6・練習は疲れるから嫌だな
このギガースさんやけに強いから、僕の練習相手になって貰おう。
強さを取り戻さないと嫁さんに怒られちゃうからね。
「ブーザンさん、あのギガースめちゃくちゃ強いっすけど、大丈夫っすかね?」
「心配はいりませんよコボルトーベンさん。ランスロード様はまだまだ本気じゃありませんから」
「まあ俺もランスロード様の本気なんか見た事ないんですけどね」
「俺の親父曰く、ランスロード様はこの300年間、本気で闘った事は無いらしいですから」
さてと、先ずは人間時代の基本戦術のおさらいだな。
「うおりゃああ〜!」
ありゃ、もう来ちゃった。ちょっと待ってよ。
族長が右の回し蹴りを放つ
ヴゥオンッ
僕はジャンプして躱す。
それを待ち構えていた様に、族長は両手を握り合わせて上から下へと叩き付けてくる。
ブォーン、ドスン
僕は族長の両手を右の裏拳で受け流しつつ左に避けて、同時に族長の腹を蹴った。
「ぐふうぉ」
族長が片膝をついて蹲った。やばい、蹴りが強過ぎたかな?
しかし族長は直ぐに上体を起こした。よかった、まだいけるね。
僕の人間時代の基本戦術の内、使えなくなったのはスキル《奪力》だ。
このスキルは触っている相手の力を強制的に奪う能力。
つまりは殴っている間、相手は一方的に弱まっていき、僕の方は一方的に強くなっていく。
しかも相手にはダメージも溜まっていき、逆に僕は回復していくというチートスキルだった。
しかしこの《奪力》は吸血鬼への転生時に失われ、代わりに《借力》が備わった。
まあ、この闘いでは《借力》は封印するけど。
人間時代の僕の格闘術で、《奪力》以上に重要だったのが、身体強化魔法と重力魔法だ。
なにせ《奪力》といえど相手に触れなければ何の意味もないのだから。
まあ、吸血鬼に転生した後にも、この二つの魔法は一応は鍛えたんですよ。
でもLv2になった時点で飽きてやめてしまった。それも290年以上前の話しで、それからは一度も使っていないんです。はい。
身体強化魔法と重力魔法は人間時代にはLv12でしたが、今はLv2です。
でも魔法のレベルというのは威力の違いであって、使う魔法は一緒なんですよ。
レベルが低くて発動しない魔法というのは、最低威力自体の高い攻撃魔法で、レベルが低くてその威力に達しないから発動しても意味が無い。だから発動しないだけなんです。
だから、何かでブーストでもしてあげれば、レベルが低くても発動しちゃたりもしますよ。
そして僕が格闘術に組み込んでた魔法はLv1でも発動する魔法ですからね。
「少しはやるみたいだけど、あたいを甘く見るんじゃないよ」
おっ、丁度良いタイミングで回復したね。族長さん。
「でえりゃああぁぁ」
今度は右の回し蹴りからだね。
先ずは身体強化を全身に掛けて、回し蹴りの下をくぐる。
次に重力魔法で体を重くしつつ、身体強化は全身から右脚だけに移して踏み込む。
踏み込んだ瞬間に重力魔法をカット、身体強化は右脚から右腕にスイッチして右拳を握る。
そして族長の腹に向かって右の拳をねじ込む。
インパクトの瞬間に身体強化で右拳を固め、重力魔法も右拳に集中して重くする。
ブォーン、ドゴオオオン
「げはああぁ、うごぉ」
駄目だなぁ、タイミングも合ってないし、魔法の移行もチグハグだよ。
「ごのおぉぉ」
族長さんが苦し紛れに左腕を振り回してきた、ラリアットだな。
僕は上に避ける事にする。
重力魔法で体を重くしつつ、身体強化は両脚に。
ジャンプした瞬間に重力魔法はカット、その後は重力魔法を上向きに変えて体重を0に近づけていく。
ビヒュゥーーーン
やべえ、飛び過ぎた。これじゃあ反撃に繋がらない。
まあ久しぶりだからなぁ、これやるの。
族長さんには悪いけど、もう少し付き合ってもらおう。
重力魔法で体を重くして、飛び降り・・・・・・
ドカドカ、バギィ、ドン、ドゴオオオン
ズシャアン、ドン、ズシン、ガシイン
バギィィィ、バン、バガアン・・・・・・
・・・・・・
・・・
あちゃ〜、10分しか持たなかったかあ。
もう少し練習したかったんだけどな〜。
圧倒的にランスロードの方が強いんですけど、練習という形で戦ってます。
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連載中の[不幸続きで転生5回目・・・]です。
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互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。
こちらもよろしくお願いします。