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閑話:愛弓と瑞羽の入浴

〈播川瑞羽目線〉


私は浴室で、視線のやり場に困っていた。

見られることは一切恥ずかしくないが、見てしまうのが恥ずかしい。


古文でははづかし、という言葉には相手が立派でこちらが恥ずかしく感じるという意味があると授業で習ったことがあることを思い出した。


そういう意味では彼女の身体は恥ずかしい身体といえるだろう。恥ずかしい身体っていうと何だかえっちだな。


二人で並んで立って身体を流すと、何がとは言わないが愛弓さんの圧迫感がすごい。

「そんな避けないでよ」

「なんというか、愛弓さんは触れちゃ駄目な部分の当たり判定が広いんですよ」

「何その言い方!面白い!」


この場で話し始めなければならないのは私の方なんだろうけど、愛弓さんの方から語りかけてきた。

「ねえ、瑞羽ちゃんの連絡してくれたことなんだけどさ」

「…はい」


「本人が、だめだってさ」

「凜花に会ったんですか!?」

「さあ、それはどうだろう」


「…ねえ、どうして凜花に会いたいの?」

「え?」


愛弓さんはどうやら本気で聞いているようだった。

「それは…」

「普通じゃないよね。ストーカーするっていってもさ。この甘王寺高校に来たのも在野さんの母校だからでしょ?」

「…」

「もしかしてだけどさ、凜花を探しているのは謝りたいから?」

「えっ?」

「…私さ、知ってるんだ。脅迫状のこと」


え?なんで、知ってるんだ…。


とりあえず謝らないと。

「あの、ずっと言い出せなくて、申し訳ございませんでした」


「いや、私のことは、もういいんだよ。瑞羽ちゃんがさ、『メトロトレミー』以外にも、興味もない私の舞台来てくれたの知ってるからさ」

「いえ、ほんとに、興味ないなんてことないです。愛弓さんの劇団『ディレッタント』の存在を知れた私は、幸福だと思います」

「もし来てなかったら許してなかったけどね」

「えええっ!」

私が叫声を上げると、愛弓さんは笑った。どうやら冗談のようだ。


「でも、私が凜花を探してるのは脅迫状のことが理由じゃありません」

「じゃあ、なんで」

「…それは言えません」

「凜花はモテモテだねぇ。一体全体何者なんだろう」


愛弓さんが遠い目をして言ったから、私は問いただす。

「知ってるんですよね」

「ううん。知らないよ。深い所はね」

「そう…なんですか?」

「うん。彼女、ずっと私に隠し事してるの。もう、かなり長いのに」


そういった愛弓さんは、どこか寂しそうだった。


しかし、長い間秘め事をされているのは私も同じだ。

「私だって凜花とは長いんですから」

くじらの小部屋もそうだし、配信で何度もスパチャを読まれている。


一応、配信上でスパチャを使って特定を試みるような事もしている。

しかし、彼女は今でこそ高まった配信者意識のようなものをかなり昔から持ち合わせており、配信をかなり過去まで遡っても一つも情報は落ちていない。


まるで、元から狙われていることを知っているかのように。全600回超の配信全てを確認しても、何一つ住まいを特定できるようなものはなかった。


「まあ、でもずっと望んでればいつか会えるんじゃない?」

愛弓さんは事も無げにいった。本当に人間が出来ている。

「改めて、ほんとに脅迫してしまって申し訳ございませんでした」

「はっはっは。私の舞台が天才的な出来じゃなかったらと思うとゾッとするよ。今度、アニメ会社にも脅迫する?」

「しません!ごめんなさい」


やっぱり愛弓さん、怒ってる?

「まあでも、音ちゃんが折角用意してくれた場所だしねえ。お仕置きしちゃおっかな」

「へ?」

「このお風呂のメンバーは音ちゃんが決めたんだよ。お仕置きするためにね」

「いや、嘘つかないで下さい!てか、あれ?脅迫のこと、皆知ってるんですか?」

「…私と紅葉と音は知ってるかな」

「…じゃあ、青葵も知ってるので全員知ってますね…はあ」


本当に、なんで仲良くしてくれているんだろう。というか、本当に何で知っているんだろう。


「どうして知ったのかだけは教えてくれませんか」

「さあねえ。在野さんは何か知ってるみたいだけど」

在野さんが?確かに在野さんなら知っていてもおかしくないのか?脅迫文を読んだはずだし、大人だし。


悩んでいると、愛弓さんが私を引っ張った。

「じゃあおいで罪の清算をしてあげる」

そして私達はくんずほぐれつ、過去の罪を乗り越えたのだった。

以前音と紅葉のお風呂回で評価が伸びたらどうしようと言っていたのですが、まじで増えててびっくりしました笑。

ただこの回は調子にのって書いたのではなくて元々そのつもりだったんですからね!

評価くださった方ありがとうございました!

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