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25・戦争って怖くて嫌だな

 今回は他国の話になります。

「で、どうなのだペドラン、帝国は間違いなく動かんのだな」


「ハッ、自分の子飼いの暗部からの報告なので間違いはありません。帝国とドワーフ王国との武器取引は未だ続いていますが、ドワーフ王国がエフード王国と新参のヴァンレイン亜人国とで結んだ3国同盟を帝国は好ましく思ってはいません」


「しかしだペドラン、ドワーフ王国は帝国にとっても大事な武器庫の筈だ。いざとなれば助け船を出すのではないか?」


「確かに、帝国はドワーフ族の人的資源の確保には動くようですが、ドワーフ王国の国土には興味がないようです。現皇帝のズタルリーンは、何かと帝国の意に沿わぬユーロウ王政権が気にくわないようです。放っておけば帝国がドワーフ王国に攻め入る事態となる恐れがあります」

「そうなれば我が国の国土拡張の悲願は難しくなると思われます」


「そうか、ユーロウはやり過ぎたという事なのだな」


「ハッ、ユーロウ王は歴代のドワーフ王の中でも帝国嫌いで有名な王ですから」


「そうか、では建国王アイザーの成したように四大魔王の一角である【酷薄なる悪魔】ディブロさえ討伐すれば、我が王国の悲願に近づけるのだな」


 そう言ってドルツランド王国の現国王、ロボルト=アイザール国王はほくそ笑んだ。


 ロボルト王が意見を求めていた相手は、ドルツランド王国の軍事顧問とも言うべきペドラン大将軍である。

 ドルツランド王国の全部隊だけでなく、暗部や諜報部、自警団に至るまで全ての軍事を司る絶対者だ。


 ペドラン大将軍は既に90を越える高齢者で、髪は真っ白な白髪なのだが、身長2メートルの大男であり、その姿だけでなく筋力、体力共に30代中盤、いや、一般の兵士、いや、豪傑と呼ばれる者達とも比べるべくもない化け物である。


 対して、ロボルト王は若くして王となり20年、未だ30代の野心家である。

 その野心家が目指すドルツランド王国の悲願とは、ラシリア大陸西部の武力統一である。ロボルト王はドワーフ王国の国土を吸収すれば、西部最強と言われるスペルレイン女王国をも一蹴出来ると考えている。

 その上でアルス山脈を越えて、西南部をも手に入れたいのである。



「フン、帝国の動向など気にする必要はないぞ親父。シャシャリ出て来ればドワーフどもと一緒に叩き潰すだけだからな」


 玉座の間の大扉を乱暴に開き、乱入してきた一つの大きな影。

 ペドラン大将軍よりも更に長身の230センチ。真っ赤な髪色に真っ赤な瞳。全身を包む鎧すらも真紅に染め上げた男の腰には、建国王アイザーの愛用した聖剣カイザールを帯剣している。

 年若い21歳の青年。若くして王となったロボルト王が若くして作った第1子。

 ドルツランド王国の第一王子であり、王太子である男。


【勇者】ラオルース=アイザールである。


「俺様とペドランが前線に出るのだ。何が来ても叩き潰すだけの事だ」


「しかし倅よ、貴様は初陣である。まあ、貴様が遅れをとるとは思わんが油断はならんぞ」


「恐れ多くも王太子、自分もそう思います。此度はおそらくヴァンレイン亜人国も出て来るものと思われます」

「王太子のお力に疑いはありませんが、3国の敵を相手にする事となるのです。ご油断無きようにお願いします」


「フン、ペドランの言葉とも思えんな。只の悪魔とドワーフと吸血鬼だろうが。纏めて叩き潰すだけだ」


 ドルツランド王国において建国王アイザーは伝説の強者である。

 300年前の偉業は全て【勇者】アイザーの功績であり、その影にいた【英雄】の存在など知る由も無いのである。







「お母様、ドルツランドは何と言ってきたのです?」


「ドルツランド王国は、四大魔王や亜人の治める土地を国とは認めぬと、そして、それらと同盟や条約を結んだドワーフ王国を誅滅すると言ってきましたわ」


「ギリス教のドルツランド支部が出した声明に追従すると言うことです?」


「表向きはね。実際のところはロボルトが野心を顕にしただけでしょうけど」


「お母様はどうなさいますです?」


「まあ丁度良い機会ではありますわね。わたくし達の国にも悲願はありますもの、わたくし達はわたくし達の成すべき事をするだけです。ドルツランドはその上で始末すれば良いのですわ」


