閑話 残された者たち
一方、昇が消え、ゴブリンの集団と戦闘を繰り広げていた小松、羽田、三沢、岩国の4人は、限界を迎えようとしていた。
「切っても切っても……どんどん来る……!」
「他のみんなは無事なのかな?」
「わかんねぇよそんなこと!」
「早く……なんとか……しないと……!」
すると戦闘を続けていた4人の背後から、何やら呪文を唱える声が聞こえた。
「みなさん! 離れて!」
先ほどまで共にしていた人物の声だと判断した4人は、戦闘を中断し、後ろに下がる。
すると、ゴブリンの真上に宇宙のような風景が現れ、そこから無数の隕石が雨のように落ち、ゴブリンの集団は、全滅した。
「先生! 無事でしたか!」
「ウチ凄い心配したよ!」
「小松さん、羽田さん、ご心配をおかけしました……」
「いいっていいって!」
教師の後ろには、他の班と引率していた教師達が集団を形成していた。
「ところで、金剛さんは?」
「そんな……すれ違ってないんですか!?」
「えぇ……」
「じゃあ……一体どこに?」
「金剛さんに何かかあったんですか?」
「そうなんだよ先生! 金剛くん、パニクって外とは逆方向に走ったんだよ! もしかしたらすれ違ってると思ったんだけど……」
「……とにかく私たちだけでも出ましょう!」
教師達は、教え子たちの安全を考え、一旦外に出すことを判断した。
「あの鍵スキルが行方不明ねぇ」
「翔琉くんたち可哀想……」
「俺たちの班じゃなくて良かった~」
他の班の生徒たちは、昇が自分の班じゃなかったことを安堵する内容の会話を繰り広げた。
昇を中傷する声に教師が注意をしようとしたその時だった。
「おい! 俺の仲間になんてこと言うんだ!」
「ちょ、ちょっと翔琉!」
翔琉は中傷した生徒の一人に掴みかかった。
それを制止するように、悠里は間に入って抑えようとした。
「あいつはな、あいつなりに必死で戦ったんだぞ! あいつを逃がそうと考えた俺たちを押し退けて……」
宥める悠里の横から、中傷した生徒に反論した。
「そ、そうだよ! あいつなりに攻撃参加してたぜ! まぁあんま通ってなかったけど……」
「……」
愁は遠回しに翔琉を擁護し、岩国も小さく頷いた。
「みなさん! 今は言い合いしてる場合じゃありません! とにかく外に出て、バスで待機しててください!」
翔琉は冷静になり、外へと歩き始めた。
他の生徒も、その後に続くように歩き始めた。
(あいつだって頑張ってたんだ……俺がちゃんとしていればこんなことには……)