49・悪い奴にはお仕置きが必要だな
正直言って、この小僧は強過ぎるね。
面倒くさい性格してるしどうしたもんかね。
でもまあ悪い奴じゃないし、将来的には楽しみかもね。
小僧が膨れ上がった闘気を全開にする。
しかし、何かおかしい?
小僧が鋭い踏み込みで移動を開始するが、その方向が僕の方を向いていない。
それと同時に赤い小さな娘も動き始める。
!! そういう事か!
『ヴィアさん!』
『わかってるわよ!』
流石は僕の奥さん。既にヴィアさんも動き出していた。
「あら、何をするつもりかしらナスカくん?」
小僧の向かった先にいるのはエレンスィリアだ。
小僧はクソエルフへと向かいながら拳を引くと、その拳は小さな亜空間に引き込まれている。
なんだ、あの亜空間は?
そしてその間には小さな赤い竜の娘も、クソエルフの死角から行動している。
ガシッ!
「貴女もよ竜人ちゃん!」
「チッ!」
スキル《飛行》を使って近づき、頭上から回し蹴りを放った竜の娘の右脚をクソエルフが掴んで防ぐ。
そのクソエルフの防御に僕は違和感を感じた。
移動から攻撃まで、竜の娘の行動にミスはなかった。だがクソエルフはその攻撃を完璧に防いでみせた。
エレンスィリアってあんなに勘が良かったっけ?
違和感は感じるが、今はそんな事を考えている場合じゃない。僕の大事なマリン姫を取り返すチャンスなのだ。
奥さんの行動を見ながら、僕は聖拳アローダンへと魔力を集め始める。
バッ
「娘は返して貰うわよ、性悪女!」
ヴィアさんが竜の娘の攻撃に乗じてマリン姫を奪い返す。そしてそのまま、自分の身体をクソエルフとの間にコジ入れてマリン姫を庇う。
「まだ駄目よヴィア。あと少し、大人しくしていなさいな」
クソエルフがヴィアさんに向かって膝蹴りを放つ! おい、コラ! 僕の奥さんに向かって何してる!
僕は聖拳アローダンに溜めていた魔力を解放する。
ヴィシャアァァァァン!
「ひぃぎっ! ランスロードおぉぉぉ!」
なんだよ、ひぃぎっって。それに人の名前を大声で叫ぶなよ、やかましい!
「僕の奥さんに何しようとしてんだよ!」
僕の聖拳アローダンは、魔力を通すとその魔力を蒼い電撃へと変換することが出来る。
そしてその蒼い電撃は稲妻のように空気中を走り、離れた相手も攻撃することが可能なのだ。
僕はその蒼い稲妻をクソエルフに向かって放出し、稲妻はクソエルフの左膝を直撃した。
その隙に奥さんはマリン姫の救出に成功し、その場を離脱した。
ナイスヴィアさん、流石です!
僕達のマリン姫を無事に救い出すことには成功したけど、このクソエルフにはまだまだお仕置きが必要だな!
マリン姫の救出を見届けた小僧が大声で吠える。
「このクソ女があぁぁぁ!」
咆哮と共に小僧が離れた位置から右拳をクソエルフへと突き出す。小僧の拳が引き込まれていた小さな亜空間は、いつの間にか消えていて、その右手には真っ赤なガントレットが装着されていた。
ガントレットはおそらく。あの小さな亜空間に《亜空間収納》されていたのだろう。
小僧は突き出し赤いガントレットから魔力を放出する。放出された魔力は炎へと変わる。
あ、あれは、竜? 炎の竜!
