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26・ドワーフ王国防御戦

「正門は後回しで良い。左右の出城を集中して攻めるのだ。カタパルトの準備遅いぞ! 何をやっておるか!」


「苦戦してんな、ペドラン。やはり硬いか?」


「ハッ、まだ一当てして様子見の段階ではありますが、硬いですな。ドワーフどもの武器は優秀です。特に固定式の強弩の威力と射程は凄まじく厄介です」


「フン、取り付いてしまえばどうという事もあるまい」


「ハッ、ドワーフどもには籠城しか手がありませんから、個人の闘いに持ち込めば瓦解するでしょう」


 ドワーフ王国の首都である洞窟都市ギルエフは天然の要害である。

 アルス山脈の北端に位置する巨大な洞窟をそのまま街としたもので、その洞窟の入り口は巨大な城を抜けた先にある。

 アルス山脈を背にした巨大な城を囲むように半円形に10メートルに及ぶ高い壁が設置され、その中心にある正門と左右の副門にもそれぞれに出城が設置されている。

 これらの城や城壁を抜けて初めて街への突入が可能になるのだ。


 ドワーフ王国の国王ユーロウ王は、ドルツランド王国の侵攻の報告を受けて直ぐにこの要害への籠城を決め、周辺の街に住むドワーフ達は自分達の街を捨て、既にギルエフの街の中に入っている。

 首都ギルエフは有事の際の全国民の避難所としての機能を持ち合わせていて、全国民を収容しても5年は戦い続けられる程の物資が貯蔵されているのである。



「正門をぶち破った方が早いのではないのか、ペドラン」


「自分や殿下はそれで構わないのですが、正門からでは部下達の犠牲が増えます。部下達では左右の出城からの攻撃に対処出来ませんから」


「しかし副門からでは多くの兵を突入させるのは無理だろうが」


「自分と殿下の部隊さえ入れればどうとでもなります。カタパルトの設置が終われば自分と殿下とで2万づつを率いて左右の出城を攻めたいと思いますがよろしいですか?」


「俺様は別に構わんが、全軍を突撃させるのではないのか?」


「無駄に死者を増やすだけです。自分と殿下とで出城を落とし、中から正門を開けて後詰めの3万は迎え入れます」

「ドワーフどもの総兵力は2万。その内、出城には規模的に考えても5000づつでしょう。2万づつでも多いくらいです」


「そんなものか、戦争とは面倒くさいものなのだな。まあ、面倒な考え事は貴様に任せる。俺様は敵をぶち殺せば良いのだろ?」


「ハッ、そう願います」


 初戦の様子見をしながらも、歴戦の勇将ペドランは勝ちへの戦略を積み重ねていく。この時、既にペドランにはドワーフ軍の弱点が見えていたのである。

 ドワーフ軍にはその優秀な武具で持って強軍となってはいるが、自分やラオルース王太子の様な圧倒的な力を持つ強者がいない。

 未だ援軍の到着していない今ならば、自分達、強者の力で持って圧倒出来る事を。







「戦況はどうなっておるか?」


「ドルツランド軍は我らの強弩に対して有効な対策を講じることは出来ません。我が軍が圧倒しています」


「報告! ドルツランド軍がカタパルトの設置を始めております」


「距離は?」


「我が軍の強弩の射程範囲内です」


「8割方設置したところで強弩の攻撃を始めよ。当然盾も設置するだろうが、一点に集中すれば盾毎粉砕出来る筈だ」

「連弩隊はどうなっておるか?」


「各出城に2000づつ配置しております」


「左右の出城は3000づつに増員せよ。敵はおそらく左右の出城を狙ってくる。正門の出城には石弓隊を向かわせて、左右の出城の援護をさせよ。行け!」


「「「了解しました、ユーロウ王よ!」」」


 ドワーフ王国のユーロウ王は、自国の武具に対して絶対の自信を持っていた。

 如何な国の軍隊であろうと守りに徹したドワーフ軍を抜く事など出来ないのだと。




「敵のカタパルトに対して、強弩による攻撃を開始しました。敵も盾に対して防御結界を張っておりますが、我が軍の強弩の威力の方が強く、カタパルトの発射前に粉砕出来る見込みです」


