24・子供は好きだけどドレカヴァールは嫌だな
「いつまでグウタラしてらっしゃるのですか旦那様。アザマ山に戻られてからもう10日も経つのですよ!」
「だってさあ、大変だったんだよグィネさん。グィネさんも見てたんだからわかるでしょ。ねぇマリンちゃん」
1年間はマジに長かった。途中からは【武の堕天使】スタロと【悪の堕天使】アルモウスも復活しちゃうし、ルシフルとアポリドンを加えた2VS3の連続組手なんてマジで死ねかと思ったよ。
やっと帰ってこられたんだから、少しくらいはマリンちゃんとイチャイチャしててもバチは当たらないとはずだよね。
「確かに大変な修行だったとは思いますが、もう10日ですよ。わたくしが奥様に叱られてしまいます。それにマリンの教育にも良くありませんわ」
「グィネママをこまらせちゃダメだよパパ。ほかのまものさんたちはみんなはたらいているんだからね、パパもはたらかないと、メ、だよ」
う〜ん、怒り方も可愛いいなぁマリンちゃんは。
「奥様の育て方が良かったのですね、マリンはしっかりとしていますわ。旦那様もしっかりと働いてくださいまし」
「だけどさあグィネさん、国の事はグィネさんと奥さんで全部やってるしさあ。正直言って僕のやる事ってあるの? アイツら四人全員が復活したらしいけど、絡んできてはいないでしょ」
「はい? 聞いていらっしゃらないのですか? 絡んできてますわよ! 今も北の大陸から使者の方ががいらっしゃっていて、奥様が対応してらっしゃいますわ」
「え? マジで?」
「マジですわ」
北の大陸っていうとディブロのところからかあ。嫌だなあ、誰が来たんだろ? パズズールとかだったら会いたくないなあ。嫌だなあ、面倒くさいなあ。
「迎賓館の方にいらっしゃいますから、旦那様も早く行ってくださいな」
「やっぱり僕も行かなきゃ駄目なの?」
「駄目です!」
「絶対に?」
「絶対にですわ!」
はあ〜、嫌だな。もっとのんびりしていたいのになあ。
「パパ! おしごとだよ、がんばって!」
ああ、マリンちゃんの可愛いガッツポーズが出ちゃったよ。しょうがない、行くか。
僕は官邸洞窟から建設途中の城の僕の執務室となる予定の部屋まで、亜空間移動した。
この1年間で大分様変わりしている、首都アザマの様子を視察する為に直接迎賓館には飛ばなかったのだ。
本当はディブロの使者に会いたくないから遠回りしただけだけどね。だって嫌なんだもん。
建設途中の城は8割方は完成している。名前は深探城。
モルドの築いたエフード王国首都ゲイロの城の名前が、僕の昔の異名が由来した蒼拳城なので、モルドの異名だった【深緑の探索者】から奥さんが名付けた城名です。
軍事関係の事はこの城で行う事になっていて、もう既にいくつかの部隊が入っています。
内政の事は迎賓館の隣に建てた都庁舎で行う事になっていて、建物も既に完成しています。
僕の奥さんと嫁さんは大体この建物で仕事しているようです。まあ、僕は蚊帳の外なんで詳しくは知りませんけどね。
ヴァンレイン亜人国は首都アザマ以外にも開発を進めています。それが砂漠地帯の街ギガースと森林地帯の街オーガです。
元々がギガースとオーガの治めていた場所で、街名もそれぞれの種族名を街名としました。
砂漠地帯の街ギガースはエフード王国との中継地点として、森林地帯の街オーガはラシリア大陸中央部の国々への牽制として、それぞれ役立ってくれているようです。
何はともあれ着いちゃいましたよ迎賓館。嫌だなぁ、入りたくないなあ。
着いちゃったからには仕方ないので、門をくぐって2階の来客用の部屋に向かう。来客用の部屋は見栄を張って豪華な造りになっていて、その装飾を施された木製の扉を開ける。
奥さんが一人、来客と向き合って話しをしているところだった。さて、誰が来たのかな?
んっ! 子供? ヤバイ、子供だ!
「あっ、ランスお兄ちゃんだ! 久しぶりだねランスお兄ちゃん」
「あ、ああ、ドレカヴァール君も復活してたんだ。良かったね」
見た目的には10歳くらいにしか見えないけど、実際には大人である。【完全な無垢】ドレカヴァール。
ディブロのところの幹部ではないけど、奥さんがディブロの幹部をやっていた頃の直属の部下の悪魔です。
「ヴァルくんの事、覚えててくれたんだ。嬉しいな」
僕はこの子が苦手なんだよなぁ。
「今ね、ヴィアお姉ちゃんにお話を聞いてもらってたんだ。ランスお兄ちゃんも一緒にヴァルのお話聞いてくれる?」
「ああ、聞くよ。ヴィアさん、ディブロは何て言ってきてるの?」
僕は奥さんにこれまでの説明を求めた。だってこの子が苦手なんだもん。
僕は基本的に子供好きだと思うけど、この子は別です。口調は子供っぽいけど、一切感情が無いみたいな無表情が怖いんだよなあ。
感情が無いわけじゃないのはわかっている。嘘のつけない性格の子で、自分が味方と思っている相手に対しては絶大な信頼を寄せるけど、敵と認識したら敵意を剥き出しにして一切の容赦をしない。殺し方も残酷の一言に尽きる。
それらの全てを無表情のまま行うのである。【完全な無垢】って誰が付けたのか知らないけど、正にこの子を表すのに適切な異名だと思います。
言葉で表すのは難しいけど、本当に怖いんですよ、この子。顔は可愛い顔してるのにね。
ついでに言うと性別が無いんだよね、この子。
奥さんの話によると、西の2大国の一つ、ドルツランド王国がドワーフ王国を狙っているらしい。
ドルツランド王国は【勇者】アイザーの建国した国で、ドルツランド王国の事を気に入らないディブロとしては叩き潰したいらしく、僕達の国にディブロの北の大陸とドワーフ王国との同盟の橋渡し役をして欲しいらしい。
「ディブロとドワーフ王国の同盟は良いと思うけど、ドワーフ王国が攻められたら僕達も黙ってるわけにはいかないんじゃないの? 戦争は嫌だけどさ」
「まあそうね、うちも3国同盟を結んでいるのだから黙ってはいられないわ」
「ただね、ディブロ様の話によると、スベルレイン女王国にも怪しい動きがあって、どうやらうちを狙っているみたいなのよ」
スベルレイン女王国。
僕の昔の故郷であるスベルレイン王国を、ルフェイが内乱によって女王制にした国だ。
現在はドルツランド王国とスベルレイン女王国も仲が悪いのだけど、両国共に勇者を有していて侮れない存在となっている。
「じゃあどうするの、ヴィアさん?」
「そうね、先ずはディブロ様とドワーフ王国の同盟の橋渡しをするわ。そして、うちとディブロ様の不可侵条約も結んで様子をみるしかないわね」
なんかキナ臭い感じになってきちゃったなあ。
僕は帰ってきたばっかりなのに。
嫌だなぁ、もう少しのんびりしようよ。
ランスロードが修行を終えて帰って早々に、キナ臭くなってきました。
新キャラのドレカヴァールくん。ただの伝言キャラの予定だったのですが、作者的には気に入っているので活躍があるかもです。
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連載中の[不幸続きで転生5回目・・・]です。
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互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。
こちらもよろしくお願いします。