「ではやはり、ワーが行って【英雄】を打倒してくるですね。モル、準備はよろしいです?」


「はい、エレ姉様。エレ姉様の身は、ミーが責任を持って守りますです」


「この度の【英雄】討伐は、建国女王であるルフェイ様以来の悲願です。わたくしも現女王として共に参ります」

「エレンにモルルーラ、陣頭指揮は貴女方に任せます。必ずや【英雄】打倒を成し遂げるのですよ」


「「はい、女王様」」



 スペルレイン女王国。

 この国において打倒しなければならない強者は、ルフェイ建国女王の頃より【英雄】ランスロードと決まっている。

 ランスロードの強さを知るルフェイは、自らの裏切りの報復がランスロードによって成される事を恐れ続け、ランスロード打倒を国の第一義としてきた。しかし、スペルレイン女王国にはそれを成し遂げる程の強者は生まれて来なかった。


 しかし、当代のルフォール=リ=スペルレインの代になり、漸くその悲願を託せる人物達が生まれたのである。


 第4王女エレン=ル=スペルレインとその騎士であり従姉妹でもある王族【勇者】モルルーラ=ル=カタール魔法騎士。

 この二人の魔法使いを有し、スペルレイン女王国は遂にその悲願の達成を目指すのである。



「【深緑の探索者】モルドの築いたエフード王国からの援軍があるやも知れませし、【破滅の堕天使】ルシフルの動向にも注視しなければなりません。二人共に用心するのですわよ」


「「はい、女王様」」







「ほら、あんたも早く支度しなさいよ。アイツらはもう其々に動き出したわよ」


「え〜、嫌だなぁ。本当に戦争するの?」


「何度も同じ事を言わない! とりあえずあんたはドワーフ王国に向かったドルツランドの相手をしなさい。あたしはスベルレインの方の防衛をしますから」

「グィネは此処を守っていて頂戴ね」


「承知致しましたわ奥様。エフードにも援軍を派遣するように要請していますので、奥様の方に向かわせますわね」


「流石に対処が早いわね、グィネ。あたし達の留守中にも好きに動いて構わないから、存分におやりなさい」


「はい、奥様」


 う〜ん、僕の奥さんと嫁さんは頼りになるけど怖いなあ。


「じゃあマリンちゃんは僕とドワーフ王国に行く?」


「え、いいの、パパ? やった〜!」


「駄目に決まってるでしょ旦那様! マリンはわたくしとお留守番ですわ!」


「戦争に娘連れて行く馬鹿がどこにいるのよ! あんたは馬鹿なの、本当に!」


 奥さんと嫁さんに一斉に反対されてしまった。言ってみただけなのに。とほほ。


 しょうがない、ドワーフ王国を助けてきますか!


 でも嫌だなぁ、面倒くさいなあ。


 僕はいつになったらのんびりと暮らせるのかなぁ?

 ドルツランド王国がドワーフ王国へ、スペルレイン女王国がヴァンレイン亜人国へと其々侵攻を開始しました。

 主人公ランスロードの平穏な日常はまだまだ先の事になりそうですね。







 【作者からのお願いです】


 読者様からの反応を何よりの励みとしています。

 ポイント評価、ブクマ登録、感想、レビュー、誤字報告を頂けますと、創作意欲のより一層の向上に繋がります。

 お手数だとは思いますが、何卒宜しくお願いします。




 連載中の[不幸続きで転生5回目・・・]です。

 この小説とリンクする作品となります。

 ↓

 https://ncode.syosetu.com/n7763fx/



 互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。

 こちらもよろしくお願いします。


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