「良し! そのまま攻撃を続けよ」


「敵の集結していた二つの部隊が攻撃を開始しました。攻撃目標は左右の出城。敵将は勇将ペドランと【勇者】と噂されるラオルース王太子と思われます」


「ハハハッ、馬鹿め、力押しに出てきたか。連弩隊の標的ではないか」


「左右の出城の連弩隊が攻撃を開始! 敵魔導部隊の防御結界も我が軍の連弩の速度に間に合っておりません。面白いように敵兵が倒れていきます」


「正門出城の連弩隊、石弓隊も援護射撃を開始しました。圧倒的、いや、一方的に我が軍の攻撃が効いております。敵2部隊の損害はそれぞれ7000を超えているものと思われます。我が方の損害は軽微です」


 勝った! ユーロウ王はそう思った。

 初戦にして2万づつを左右の出城に繰り出してきた相手に対して、1時間足らずでそれぞれ7千、合計で1万4千もを葬ったのである。最早、敵は撤退するよりないと思うのも当然だろう。


 故に次の報告を受けたユーロウ王は自分の耳を疑う事しか出来なかった。



「左の出城の門が破壊されました。敵兵が雪崩れ込んできます!」


「はあ、何を言っている?」


「物見の報告では、ラオルース王太子が単独で出城の門を破壊し、出城を駆け上がった模様です。ラオルースは既に出城上部で暴れており、連弩隊は半壊していると」


「右の出城も突破されました。ペドラン大将軍が単独で門を突破しました。ペドランは数名の部下を連れて正門方面に向かいました。残りのペドランの部隊は出城上部を目指しております」


「報告! ドルツランドの残る3万が正門に向かって進軍を開始しました」


「ば、馬鹿な! 何を言っておるのだ。それぞれの出城は個人に突破されたと言うのか?」

「そんなことが? そんな馬鹿な事があってなるものか!」


 ユーロウ王は膝から崩れ落ち、力なく座り込んだ。勝っていた筈の戦局が個人の力で無理矢理に覆されてしまったのだ、ユーロウ王の落胆も無理からぬ事だろう。


 しかし次の報告を受けて、ユーロウ王はもう一度力を奮い立たせる事となる。



「王よ、動き出した敵の後詰めが何者かの攻撃を受けています。あ、あれは、悪魔です。悪魔の軍勢が突如として転移してきました。その数およそ3千!」


「左の出城周辺にも悪魔の軍勢2千が現れて戦闘を始めています。ラオルースと相対しているアレは、あの容姿はおそらくディブロ殿と思われます」



「報告! アルス山脈南側より魔物の軍勢が現れ、右の出城への突入を開始しました。その数およそ2千です」


「き、来てくれたのか!」


 ユーロウ王は再び足に力を入れて立ち上がった。


「本城の門を固く閉ざしてドルツランド兵を入れるな! 連弩兵並びに弓兵は張り巡らせた秘密の通路より可能な限り撤退させろ! 槍兵並びに盾兵は死力を尽くして悪魔並びに魔物達を援護するのだ! ドワーフの意地を見せろ! 通用門より主力の斧兵部隊を出して敵を殲滅するのだ! まだ終わってはおらん」


 そう、まだ終わってはいない。


 それどころかドワーフ王国の防御戦は始まったばかりなのだから。

 ドワーフ王国の防御戦開始です。作者は集団戦を書くのが苦手で不安があったのですが、個人戦が主戦になるような展開になりそうですね。

 まあ、どのみちヴァンレイン亜人国VSスペルレイン女王国もあるので集団戦も書く事になると思いますが・・・



 ポイント評価の仕方が変わったみたいです。

 本文、後書きの下の☆☆☆☆☆をボチっと押すだけで良いそうです。

 試しに押してみて下さい。また、☆マークを押す際には「ボチっとな」と声に出して押す事をお勧めします。








 【作者からのお願いです】


 読者様からの反応を何よりの励みとしています。

 ポイント評価、ブクマ登録、感想、レビュー、誤字報告を頂けますと、創作意欲のより一層の向上に繋がります。

 お手数だとは思いますが、何卒宜しくお願いします。




 連載中の[不幸続きで転生5回目・・・]です。

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 互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。

 こちらもよろしくお願いします。

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