表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/51

43・仲間が増えるのは嬉しいけど、面倒事はも増えるので嫌だな

 嫁さんに頼まれて来てみれば、嫁さんが言っていた通りの展開になっていた。

 仕方がない、ここからは僕が闘うとしますか、嫌だけど。


「ランスロード様が何故ここに? あたい達に任せてもらえたのでは?」


「いやね、嫁さんに頼まれてさあ」


「グィネ様に?」


「詳細は後で説明するよ。とりあえずここは僕に任せてくれないかな、ゾーンさん」


「・・・・・・り、了解致しました。お任せ致します、ランスロード様」


 自分達が任されていた戦争だからね、納得はいっていないだろうけど、渋々ながらゾーンさんは納得してくれた。


「トラさんも、それで良いかい?」


 抱き抱えていたトラさんを降ろしながら、了解を求めてみる。


「わ、わてもそれで構いまへんよ」


 トラさんも了承してくれた。何かちょっとトラさんの顔が赤くなっていたけど、戦闘による怪我の所為で熱でも出ちゃったかな?



「そういうわけだから、ここからは僕が相手をする事になるけど、いいかい? 巨人くん達」

「それとさ、出来たら大人しく負けを認めて欲しいんだ。僕は喧嘩が嫌いなんだよね、痛いのは嫌だし、面倒くさいしさ」


「おはんが相手いうんは認めもんそう、けんど、気に入らんでごわす」


「何が?」


「そちらの二人は立派でごわした、敵ながら天晴れでごわす。その二人の後を引き継いだおはんが、やれ嫌だ、やれ面倒くさいいうんは失礼でごわんど。そん態度をおいどんは好かん!」


 う〜ん、コイツの言う事もわからんでもないけど、嫌なもんは嫌なんだよね。


「好かんて言われてもね、面倒なのに変わりないからさ、纏めてかかって来てよ。さっさと終わらせたいんだよ、僕は」


 雄の首領の顔色がみるみるうちに赤くなる。太い眉は釣り上がり、鋭さを増した眼には怒りの感情が吹き出し、膨れ上がった僕への殺意が、形を成して目に見えるようだ。


「舐めるのも大概にせえ! おはん、何様と思っとると!」


 形を成した殺意は、まるで巨大な鬼を思わせる姿となった。その巨大な鬼は両手を大きく広げて、僕の体を押し潰さんと待ち構える。


「別に舐めてるわけじゃないけどね。来ないなら僕から行くけど、いいのかな?」


 黒い靄のようだった巨大な鬼が、赤く変わっていく。激しく燃える炎のように変化した巨大な鬼が、更に激しく燃え広がる。


「いつでも来るがよか! おはんの首はおいどんがへし折るでごわんど!」


 燃え広がり続ける殺意の炎が、僕と雄の首領が対峙する空間を飲み込む。殺意の炎は既に僕の体をも包み込んでいた。


「んじゃ行くよ」


 僕を包み、周囲の空間全てに充満した殺意の炎を無視して、僕は地面を蹴る。


ドンッ!


 空中へと飛び出した僕は、一瞬で間合いを詰め、反応する出来ていない無防備な雄の首領の顳顬へと右足で回し蹴りを叩き込んだ。

 周囲に充満していた殺意が一瞬で消し飛び、怒りの感情を浮かべていた雄の首領の眼も、最早何の感情もない真っ白なものと化した。既に意識はないだろう。


「一つ!


ドンッ!


 空中で体を捻り、雄の首領の顳顬を蹴り抜いた右足の踵を、真紅の牡馬の脳天へと蹴り落とす。

 真紅の牡馬の巨体を支えていた8本の脚から力が抜け、ゆっくりと崩れ落ちる。


「二つ目、次!」


ビッ、ドンッ!


 真紅の牡馬が崩れ落ちるよりも早く、地面へと着地した瞬間に僕は次の目標へと地面を蹴った。

 目前に迫った白銀の牝馬の顎を左膝で蹴り上げる。蹴り上げられた事、いや、接近された事にすら気づいていない牝馬の顎が跳ね上がる。


「三つ!」


ドンッ!


