38・すぐに次の敵って忙しなくて嫌だな
第8回ネット小説大賞の1次選考通過しました。中々、本来の投稿ペースに戻せない状況ですが、これからも頑張って書きますので、引き続き応援よろしくお願いします。
「え〜、マジで! 先々週まで戦争してたんだよ、嫌だよ僕!」
報告を受けて、僕は絶句してしまった。なんとか気を取り直して発言したんだけど、拒絶の言葉しか出て来ないよ。
僕達の国、ヴァンレイン亜人国はアルス山脈南端の麓に位置している。
アルス山脈北端の麓にはドワーフ王国があるが、その丁度中間、アルス山脈中央に聳える2つの山。アルガーとユンゲフロウ。
その2つの山を縄張りとしている魔物の群れが、僕達、ヴァンレイン亜人国に喧嘩を売ってきたらしいのだ。
魔物の群れのは、自分達こそがアルス山脈で最強なのだから、アルス山脈全体が自分達の縄張りであると主張している。ヴァンレイン亜人国とドワーフ王国は速やかに降伏して、自分達の支配下に入れと。
明らかに僕達の、先の戦争による疲弊を狙っての行動で、一つの戦争をしたドワーフ王国よりも先に二つの戦争をしたヴァンレイン亜人国を先に攻撃目標にした事でもそれはわかる。わかるんだけど先の戦争で、実際にはヴァンレイン亜人国は大して被害は出さなかった。
そういう事をちゃんと調べてから喧嘩売って欲しいもんだよなぁ。
「嫌だって言ったって相手が勝手に喧嘩売ってきてるんだから仕方ないでしょうよ。ドルツランドとスペルレインとの戦後交渉も終わってないから、あたしとグィネは忙しいのよ。あんたが行くしかないでしょうが!」
「僕だってマリンちゃんと遊ぶので忙しいんですよ、あっ、そうだ! マリンちゃんも一緒に連れて行ってもいい?」
「駄目に決まってるでしょうが、馬鹿なのあんたは!」
「そんな頭ごなしに馬鹿って言わないでよ。僕だってずっとマリンちゃんと遊ぶのを我慢してきたんだから、今はゆっくりと一緒に遊びたいんだい!」
もう長いことマリンちゃんとイチャイチャしていなかったんだ。たった10日間やそこらのイチャイチャで満足出来る訳がないじゃないか。今回は僕も引き下がらないぞ!
僕と奥さんとの話し合いは平行線を辿った。途中からは嫁さんとマリンちゃんも僕の説得に加わり、マリンちゃんの「おわったらパパとあそんであげるから、わがまま言っちゃダメだよ」という天使の囁き攻撃を受けたが、それにもギリギリで耐えた。
今回の僕の意志は固い。マリンちゃんの怒涛の連続攻撃「わがままはダメ! メっだよ、メっ!」にすら耐えきった。正直、あまりの可愛さに心臓が止まりかけたが、僕は血涙を流しながらも精神力で抑え込んだのだ。
しかし、形勢は危うい。もし次にマリンちゃんの「パパ、大好きだからおしごとがんばって!」攻撃をガッツポーズのジェスチャー付きで受けようものなら、僕の脳は沸騰し、精神崩壊を起こしてしまうだろう。
最早涅槃へと逃げ出して座禅を組むしかない状況まで追い詰められた時に、トラさん、ゾーンさん、ゴザーク、コベン、リスキーの5体が揃ってやってきた。
「奥様方、それにランスロード様、今回の事はわてらに任せてもらえへんやろか?」
「あたい達は先の人間達相手の戦いでは余りお役に立てなかった。今回の相手は魔物、魔物相手ならあたい達も慣れてる。あたい達も役に立つところを見せたいんだよ」
奥さんが5体の魔物の目を、順に見つめてから嫁さんに意見を求める。
「どう思う、グィネ」
「う〜ん、そうですね。質問ですが、貴女達5体の種族だけで臨むのですか?」
「そうどす。昔からランスロード様達を支えてきはったオーク勢には遠慮してもらって、今回はうちらだけで解決したいと思っとります」
「わたくしの調べたところでは、アルス山脈中央の魔物達はかなり強いようです。オーグスやブーザンの指揮能力がなければ難しい戦いになると予想します。それでも貴女達だけで解決出来ると思いますか?」
「いつまでもオーグス殿達に頼る訳にも参りません。今回は某達だけで解決してご覧にいりまする」
