22・代表は大変そうだから嫌だな
27日の0時頃に投稿予定でしたが、なろうの臨時メンテナンスの予定が入ったので、今日、投稿します。
次回の投稿は29日の0時頃を予定しています。もう暫くの間は隔日更新になりますが、お付き合いください。
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ルシフルの奴が1年間、僕と一緒に修行するとか言い出した。
冗談じゃない! 1年もこんなのと修行したら僕が死んでしまうでしょうが。
絶対に嫌だ!
『勝手な事を言うんじゃないわよルシフル。うちの旦那を勧誘しないでくれる』
『あぁん、誰だテメエ?』
『おお、ヴィアさん。ルシフルがアホな事を言い出してさあ、ヴィアさんは勿論反対だよね、ね』
『あんたは簡単に堕天使なんかに負けてんじゃないわよ。まったく』
『いやいや、ルシフルはまだ無理だって。僕は最近になって鍛え始めたばっかりなんだから』
『300年も何もしなかった、あんたが悪いのよ。そこでルシフルと修行した方がいいんじゃない。マジで』
『嫌だって、1年だよ。ヴィアさんだって旦那と1年も離ればなれなんて嫌でしょ、嫁さんとして』
『おいおい、テメエら。何を二人で話してんだこら。それになんだ、ヴィアって悪魔んとこの血吸い女だよなぁ』
『旦那とか嫁とか言ってたが、テメエら結婚してんのか? ランスロードよお、テメエはたしか、ルフェイとかいう魔法女と付き合ってなかったか?』
「あれ、そういやあお前、人間じゃねぇじゃん。あ、そうか! 人間だったら300年も生きてられるわけねぇもんなぁ、覚醒勇者じゃあるまいし、ん、でも300年前でもランスロードは超人化してたから寿命が延びてても有りっちゃ有りか」
「勇者でもないのに超人化って、昔からテメエは非常識な奴だよなあ」
へっ? 今頃? コイツ今迄、僕の異種族転生に気づいてなかったのか?
「何、ルシフル、お前もしかしてアポリドンから何も聞いてないの?」
「ああ、負け犬の話なんか聞いてらんねぇからよ。アイツがお前に負けた時から、アイツからの《思念伝達》は俺の方で切ってたぜ」
部下の話くらい聞いてやれよなぁ、まあ、ルシフルらしいっちゃらしいけど。
僕はこれまでの事を、掻い摘んで話すことにした。301年前にルシフルを倒してから後の話を。
アポリドンをぶん殴った経緯も話しておかないとマズイしね。
「わはははは、ダッセぇ! 何、お前、クソ勇者と魔法女に裏切られたの! わははは、マジダッセぇ! ぎゃっははははは、は、げほぉ、ごほ、ごほ」
「咽せるまで笑うな!」
「げほぉ、だってよぉ、ごほ、お前、けひゃ、ひゅ〜、ひょっ、ひょっ、ぱひゅ〜〜」
「呼吸困難になってんじゃねぇ!」
『そろそろあたしが話してもいいかしら?』
『おう、いいぜ、裏切りの片棒担いだ血吸い女』
『敵になるかもしれないうちの旦那と修行って、どういうつもりなのよ、ヤンキー小僧!』
『別に意味なんてねぇぜ、ただ単にテメエの旦那が鈍ってるから鍛えてやろうってだけじゃねぇか。全く300年も何やってたんだよ、コイツはよぉ』
『何を惚けてんのよヤンキー堕天使! あんたが自分に利のないことをやるわけがないでしょ』
『どうせスタロとアルモウスがまだ復活してないから、自分の修行相手がいないとかでしょ』
『そ、そんなことねぇよ、アポリドンがいるしよ』
『やっぱり図星みたいね。アポリドンの脳筋は力だけの怪力馬鹿、スピードはイマイチだし、技なんか考えながら戦える脳みそないじゃない。あんたの相手としちゃ役不足よね』
口悪いなあ、うちの嫁さん。
『でもまあいいわよ。こっちの条件をのむなら、うちの旦那を1年間、貸してあげるわよ』
『え、え? 何言ってんのヴィアさん。僕は嫌だよ!』
『あんたはちょっと黙っててくれる。安心しなさい、悪いようにはしないから』
悪いようにはしないって、修行はするんでしょ。それ自体が嫌なんだけど、言うと怒られそうだから言わないけど。
その後は、ルシフルと嫁さんとの間で話し合いが行われて、いくつかの取り決めがなされていった。
相変わらず、僕は終始蚊帳の外に置かれていました。
ーーーーーー(それから二週間後)ーーーーーー
「おら、シャンとしろやランスロード! テメエは今日から王様になるんだろうがよお」
「いや、王様じゃないから、あくまで代表だから」
う〜ん、嫁さんに説明はされたんだけどね、僕の家にルシフルがいる事実が未だに納得出来ないんだけど。
「ほら、あんた。サッサと着替えちゃってよ、迎賓館に行くんだから」
「トンコ、この人の着替えを手伝ってくれる?」