赤いガントレットから吹き出した真っ赤な炎は、竜の姿へと変わり、クソエルフへと伸びていく。
僕のアローダンと似たような性能を持っている武具なのだろう。格闘タイプだろう小僧がスムーズに遠距離攻撃を行うには便利な武具だな。
「わたくしを舐めるんじゃない、小童があぁぁぁ!」
ビシャシャシャシャシャ・・・
クソエルフは小僧の放った炎の竜を、左掌に溜めた魔力で風の防壁を展開し、その風の威力で相殺、掻き消していく。
僕はここでも違和感を抱く。やっぱりおかしい。
風属性の魔法が種族的に見ても得意なエルフで、魔力量も多い魔法タイプであるエレンスィリアが、炎の竜を風魔法で相殺するのは頷ける。
しかし、クソエルフは竜の娘の右脚を右手で掴んだまま、左手1本でそれを行なっている。
僕の知っている300年前のエレンスィリアはあそこまで強くはない。そして、この会談への参加を要請する為に、ヴァンレイン亜人国を訪れた時のエレンスィリアから感じた魔力量は、昔のそれと大した違いなかった筈なのだ。
第一昔のエレンスィリアなら、あの竜の嬢ちゃんよりも弱いのだ。それが今は、拘束を解こうとしている竜の娘の力を、右手1本で抑え切り、その上で右手1本で小僧の炎の竜を防いでいる。
300年前で言えば、今見せているエレンスィリアの力なら四大魔王と匹敵する程だ。
何かがおかしい! 今は戦闘中なので無理だけど、後で検証する必要があると思う。
でもまあ、想定よりも強過ぎると言っても問題はない。
今の状態で既にクソエルフは確実に詰んでいるからね。
「終わりだよ、クソ女!」
小僧がクソエルフの懐へと到達し、同時に左の拳を構える。
今度は小僧とクソエルフとの間に1つ、それと小僧の左脚にもう1つ、小さな亜空間が出現した。
「同感だ。我も終わりだと思うぞ、性悪エルフよ!」
竜の嬢ちゃんもクソエルフに対して戦闘終了の言葉を投げ掛ける。
僕もそう思うよ。
ズギャアアァン! ドゴオオォン!
「ひぃぎやぁぁぁ!」
右脚を掴まれている竜の娘が、空いている方の左脚で、クソエルフの後頭部を蹴り落とす。
それと、ほぼ同時のタイミングで、小僧の左拳がクソエルフの脇腹を抉っていた。
途中で小さな亜空間を通過した時に、小僧の左手には青いガントレットが装着された。
見れば小僧の左脚にも、いつの間にか脛当てと靴が一体化している緑色の武具が装着され、小さな亜空間はその存在を消している。
あの小さな亜空間は、小型の《亜空間収納》か!
戦闘中でも素早く装着出来る様に、それぞれの武具専用の小型の亜空間を用意して、個別に収納されてるって事だ。
その方法なら直前まで切り札となる武具を隠しておけるから、不意打ちにも使えて確かに実用的だ。でも、かなり高度な亜空間の操作が必要になる。
器用なもんだなぁ。今度僕も練習してみようかな。
小僧がクソエルフの脇腹へと減り込ませた左手のガントレットから、水の竜が出現して、クソエルフの脇腹に食らいつく。
水の竜の直撃を食らったクソエルが吹き飛ぶ。
クソエルフを追うように小僧が飛ぶ。
その小僧の左脚に装着された武具から、風の竜が出現して小僧の移動速度が爆発的に速まる。
あっという間にクソエルフを追い抜いた小僧は、飛ばされてくるクソエルフを待ち構える。
最後に僕にも一発クソエルフを殴らせて貰おう。このままじゃあ腹の虫が治まらないからね。
僕は再び、聖拳アローダンへと魔力を注ぐ。
「ぬりゃあぁぁ!」
ドゴグオオォォォン!
「ひにゅぐっ!」
待ち構えていた小僧が飛ばされてくるクソエルフの背中に向けて、右足で横蹴りを放つ。
小僧の右足は途中で小さな亜空間を通過して、クソエルフの背中に直撃した。その右足に装着された武具は黒い武具。
黒い武具から放たれたのは岩の竜だ。
クソエルフの背中に食らいついた岩の竜は、クソエルフの身体をさっきまでと別の方向へと吹き飛ばす。
新たにクソエルフが飛ばされた方向には、竜の嬢ちゃんが待ち構えている。予想通りだ。
「後は頼むよ、タツキ」
ピシャアアアァァァァン!