嫁さんが長考を始める。様々なパターンを検証しているのだろう、グィネさんの智謀は僕では想像する事も出来ない。やがて考えが纏まったのだろう、嫁さんは自分で納得するように一つ小さく頷いた。
「任せても良いと思います、奥様。完璧を期すならオーグスかブーザンを付けるべきでしょうが、それでは士気の低下を招きます。戦いにおいて士気は重要なファクターですし彼女達だけで行かせるべきでしょう」
嫁さんの回答に、奥さんも一つ小さく頷いて結論を出す。
「わかりました。貴女達に任せる事としましょう。但し、ただ勝つだけでは不十分、こちらの被害は最小限に抑える様に、それと途中の経過もこまめに報告しなさいね」
「「「「「ありがとうございます」」」」」
5体の目の色が輝きを増す。相当な気合いの入れようだな。
でも良かった。これで僕はマリンちゃんとのイチャイチャを継続できる。トラさん達に感謝だなぁ。
☆
「あらあら、ランスロードは今回は戦わないんだ。まあ、それならウチも行かないで済むから楽でいいけん嬉しいけど、アルスの中央部はベルグレシ族の縄張りよ。勝てるのクロス?」
「俺に聞くなよ。まあグィネさんが大丈夫と踏んだのなら勝てるんじゃないの。グィネさんの頭脳は人間レベルを超えてるからね。力じゃなく、知の超人と言える存在だしな」
「そんな事よりも、創造神ゼースがランスロードの監視役に君を遣わせた事の方が驚きなんだけどな、ラフィール第4天使長」
天界の4柱の天使長の内の1柱、元々は5柱いた天使長だが、ルシフルの堕天により、第5天使長から一つ昇格したラフィール第4天使長。風を司る女性の天使。切長の眼光は鋭く、その瞳の色は中央が緑色であり、外周に向かって徐々に青色に変わっている。動きやすそうなショートカットの髪色も生え際の緑色から毛先の青色へと美しいグラデーションを見せている。
「派遣した3柱の天使達が次々と行方不明になれば、ウチ達天使長に役目が回ってきて当然やろ、全部あんたの所為やけんね」
「俺の記憶では、君は【絶風竜】ジュガイルの監視役だったと思うんだけど」
「その役目はとっくの昔に解任されてる、いつの話をしとるんやら」
「まあ、俺も天界の事情に興味があるわけじゃないから詳しくは聞かないけどね、念を押すようで悪いけど、俺の提案は本当に受けた貰えるんだな」
「しつこいなぁ。ウチがゼース様に報告する内容を事前にクロスと協議すれば良いんでしょ。構わないよ、一切報告するなっ
て事なら同意出来んけど、今回はウチも全てをゼース様に報告する気はないけん問題なかよ。但し、それ以外でウチに干渉したり、ウチの事を探ろうとしたら許さないよ」
「ああ、俺も天界の事情に下手に突っ込みたくはないから丁度良い。お互いに干渉しないでいこう」
ラフィールは堕天前のルシフルと仲が良かった、いや、ルシフルを尊敬していたと言ってもいい。ラフィールもゼースに対して思う事があってもおかしくは無いな。
ラシリア大陸を中心に、地上界が大きく揺れ動いている事は間違いない。それによって天界にも動きがある筈だ。
俺の役目は、その時が来るまで出来る限りランスロードを守っていく事だ。
おそらくはその時にこの世界全体の流れが決まる。俺がどう動くべきかもその時に決まるのだろうな。
前書きでも書きましたが、投稿のペースが上がらずに申し訳ありません。
28日に何をどれくらい書くかもまだ決まらないので、もう少々お待ちください。
ネット小説大賞の最終選考まで残れるように頑張りますので、応援よろしくお願い致します。
☆
【作者からのお願いです】
読者様からの反応を何よりの励みとしています。
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お手数だとは思いますが、何卒宜しくお願いします。
連載中の[不幸続きで転生5回目・・・]です。
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互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。
こちらもよろしくお願いします。