 跳ね上がった牝馬の顔面を左手で掴む。僕は体を持ち上げて牝馬の顔面の上に左手で乗っかる体制となる。

 自分のパートナーが倒された事に漸く気づき、顔に恐怖の感情を浮かべ始めた雌の首領の顔面へと、僕は右の拳を叩き込んだ。


「おっしまい」


バタン、ズダン、バタン、ゴトン


 4体の巨大な魔物達は、意識を失い、ゆっくりと地面にその巨体を沈めていった。







「いやあ、悪かったね。今回僕が来たのは、トラさん達を助ける為だからさ。のっけから全開でやっちゃって本当悪かったよ」


 まあ本当は、早く終わらせてマリンちゃんの下に早く帰りたかったんだけどね。


「いえ、おいどんこそ失礼な事を言ってしもうてすんもはんでした。正直、ここまで格の違うお方と思っておりもはんでした」

「恥ずかしい話でごわすが、おい達より強かお人などおりもはんと思っておりました。御見逸れしもした」


 僕がぶっ飛ばした4体の魔物達は、全員意識を取り戻した。

 僕との実力差を目の当たりにしたアルス山脈中央部の魔物達は大人しく敗北を認めてくれた。


「そろそろランスロード様自らが今回の戦争に介入した理由を教えてもらえますか。やはり、あたい達だけでは不安だったという事ですか?」


「いやね、グィネさんが言うにはさ、ゾーンさん達が立てた作戦がね、短期決戦には最適な作戦だったらしいんだけどさ、一つだけ懸念材料があったんだって」


「懸念材料ですか?」


「うん、作戦の核となっていた、ゾーンさんとトラさんの二人で敵の主力を叩くってところでね、ベルグレシ族単体なら勝つ可能性が高かったらしいんだけど、スレイプニルと連携した騎馬部隊との決戦となると厳しかったらしいんだ」

「でも、作戦自体は良く出来ていたから承認して、グィネさんの方で手を打ったらしいんだ」


「グィネ様がそのような事を。・・・それでグィネ様はどのような手を打たれたのですか?」


「中央部の魔物さん達が南に進軍を開始したタイミングで、ドワーフ王国が討伐部隊を出撃させたっていう情報を流したんだ。そうすれば脚の速いスレイプニルの精鋭達が北に偵察に向かうと見越してね」


「あの情報も貴方達の作戦だったのか。俺達はその作戦にまんまと乗せられたってわけか」


 真紅の牡馬のスレイプニルが、悔しそうに話しに割って入ってきた。


「まあそうなんだけどさ、君達スレイプニルの脚は嫁さんの予想以上に速かったらしいんだ。君達が偵察を終えてベルグレシ族と合流するのと、ゾーンさん達がそれよりも先に勝利するのと、どちらが早いか微妙なタイミングだったらしいよ」


「そうなんだ、私達も貴方方の当初の予想以上の頑張りは見せられたって事ね」


 白銀の牝馬も話しに加わってきた。


「うん。ベルグレシ族の首領の頑張りも含めてね」


「おらたつも評価してくれるだか、あんたさ〜の強ささ見せつけられで、おらたづなんがカスみてえなもんと思われとる思たがら、まんず嬉しいっぺ〜」


 雌の首領が嬉しそうな笑顔になった。いやあ、充分過ぎる程強いでしょ君達は。修行前の僕だったら負けてた可能性もあるぐらいだし。


「それでね、ベルグレシとスレイプニルが合流して騎馬となったらね、ゾーンさん達が納得いくまで闘わせてみて、いざとなったら助けて欲しいって言われたんだ。二人は大事な人材だから失うわけにはいかないからって」


