23・修行を1年間って長くて嫌だな
ランスロードが建国を宣言しました。
その事に反応を示す者達がいたようです。
「ぐはぁあぁ! 何故貴様がこんな所に?」
ヒュッ、ズドオォォン
「げはあぁぁ!」
ガツッ
クロスの回し蹴りが天使の顳顬を捉える。一方的にやられ続けている天使は既にボロボロである。脳を揺らされ倒れた天使の羽根を踏みつけながらクロスが言う。
「どうだ? 今からでも先程の俺の提案を受け入れる気にはならないか?」
「貴様の提案をのむ天使などいるわけがない! ゼース様は貴様の存在を未だに許してはいないのだぞ!」
「そうか、ならば死ね!」
「くっ!」
ガッツン、ババッ
天使はクロスの隙をついて足払いを引っ掛けた。クロスがバランスを崩した隙に上空に飛ぶ。
実力差を痛感させられた天使には、最早逃げるしか手がなかった。
「アナザーワールド!」
亜空間魔法「アナザーワールド」。クロスの得意とする亜空間魔法の究極魔法。その効果は周囲の空間ごと亜空間に閉じ込めてしまう。
「逃げられるとでも思ったのか?」
「くそっ、僕を殺してゼース様が黙っているとでも思っているのか?」
「お前はゼースの事を勘違いしているよ。ゼースはお前のような下っ端の天使など使い捨ての駒としか思っていないさ」
「く、しかし僕がいなくなれば新しい監視役が送られてくるはずだ」
「だろうな。その時にはお前にした提案をその新しい監視役にも持ちかけるだけさ」
「そうだなぁ、お前を殺してはその新しい監視役の天使の印象が悪くなるな。よし、殺すのは止めて亜空間に閉じ込めるとするか」
「や、やめ・・・」
「アナザーボール!」
クロスが天使に向けてかざした手の平から小さな黒い球が現れた。小さな黒い球体は膨張しながらゆっくりと天使に近づいていく。天使に接触した頃にはその直径は15メートルを超えていた。
「うぎゃあぁぁ、た、たすけ」
フシュウウゥゥゥッ
天使は黒い球体の中へと吸い込まれていった。天使を吸収した黒い球体は、逆再生されているかの様に縮小しながらクロスの手の平に戻っていった。
「悪いな。まだゼースをランスロードに近づけさせたくはないんだよ」
カツン、コツ、コツ、コツ
「何をコソコソとやっているのかしら? クロス」
「あれ、ヴィアさん、もしかして気づいてたの?」
足音と共に現れたヴィアに対して、クロスが慌てた様子で尋ねた。
「あたしが気づいてないとでも思っていたの? あんたが何をしようと干渉する気はないけど、うちの旦那に迷惑をかけることだけは止めてよね」
「そこには俺も一番気をつけていますから大丈夫。安心してくださいよ」
ヴィアはここで一呼吸置いて話を変えた。
「ところでクロス、話しは変わるけど、7・8カ月前にこの大陸の東側で建国された、獣の国の噂は聞いた事あるかしら」
「ええ、聞いてますよ。その獣の国の王様と俺とはちょっとした知り合いなんですよ。まあ、向こうは覚えていないでしょうがね」
「知り合い? あんた、東側に知り合いなんていたの?」
「まあちょっとしたね、といってもさっき話した様に向こうは私の事は覚えていないはずですよ」
「まあいいわ。この大陸の西側と東側とで絡むことなんて滅多にないことですもんね。だけどもし絡むことにでもなったら、あんたにも動いてもらうわよ」
「その時には、お手伝いさせてもらいますよ」
あの子には悪い事しちまったな。俺の不注意で失敗してしまった。
言ってみれば成功した先輩がランスロードで、失敗してしまった後輩があの子、今はナスカくんといったか。
またあの子がこの世界にやって来る事になるとは思ってもみなかったが、もし俺と行き合う事になったら、俺に出来る事はしてあげたいと思う。
まあそれもゼース次第になるかもしれないがな。
☆
「シヴァル様、あんたの父親が大陸の西側で国を興したらしいっすね」
「ああ、サバルナ獣王国の獅子王ライオルに聞いたがよ、どうせやる気のねえ親父のことだ、お袋にせっつかれて仕方なくってとこだろうよ」
「王じゃなく代表を名乗ってるくれえだ、今でも楽してえって気持ちがダダ漏れじゃねぇか!」
「その辺の事はおいらにゃわかりませんがね、四大魔王が続々と復活してるんですぜ、覚悟を決めたって事じゃないんですかい?」
「お前にゃわからんだろうがなぁ、ブラドショーよ。うちの親父は筋金入りの怠け者なんだよ」
「昔は強かったらしいが、今じゃただの引き篭もりだぜ。当てにはならねぇよ」
お袋は嘘をつくような玉じゃない。親父が昔、四大魔王を倒したってえのは本当なんだろうが、俺の知る親父はやる気のねぇグウタラ野郎だ。四大魔王と闘えるとは思えねぇ。
「まあ心配はいらねぇよ、ブラドショー。もし四大魔王が俺達の国、ジベルトにちょかいでも出してきやがったら、俺がぶっ倒してやるよ。勇者としてな!」
親父やお袋はどうでもいいが、マリンはいずれ俺達のジベルト国に迎え入れてやらんとなあ。
☆
「嫌だなあ、帰りたいなあ」
「いつまでブツクサ言ってんじゃねえよ、ランスロード!」
「そうですよ旦那様、いい加減に覚悟を決めていただかないと、わたくしが奥様に叱られます」
「グィネママのいうとおりだよパパ、がんばって!」
建国宣言も無事に終わったけど、結局、僕は西の大陸、アファルカ大陸のルシフルの本拠地で1年間も修行に行く事になってしまった。今まさに、アファルカ大陸に向かっている最中である。
僕とマリンちゃん、そして新妻のグィネさんとついでにブーザンは、フアサさんの背中の上で飛んでいる。
ルシフルは自分の羽根を広げ、フアサさんの横を飛行中だ。
救いはマリンちゃんも一緒にアファルカ大陸に行く事になったことだ。嫁さんと奥さんは、交互に僕とマリンちゃんの面倒をみてくれるそぅだ。で、最初は嫁さんのグィネさんが付いてきてくれる事になった。
「パパ! おっきなしまが見えてきたよ。すごい! おっきいね!」
う〜ん、マリンちゃん、めっさカワユイ!
「マリンちゃん、あれは島じゃないよ。あれがね、アファルカ大陸なんだよ」
「うわ〜、すごいね、パパはあんなにおっきなとこでしゅぎょうするんだね。すごいなぁ〜」
カワユス、マリンちゃん、なまらカワユス!
これは僕も気合い入れて修行しないとだなぁ。
でも、やっぱり嫌なものは嫌だな。
1年間は長過ぎるって〜〜〜。
本当に帰りてぇ〜〜〜。
はれてランスロードが国持ちとなりました。
次回から1年後に飛び[転生5回目・・・]と同時期となります。お楽しみに!
☆
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お手数だとは思いますが、何卒宜しくお願いします。
連載中の[不幸続きで転生5回目・・・]です。
この小説とリンクする作品となります。
↓
https://ncode.syosetu.com/n7763fx/
互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。
こちらもよろしくお願いします。