クソエルフの身体が竜の嬢ちゃんが《飛行》している真下に到達する直前に、僕は蒼い電撃を解放する。
僕の蒼い稲妻の直撃を受けたクソエルフの身体は、竜の嬢ちゃんの真下へと落下した。
「僕にももう一発くらいやらせてよ、ソイツは僕の可愛いマリンちゃんを危ない目に合わせたんだからさ」
「要らぬ事をするなよ爺さん。トドメは我の役目なのだ!」
そう言って、竜の嬢ちゃんが僕を睨みつける。
そんな睨むことはないじゃんか、それに爺さんって。確かに年は取ってるけど、見た目は若い筈なんだけどなぁ。
竜の嬢ちゃんは真下へと落ちたクソエルフに向かって、渾身の炎のブレスを放つ。
ズゴワアアアアアァァァ・・・
ァァゴオオオォォォォ・・・
灼熱のブレスはクソエルフと共にその周辺の地面をも溶かしていく。
溶かされた地面には大きく穴が空き、穴の縁はガラスと化している。
クソエルフの身体は大穴へと落ちていき、その底に溜まったマグマの中へと消えていった。
そしてまた僕は驚愕する。エレンスィリアの生体反応が消えていないのだ!
嘘! マジかよ!
しかしまあ、生体反応があると言っても極僅かしかない。おそらくはこのまま消えるだろうし、たとえ消えなくとも、もう戦える状態じゃあ無いので気にしないでもいいか。面倒くさいし。
兎に角もこれで僕の方には小僧と闘う必要は無くなったんだけどねぇ。
「さてと、続きをやろうかおっさん!」
「やっぱりやるんだ」
言うと思ったけどやっぱり面倒くさいし嫌だなぁ。僕は苦笑いを浮かべるしかなくなった。
「当たり前だろ、おっさんの仲間が俺の仲間を傷つけた事実は変わらない」
「本当に面倒くさい奴だなぁ、お前」
「俺の仲間に手を出すと、どういう事になるのか教えてやるよ! おっさん!」
小僧が闘気と魔力を練り直す。仕方ないから闘るしかない。
まあ、小僧の潜在能力がいったいどこまでのものなのか、興味はあったので気持ちを切り替えることにする。
小僧が左脚の武具に込めた魔力を放出し、風の竜を使って加速する。
速い!
一瞬で目前まで踏み込んできた小僧は、その速度も利用した攻撃をしてくる。
ガシッ
小僧が真っ直ぐに放ってきた右の拳を、僕は左の掌で受け止める。
掌の中で小僧の魔力が暴れる。小僧の右手に装着された赤いガントレットから、炎の竜が飛び出そうと暴れ回る。
僕は暴れ回る小僧の魔力を、左手に嵌めた聖拳アローダンへ魔力を込めることで抑え込む。
聖拳アローダンが蒼白い光を放ち、電撃の力も借りて、炎の竜を封じ込める。
小僧の力の上昇が尋常じゃない。装着した武具によるものだけとは到底思えない。おそらくは何らかのスキルによるものだろう。
化け物かよこの小僧!
僕が今《借力》で借りている5割の力じゃ無理かもしれない。僕はもう一度、小僧の力を上方修正することにする。
『もう一段階力を上げたい、6割まで借りるよ』
『『『『『『はい!』』』』』』
力ある魔物達10万体の6割の力だ。
いくら最近鍛えていたといっても、僕の身体が耐えられる限界に近いと思う。
全く、厄介な奴で嫌になるなぁ、この小僧。
終わりませんでした。すいません。
というか、なんで最初にこの闘いを1話で書き切ろうと思ったんですかね? やっぱり俺って馬鹿みたいです。
それに[転生5回目・・・]と[能力はチート・・・]の分とで、視点を変えて2話づつ書く羽目になるんですよね。
それが無茶苦茶大変です。それがやりたくて同時連載始めたのですが、正直言って後悔してます。
今後はこの方式はやめた方がいいですね。
まああとちょっとなんで、最後まで頑張ります。
☆
【作者からのお願いです】
読者様からの反応を何よりの励みとしています。
ポイント評価、ブクマ登録、感想、レビュー、誤字報告を頂けますと、創作意欲のより一層の向上に繋がります。
お手数だとは思いますが、何卒宜しくお願いします。
連載中の[不幸続きで転生5回目・・・]です。
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互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。
こちらもよろしくお願いします。




