5・喧嘩するのは痛いし嫌だな
ギガースさん達の斥候がいたので、アジトまで案内してもらう事になった。
でもなんかギガースさんって戦闘的なんだよね。
嫌だな〜、面倒くさいな〜
帰ってマリンちゃんとイチャイチャしたいなぁ。
「ブーザン殿、ランスロード様とはあんなにもお強い方だったのか?」
「あんなもんじゃないですよ、ゴブルザークさん。本気のランスロード様はあんなもんじゃない」
「しかし、ギガース5体を相手に圧倒するとは・・・。某、あんなにお強い方を見た事がない」
「同感ですな。わしもあれ程とは思っていませんでした」
「進化させていただいた力を試せるかと、期待もしておったのですがな」
「それは残念でしたね。でも今回のランスロード様は、ご自分でやると仰っているので、この先も試す機会はないと思いますよ、リザードフスキーさん」
「それは残念ですな」
「いずれ皆さんのお力が必要になる時がきますよ。ランスロード様は基本的に動きたくないお人ですから」
「それに俺達が直接戦わなくても、ランスロード様の特殊なスキルの手助けにはなれますしね」
ギガース達の案内で、ギガース達のアジトに向かい始めてからずっと、ブーザンがゴザークとリスキーと話し続けてる。
早くも仲良くなったんだな。
仲が良いのは良い事だ。
ただ一人、コベンだけは何かキラキラした目で僕にくっついてくる。
別に悪い気はしないけれど、なんか鬱陶しいなあ。
ギガース達について歩いていくと、森の中にしては木々の少ない拓けた場所に出た。
見た感じで推測だが、ここだけで800体のギガースがいる。
途中、見張りと思われるギガースに何度か遭遇したが、案内のギガースが話しを交わすと、俺達はすんなりと通された。
斥候に出ていたギガースの隊長はそれなりの地位を与えられていたのかもしれない。
拓けた場所の中央に大きな岩がある。俺達は案内のギガース達と共に、その場所へと通された。
「えっ、こいつなの?」
その岩に、体長3メートルもある大きなギガースが座っている。
しかもそのギガースは雌だった。
「こいつとはご挨拶だね。あたいがギガースの族長だよ」
「話しがあるってのはあんたかい?」
やっぱりこいつが族長なのか。やばいなあ、僕は雌って苦手なんだよな。
「なあ、ブーザン。やっぱり代わってくんない? 僕は雌は苦手なんだよ」
「何言ってんですか? 百歩譲って闘いは代わっても良いですけど、話だけはランスロード様に通してもらわないと」
だよな〜、まあ仕方がないか。
「話しがないなら帰ってくんな。あたいも暇じゃないんだ」
「ああ、ごめん。僕はオーガとの争いの仲裁に来たんだ。森の他の種族達が迷惑してんだよ」
「穏便に事を納めてもらいたいんだけど」
「向こうから仕掛けてきた喧嘩さね、あたいに言っても小門違いだよ」
「じゃあ向こうが止めればいいんだね」
「そんな訳にいくかい! もう喧嘩は始まっちまってるんだ」
「どっちにしても駄目じゃん!」
こいつ喧嘩好きっぽいなあ、やな予感がする。
「・・・あんたアザマ山の中腹に住んでるっていう吸血鬼だろ」
「あれ、僕の事知ってんの?」
やな予感が強くなってきた。
「この辺の弱い種族達が、こぞってあんたの元に頼っていってるって聞いてるよ」
「あんた、あたいと喧嘩しなよ」
はい、当たり〜。
「あたいに勝てたらあんたの言う事聞いてやるよ。どうする?」
やっぱりただの喧嘩好きかよ。
「んじゃあブーザン頼んだよ」
「え、え〜、ここで俺ですか? ここで俺がやってもこの人は納得しないですよ!」
「だ、だよな」
やっぱり僕がやるしかないのね。
「わしが「おいらが「某が、やります」」」
「いやいや、だからランスロード様がやらないと納得しないって、お三人方」
「いいよ、いいよ、僕がやるよ」
そういう展開だもんなあ。嫌だけど。
「どうすんの? やるの? やらないの?」
「はいはい、やるよ、やりますよ」
「んじゃ〜みんな下がってね〜」
「ほら、そこのギガース達も下がった下がった」
「随分とあたいを舐めてるみたいじゃないか、後悔するよ」
「違うよ、舐めてる訳じゃないですよ」
「君は随分強そうだから、闘う場は広くとっとかないと被害が増えちゃうでしょ」
「舐めてるようにしか見えないけどね、まあいいよ、やってみれば分かる」
「場所を広く開けな! 誰も手を出すんじゃないよ!」
族長の一声で場所が広く開けられる。
そこへと楽しそうに族長が躍り出る。本当に楽しそうに。完璧に戦闘狂だね。
僕もその場に出るが、出した爪は引っ込めて拳を握った。
雌相手に爪は駄目だよね。
僕の魔法のレベルは、300年前に人間から吸血鬼に転生した時にリセットされてしまった。
スキルも同様に、多くのスキルが違ったものへと変化してしまっている。
でも僕の人間時代の戦闘職は武闘家。
そして僕の身体的な能力は人間時代から変わっていない。若干だが寧ろ上がっている。
仮にも僕は英雄と言われた武闘家だった。
身体能力だけでギガースを圧倒出来る筈だよね。じゃないと困る。
「始めるよ。精々あたいを楽しませておくれよね」
族長が真っ直ぐに突っ込んできた。
直ぐさまに右拳を振り下ろしてくる。
ドゴオオン
僕は体ごと横に避ける。
その僕を族長は下から蹴り上げる、速い。
ガシイィィン
僕は両手を下に交差させてそれをカード。
しかし衝撃で10メートル程上空まで飛ばされる。
それを追って族長も僕よりも高くジャンプ。
また右の拳を振り下ろしてくる。本当に速い。
ガシイ、ブォーン、ドッシイィィン
僕は空中で拳を躱しながら右腕を掴む。
そのまま族長を真下へと投げ落とす。
族長は投げられながらも体制を立て直して地面に着地。族長を中心にクレーターの様に地面が凹んだ。
僕は族長から距離を置き、離れた場所に着地して、再度対峙した。
強いなあ、この雌。ギガースの種族限界超えてんじゃないの?
でも丁度良い機会かもしれない。
鈍ってる戦闘感を取り戻すには好都合だな。
この雌には悪いけど、練習相手になってもらおう。僕が嫁さんに怒られない為に。
主人公の初めての圧倒的でないバトルシーンは如何だったでしょうか?
この後も少しづつ主人公のバトルが変化していきます。
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連載中の[不幸続きで転生5回目・・・]です。
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互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。
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