29・【酷薄なる悪魔】ディブロ
今回は四大魔王の一角【酷薄なる悪魔】ディブロの過去話です。
悪魔。
悪魔とは、天界の創造神ゼースによって創られた天界の兵である天使に対抗する為に、冥界の神であるバルデスによって創られた魔界の住人のことである。
冥界。
冥界には、冥界神であるバルデスが自らの身内である数人の冥界神達と住まう冥界と、冥界の兵となるべく創られた悪魔の住む魔界の、二つの国がある。
冥界神達といっても、実際には冥界神たるバルデスと、彼が溺愛する妻、そしてその夫婦の3人の子供達だけである。
冥界神バルデスの妻と子供達には、強い力はない。その弱い家族を守る為に、バルデスは悪魔達を自分達の住まいから遠ざけているのである。
魔界の悪魔達に秩序などというものはない。悪魔達は自らの欲望に忠実であり、力ある者が力無き者の上に立つ、暴力が全てを決定する世界である。
そんな魔界に、一柱の強力な悪魔が生まれた。後に【酷薄なる悪魔】と呼ばれることになる悪魔、ディブロである。
彼、いや彼女。好んで男の姿をとるディブロのことは彼と呼ぶべきだろうか、しかし彼には性別はない。
この事は彼が特別なのではなく、悪魔には性別がない、若しくは決まっていない者が多数存在する。勿論、性別を持つ悪魔もいるのだが、悪魔にとつて性別は意味を持たない。
悪魔とは魔界の空間に突然生まれてくる者で、実際の親という者は存在しないからだ。
悪魔にとっての親や兄弟とは、同じ空間から生まれた者達のことである。親や兄弟に関しても明確な違いはない。なんとなく親であるか兄弟であるかが決まるのだ。
悪魔ディブロにも兄妹がいた。ディブロにとっては妹にあたる者だ。
悪魔にしては珍しいことであるが、ディブロはこの妹を可愛がり、その身を守っていた。
悪魔同士の闘いは。その保有する魔力の量で粗方の勝敗は決まる。
ディブロはその保有する魔力量が他を圧倒していた。更に言えばその戦闘センスもずば抜けた存在であり、例え相手が複数であったとしても、余分な魔力を使わずに適切に相手によって割り振り、時には悪魔らしくもなく体術によって相手を葬る事もあった。
ディブロは魔界において、メキメキと頭角を表していき、いつしか魔界の王とまで呼ばれるようになっていた。
冥界の神バルデスは、自分の身内以外を決して信用しない神であり、嫉妬深い神でもあった。
冥界神バルデスは自らが加護を与えた悪魔という存在であっても信用はしない。魔界で頭角を現わすディブロのことも次第に疎ましく思い始めた。
バルデスはディブロが可愛かっていた妹を捕まえ、ディブロと敵対していた悪魔の勢力に引き渡して、彼への切り札として使うように申し渡した。
ディブロは自分の妹を盾として襲いかかってきた悪魔の敵対勢力を一掃した。その悪魔達の全てを、葬ったのである。彼の愛した妹の命と共に。
この頃から、彼は【酷薄なる悪魔】と呼ばれるようになる。
ディブロを除く事に失敗したバルデスだが、彼にとって力強い味方が冥界において復活を果たした。
かつて、大神ゼースによって殺された【堕天使】ルシフルが、殺される寸前に受けたバルデスの加護により復活したのである。
天界の住人である天使が堕天したルシフルの存在を、バルデスは非常に好み、冥界に住まわせて保護したのだ。
元々、天使達の間でも、尊敬を集めていたルシフルの元には、天使達が続々と堕天して集まってきた。
バルデスはこれらの堕天使達の全てを冥界に住まわせて、魔界への対抗勢力としたのだ。
冥界神バルデスへの不信感を募らせ、魔界に住みにくくなったディブロは、魔界からの脱出を考えるようになった。
ディブロから見ればバルデスなど、不信感こそあれど、どうでもいい存在であった。自らの創造神ではあるのだが、好き嫌いで言えば大神ゼースの方が嫌いで、嫉妬深いバルデスの事は面倒くさい存在くらいにしか思っていなかったのだ。
ディブロは住みにくくなった魔界よりも、ゼースもバルデスも大っぴらには手を出す事の出来ない、自由な地上界へと思いを馳せていった。
その頃バルデスは、ゼースの創った地上の統治者である人間に対抗する存在として、魔界の生物である魔物を定期的に地上へと排出していた。
ディブロはその排出される魔物の群れに紛れて地上へと脱出した。
その後、ディブロは北の大陸へと向かう。
理由は、復活直後のルシフルと初めて会った時に、ルシフルから聞いた【極氷竜】ドーマルマンに会う為である。
北の大陸に到着したディブロとドーマルマンは意気投合し、その後は、北の大陸にて生活を共にする事となる。お互いに深く干渉しないという彼等らしい条件を設けて。
【酷薄なる悪魔】ディブロ。
彼は確かに大神ゼースの事が嫌いであり、そのゼースの創った人間の事も気にいらない。
彼に嫉妬の心を向けた冥界神バルデスの事も好きではない。
だが、彼にとって一番我慢がならないのが、自らの自由を抑圧される事である。
別に欲などはない。あるのは誰に指図される事もなく、自らの好きに自由に生きる、それこそが悪魔らしい悪魔である彼の望みであるのだから。
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