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最終話・もっとのんびり出来ると思ったのになあ、嫌だな

 予想されていた方も多いと思いますが、最終回です。

「くっそ〜、今日も当たらなかったか。強いなぁ、おっさん」


「お前は重力魔法の精度が甘いんだよ、身体強化への移行もスムーズに出来てないしな、って、おっさんは止めろよ小僧!」


 この小僧、ナスカと闘ってから大分経った。


 僕の怪我も全快し、いざ、マリンちゃんとのイチャイチャライフへ、と意気込んでいたのに、ナスカ達がやって来て修行の相手をさせられている。全く迷惑な事だ。


 奥さんに聞いたのだが、僕とナスカが相打ちに近い形(厳密には僕が勝ったけどね)で倒れた後も大変だったらしい。

 なんでも、【創造神】ゼースとやらが現れて、僕とナスカを消し去ろうとしたらしい。

 その後も、他の神族やら、四大魔王やら、竜族やらが現れて、すったもんだの末に、天界と地上界との戦争に発展したらしい。


 まあ、ナスカに全てを託した身としては関係ない話だけどね。神族なんかと戦ったって勝てるわけねぇし。

 ナスカなら勝てるかもしれないけど、僕には絶対に無理、やるだけ無駄。

 ナスカの小僧は本当にクソ強いからね。闘り合った時は意地になって耐えきったけど、冗談抜きで死ぬかと思ったもん。

 もう二度とこの小僧と闘り合うのは嫌だね。痛いっていうか死ぬし、絶対に。


 まあその天界との決戦(5年後らしいけど)に備えて、先日、対策会議なるものも開催したらしいんだけど、そこでも酷い事があったんですよ。

 その会議に出席しろって言ったんですよ。ヴィアさんがね、怪我の癒えていない僕に「もう治ってんでしょ」って言ってさ。

 でもまあ今回は断固として拒否しました。まだ頭も痛かったし、何よりも、奥さんと嫁さんも出席するのに僕まで行っちゃったら、マリンちゃんと一緒にいるのがトンコちゃんだけになっちゃって可哀想じゃないですか!


 で、まあ、会議も終わって、奥さんと嫁さんが帰って来たと思ったら、ナスカ達まで来ちゃいまして、本当に迷惑な話です。


 ナスカにね、修行の相手をさせられるのも嫌なんだけど、今、一番の大問題はそこじゃないんです。それは。


「ナスカお兄ちゃん、おかえり〜。パパとのしゅぎょうはおわったの?」


「ああ、ただいまマリン。マリンはちゃんと良い子にしてたか?」


「うん、きょうはメテスお姉ちゃんがね、いっぱいあそんでくれたの。それでね、良い子にしてたからって、おかしもくれたんだよ。ねぇ〜、ラスリルちゃん」


 そう言って、マリンちゃんが抱えているラスリルという名のアライグマ(の魔獣)の頭をなでなですると、アライグマは恥ずかしそうに俯く。

 モフモフの頭をなでなでするマリンちゃんもめちゃくちゃ可愛い。


「酷いんでやんすよナスカ先輩、あっしはルル達と一緒に訓練したかったのに、置き去りにされたんすよ!」


「ポンキチは訓練なんてしなくてもいいの。僕だってマリンみたいにモフモフを味わいたいんだからね」


 メテスが抱き抱えているポンキチという名の狸(の魔獣)の頭を撫でながら言う。狸はメテスの手から、なんとか逃れようと体を捩って抵抗するが、メテスから逃げられる筈もない。


「あ、マリお姉ちゃん、おかえりなさい。グィネママとのおはなしはおわった?」


「うん、マリンも良い子にしてた?」


「うん、マリン良い子だったよ。ね、ラスリルちゃん」


 マリンちゃんが再びアライグマをなでなで。


 クゥ〜! 超絶美少女とモフモフ動物の組み合わせは最強だな! 可愛い過ぎ!


「そっか、じゃあ約束のお土産をあげないとなね」


 マリが大きなペロペロキャンディを取り出して、マリンちゃんに手渡す。途端にマリンちゃんの笑顔が弾ける! ぐおぉぉ〜! 可愛い過ぎて狂い死ぬ〜!


「ありがと〜、マリお姉ちゃん大好き〜♡!」


 これである。これこそが大問題なのだ!


 ヴァンレイン亜人国へと修行にやってきた、【ナスカ軍団+α(ナスカ、マリ、メソタツキと何故かメテス、それに+αのモフモフ軍団(因みにモフモフ軍団には、アライグマと狸の他にもマリンちゃんを乗せて駆け回る狼(の魔獣)軍団も存在する)、命名は僕)】が、あっという間に僕のマリンちゃんと仲良くなりやがって、今では僕がマリンちゃんに蔑ろにされつつある。由々しき大問題である。


