っていた、恐らく三沢の持っていたやつよりも重いし強いと思う、多分。
「これで潰してやるぜ!」
俺は高らかにそう宣言して、マッコーシュに突撃した。
しかし敵も馬鹿ではない、奴は俺の首を切断しようと、ハサミを広げ、突き上げる。
俺はそれを見極め、サッカーでゴールを決めたプロ選手の如く、膝でスライディングをしてその攻撃を避けた。
奴の後ろを取り、思いっきり鎚で攻撃した。
奴の硬い殻にひびが入り、奴は転倒する、これはまたとないチャンスだ!
俺は鍵を回し、必殺技の準備をした。
『鎚スキル必殺!』
金の鎚に光が溜まる。
マッコーシュは、瀕死状態であったが、まだ起き上がる元気はあるようだった。
「ぶっ潰れろ!」
俺は鍵を再び回し、必殺技を発動した。
『鎚スキル! 潰しすぎフィニッシュ!』
俺は寝っ転がっている甲殻類野郎に向かって輝く鋼鉄の武器を振り下ろした。
奴は粉々に砕け散り、透明な何かをぶちまけた……蟹の血液は透明らしいが、これもそうなのだろうか? ……そう考えるとエグいな、体が粉々な時点で十分アレだが。
……急ぎたいので、残骸をそのままにしておきたい気持ちがあるが、モンスターの遺体を放置すると色々やばいというのを座学で言っていたような気がする……。
でもシェダルが……。
「あぁもう! 急いでるのに! ……そういえば俺にも収納スキルってあんのかな?」
俺はケースを探り、鍵を探す……
持ち手が箱みたいな鍵だよな? どこだ……どこだ……時間がないってのに!
「あった!」
これだ! 間違いない! さっさと納めて行こう!
「スキルチェンジ!」
『スキル解放! 納めたすぎる! 収納スキル!』
俺はシェダルの収納スキルの色違いのような格好になった、そう、金色である。
俺は早急に残骸をリュックの中に入れて、先を急いだ。