 ゾーンさんとトラさんは暫く黙ってお互いを見つめていたけど、一つ、大きく頷いた。


「そうですか、あたい達が納得するまで様子を見ていて頂いたんですね、ランスロード様」


「わてらが未熟の所為でグィネ様にまで気を使わせてしまいましたわ。わてら、もっと強くならんとあきまへんな」


 ゾーンさんとトラさんは悔しそうではあるけど、少し嬉しそうな表情も浮かべていた。



 後は残る問題を片付けて、さっさとマリンちゃんの待つ家に帰ろう。


「それでさ君達、僕らの領地を狙うのは止めて欲しいんだけど、どうかな?」


「勿論でごわす。というよりおい達では逆立ちしてもおはんには敵いもはん。それよりも処分はおいどんだけで許してほしかです。お願いしもす」


「へ? 処分?」


「そうです、おいどんの首だけで、いや、おい達首領2体の首だけで許してほしかです」


 雄と雌の2体の首領が、並んで土下座で頭を下げ始めた。


「いやいや、首なんかいらないから、元々処分する気なんかないから、攻めて来なければそれで良いよ」


「勝手に攻め込んだとはおい達です。そんなわけにはいかんとです」


「いや、本当にいいから、まあなんだ、これからは仲良くやろうよ、ね」


「あたい達の大将はこういう人だから、気にしないでいいと思うよ。それに《協力》を使ってないランスロード様に瞬殺されたんだから、二度と攻めて来る気は起きないでしょうしね」


 ゾーンさんの《協力》という言葉に、雄の首領が反応した。


「《協力》? スキルですか? 《協力》とは一体?」


「ああ、《協力》ってのはな・・・」


 ゾーンさんと雄の首領が話し始める。何か嫌な予感がしてきたんだけど・・・。


「で、では、ランスロード様とは、あれよりも何倍も強かとですか?」


「何十倍、いや、何百倍かもね」


 驚愕に只でさえ大きい目を見開いて、雄の首領が驚く。そして暫く考え込むような表情に変わった。嫌な予感は続く。


 憑き物が落ちたようなスッキリとした表情に変わった雄の首領が、意を決したように口を開いた。止めようね、面倒な事は。


「ランスロード様にお願いがごわす」


「な、何かな?」


 お願い、止めてよね、違うよね。


「おい達を配下に加えて欲しいでごわす。何卒、何卒よろしくお願いしもす」


 やっぱりかぁ〜。


 仲間が増えたりしたら、また何かと仕事が増えて面倒くさいし、何より直ぐに帰れなくなるじゃないか!


「あのさ、あの、悪いけどさ」

『断ったりしないわよね、あんた!』


 え? あれ、ヴィアさん? 何、聞き耳立ててたの?


『もう一度言うわよ、断ったりしないわよね!』


『あのね、ヴィアさん、あの、その、でもさ〜』


『いいからOKして、名付けして、連れて来なさい! わかった!』


『は、はい』


 け、結局こういう事になるんだよね。

 嫌だなぁ、面倒くさいなぁ。

 早くマリンちゃんに会いたいのになぁ。


 アルス山脈中央部の争乱がやっと決着しました。そして、私の誕生日スペシャルも始まりました。


 これが本日2回目、1時台の投稿となります。本日はまだまだ投稿していきます。

 本日1回目、0時台に投稿した新連載[ユーウィル!]もよろしくお願いします。


 こちらが新連載[ユーウィル!]です。

 ↓

 https://ncode.syosetu.com/n3451ge/


 一話完結方式でお送りする、女の子キャラばかりのほのぼの日常系小説です。力を抜いて読んで頂きたい作品となっております。よろしくお願いします。







 【作者からのお願いです】


 読者様からの反応を何よりの励みとしています。

 ポイント評価、ブクマ登録、感想、レビュー、誤字報告を頂けますと、創作意欲のより一層の向上に繋がります。

 お手数だとは思いますが、何卒宜しくお願いします。




 連載中の[不幸続きで転生5回目・・・]です。

 この小説とリンクする作品となります。

 ↓

 https://ncode.syosetu.com/n7763fx/



 互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。

 こちらもよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