「ああっ、メソお姉ちゃん、タツキお姉ちゃんもおかえり〜!」


【ナスカ軍団+α】の残りの二人が帰って来やがった。そしてまた、あっという間にマリンちゃんの下へと吸収されていく。


 その後ろからついて来ていた2つの人影が、僕の方へとやって来た。


「しかしよお、タツキは当然としても、メソも強えなぁ。明日はお前も相手してみろよランスロード」


 僕はその提案に答えることなく、自らの疑問をぶつける。


「いやさあ、改めて聞くけど何でお前達までいるんだよ? ルシフル」


 そう、何故かルシフルもスタロとアポリドンの2体の堕天使を連れて、ヴァンレイン亜人国までやって来たのだ。


「何でってお前、ナスカが修行に来るってから、俺らも一緒にやろうと思って来たに決まってんだろが。馬鹿かテメエ」


 決まってるって、別に決まっちゃいないだろうが、この野郎は。


「そんで、アポリドンはどうしたんだよ?」


「あははは、それがよお、アイツはメソに散々ボコられてよお、悔しかったらしくて「闘り足りねぇ」とか言って、オーガストラやルル達が修行してる方に行ったぜ」


 っと、ルシフルの舌の根も乾かない内に、トラさんとゾーンさん達、それにナスカの近衛隊達も一緒に帰って来た。


「トラさん達も今日は上がり?」


「はい。リリ、キキ、トトのアスリ獣国勢のソードウルフ三姉妹が、巨大なビッグボアを演習の合間に仕留めたので、今日は早めに切り上げて戻って来ました」


 見ると、不服そうな顔をしたアポリドンが15メートル級の巨大な猪を引きずって、トボトボと歩いていた。


 それを見たルシフル達は大爆笑し、マリンちゃんは大はしゃぎで猪の下まで駆け寄った。


「本当にデカイの仕留めたなぁ、トンコちゃんに調理してもらって皆んなで食べようか?」


「「「はい」」」


 僕達はトンコちゃんに《思念伝達》で連絡すると、首都アザマへと帰っていった。







 その日の夕食は人数も多いので、深探城の中央広場でバーベキューとなった。


 ビッグボアの他にも鳥肉や牛肉、山菜やキノコなどの野菜類、それにナスカ達が《亜空間トンネル》で魚介類なども集めてきたので、大バーベキュー大会となってしまった。


 食材を集めている途中のナスカ達から聞きつけて、アスリ獣国からも多くの幹部達がやって来たし、ライオルや、エレンスィリアの副官で今のエルファリアを治めているエルリートも数人の獣人やエルフを連れてやって来た。


 そして、大陸中央部の会合の時には、話す機会のなかった息子、シヴァルも部下達を連れてバーベキュー大会に参加した。


「で、どうだよクソ親父、怪我はもういいのかよ?」


「え、心配してくれてたのか? 優しいなぁシヴァルは」


「そ、そんなんじゃねぇよ。怪我してたら本気で殴れねぇだけだ!」


「な、殴る気なの? 反抗期? 積み木崩しちゃうの?」


「馬鹿かあんたは! 修行だよ! ナスカともやってんだろうが。俺も今度、修行に来るからだよ」


「そうなの?」


 な、なんかこの国、これからは修行場にされそうな気がするなあ。嫌だなぁ。それだけは勘弁して欲しいなぁ。


 シヴァルが来てくれるのは嬉しいんだけどさ、修行目的ってのは面倒くさいし、嫌だなぁ。


「ああ、あんたにも手合わせをお願いしたい」


「いいよ、いつでも気軽に帰って来いよ」


 修行は嫌だけどね。


 少しの間、沈黙の時間が流れた。話すのが久しぶり過ぎて間が持たない。その沈黙を破ったのはシヴァルの方からだった。


「それでよお、どうだったよ。引き篭もりを止めてみ・」


「ああ〜! お兄ちゃんだ! シヴァルお兄ちゃんだあ!」


 シヴァルの言葉を遮って、マリンちゃんが乱入した。


「シヴァルお兄ちゃん、おにくいっしょにたべよ。マリンもトンコちゃんのおりょうりのおてつだいしたんだよ」


「そっか、マリンちゃんは偉いな。じゃあ一緒に食べようか」


 シヴァルがマリンちゃんの頭をポンポンする。マリンちゃんが嬉しそうに微笑む。


 マリンちゃん可愛い! マリンちゃんは可愛いけどな、シヴァル。たとえ息子といえどマリンちゃんだけは渡さないぞ!


「うん、いっしょにたべよ!」


 マリンちゃんが小さな手で、シヴァルを引っ張って行ってしまった。


 一人取り残されてしまった僕の下へ、ヴィアさんがやって来て、僕に尋ねた。


「それで、どうだったのよ。引き篭もりを止めてからのこの数年は?」


「う〜ん・・・・・・面倒くさかったよ。痛い目にも合ったしね」


 確かに面倒くさかった。

 僕は喧嘩は嫌いだし、痛いのも嫌だ。でも・・・


「でもまあ、楽しかったかな。偶にならこういのも良いのかもしれないね」


 奥さんがニッコリと微笑んだ。その笑顔はとても優しい笑顔だった。

 その、いつもの奥さんらしからぬ笑顔に、僕は急に不安になる。


「た、偶にだよ、偶に! いつもは嫌だよ! 僕は本当に、のんびりと過ごしたいだけなんだよ!」

 以上で一応この物語は終了となります。如何だったでしょうか。


 正直、続けようと思えば続けられるのですが、当初の予定通りにここで完結させることにしました。

 ランスロードは働きたくない人なんで、これ以上こき使うのも可哀想なんでね。


 でもまあランスロードの物語はまだ続きます。


 この先が気になるという方は、姉妹作の[転生5回目・・・]の方でお楽しみ下さい。

 主役じゃないので出番は減りますけどね。


 気が向いたらですけど、この[能力はチート・・・]の番外編を書くこともあるかもしれません。

 その時には、またお願い致します。



 ご読了ありがとうございました。またね!







 【作者からのお願いです】


 読者様からの反応を何よりの励みとしています。

 ポイント評価、ブクマ登録、感想、レビュー、誤字報告を頂けますと、創作意欲のより一層の向上に繋がります。

 お手数だとは思いますが、何卒宜しくお願いします。




 連載中の[不幸続きで転生5回目・・・]です。

 この小説とリンクする作品となります。

 ↓

 https://ncode.syosetu.com/n7763fx/



 互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。

 こちらもよろしくお願いします。

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