「はい、奥様」
トンコちゃんが、僕の衣装を持ってきてくれた。真っ黒な燕尾服だ。
今日、僕はヴァンレイン亜人国の建国を宣言する。
迎賓館とは、アズマ山の麓のオークの村に急造した建物だ。オークの村はヴァンレイン亜人国の首都アズマとなるので、建国を宣言する場として、とりあえず迎賓館を先行して建てたのである。
建設には、ドワーフ王国の協力で多数のドワーフ達を動員した。その者達は、現在も新首都アズマ街に滞在していて、街をぐるりと囲む城壁や都庁舎なとを建造してくれている。ゆくゆくは城も築城する予定で、築城予定地も既に決まっている。
代表官邸を造る予定はない。僕達の家がある洞窟を、そのまま官邸洞窟と呼ぶ事になった。
僕達家族は今迄通り、この官邸洞窟に住むこととなる。今迄と違うのは家族が一人増えるということだ。
そう、僕が人間の女の子を側室として嫁に迎えることとなってしまったのだ。
その新しい嫁さんが、先日、僕達の建国と同時に三国同盟を結ぶ予定のエフード王国の国王代理としてやってきたウェン公爵と共に輿入れしてきた。
どんな娘なんだろうと思っていたら、会ってびっくりのグィネさんだった。グィネさんは、ウェン公爵の娘ではなく、エフード王の養女としてやってきたのだ。
僕は凄く驚いたのだけど、ヴィアさんは「そうきたか!」と一言発しただけで、あまり驚きはしなかった。予想の範疇だったみたいだ。
そこからは僕の嫁さん達(ヴィアさんは今後は奥さんと呼んで、グィネさんを嫁さんと呼ぶ事にしました)の独壇場で、トントン拍子に話が進んでいく。
グィネさんが、僕達の国とエフード王国との繋がりを強調する為に、新しい国の名前に僕とエスタードの父親の名前であるヴァンレインを使った。新しい国の名はヴァンレイン亜人国である。
奥さんも嫁さんも王国を作ろうとしてたけど、僕は王様は嫌だったので、王制だけはやめてもらった。
ヴィアさんがルシフルに、僕達の国とエフード王国、更にドワーフ王国とも不可侵条約を結ばせた。そしてその事も建国宣言と同時に発表する。
同盟関係ではないが、諸外国に対して大魔王の国にも影響力を持っているとアピールする為だ。
グィネさんが、エフード王国やドワーフ王国との同盟を個別のものではなく、三国同盟とすることを両国王に認めさせた。三国とした方が、一国一国が監視や牽制の役割も持って、より強固な同盟関係になれると考えたようだ。
ヴィアさんが建国宣言の時の衣装を、エフード王に借りた王族服から燕尾服に変えた。燕尾服の方が吸血鬼であることを強調出来る為だ。
三国同盟でヴァンレイン亜人国が人間に敵対する国ではないとアピールする一方で、魔国としての力も有している事を強調する為にだ。
まあ、こんな感じでね。かろうじて王制だけは回避させてもらったけど、またしても僕は蚊帳の外でした。その分、マリンちゃんと遊べるからいいんだけどね。
あ、そうだ。マリンちゃんがグィネさんに直ぐに打ち解けてくれたのです。アレサンドの硬砂城で、一度会っていたのも良かったみたいだ。とりあえず、ホッとしました。
定刻となり、僕の建国宣言が始まります。
立会人は三名。
ドワーフ王国国王のユーロウ=ボス国王。
エフード王国国王代理のガラハ=ランス=ウェン、エフード王国公爵。
大魔王ルシフル。
建国宣言から、その後の三国同盟の締結。ルシフルとの不可侵条約の締結までを、魔法紙に詳細に書き残し、後に魔法証書に書き写して諸外国に配布されることとなるのだ。
「宣言。ランスロード=ヴァンレインは、ここ、アズマ山の麓を首都アズマとして、ヴァンレイン亜人国の建国を宣言します」
ランスロードが国の代表となりました。
これで、勇者アイザーのパーティーメンバーは全員が国待ちになりました。ランスロードだけ300年遅れだけどね。
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次回の投稿は29日の0時頃を予定しています。もう暫くの間は隔日更新になりますが、お付き合いください。
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連載中の[不幸続きで転生5回目・・・]です。
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互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。
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