21・ルシフルと闘うってもっと嫌だな
ルシフルの奴が急に僕と闘るって言いだした。
何でそうなんのさ、もう〜。
「何で闘うとかそういう事になんのさ?」
「いや、勘違いすんじゃね〜よ。別にテメエを殺そうってわけじゃねぇ。ただよ、今のテメエの素の力が見たくなっただけのことよ」
「だから、テメエも《借力》ってのは使うなよ。俺も《神への怒り》と《倍返し》は使わねぇからよ」
ルシフルのユニークスキル《神への怒り》は発動すると、半日間は堕天使族の力が3倍になる。
時間制限付きだが、率いる軍団ごと強くなり、使用後に身体に反動が来るといったデメリットもない。1週間に1度しか使えないという使用制限があるだけのトンデモスキルだ。
このスキルをルシフルは、他の堕天使達の承諾を得ることなく、独断で使用できるのだ。
そしてもう一つのルシフルのユニークスキル《倍返し》は、戦闘中の相手から受けたダメージを倍にして、自分の攻撃に上乗せできる。使用制限は1日に1度だけ。
更にルシフルはこの二つのユニークスキルを併用できるのだ。
併用した場合の《倍返し》の攻撃力は、相手か与えたダメージの2倍+通常のルシフルの攻撃力の3倍となる。その攻撃をカウンターで食らおうもんなら更に倍になり、倍返しどころの騒ぎじゃない。
倍率ドン、更に倍で、ば〜いのば〜のば〜い、である。
実際のところルシフルを倒すには、通常の3倍の強さのルシフルに1発の反撃も食らうことなく倒しきる事が必要なのだ。
300年前の僕にはそれが出来たのだが、当然、今の僕には《借力》を使っても無理である。
「いや、あの、ルシフルさん、それってどう考えても僕が死んじゃいますよ」
「だから、殺さねぇって」
『おい、ゾラ、聞こえてたら、ちょっと面貸せ』
『へい、ボス』
「何やってんのよ、ルシフルさん。あんまり面倒を起こさないでよ」
城からグシロンとゾラが出てきた。コイツらも復活してたのかよ。
「うっせ〜な、グシロン! テメエは呼んでねぇよ」
「まだ、ルシフルさんに暴れられると困っちゃうのよ。あら、アポリドンさんもお久しぶりね」
「ああ、いたのかグシロン! 相変わらずムカつく面だな」
「貴方の方こそ、相変わらず脳筋みたいね」
「ごちゃごちゃうっせ〜んだよ、お前ら。ランスロード、ゾラは知ってるよな?」
「ああ、知ってるよ」
「なら話しは早い、俺はゾラにお前を殺さない事とユニークスキルを使わない事を誓うからよ、テメエも誓えや」
【契約の堕天使】ゾラ。ゾラに誓いを立てると、その時点で心臓を握られる。誓いを破れば心臓は握り潰されるのだ。その誓いはゾラ本人をも縛り、意図に反する事は出来ない。
確かにゾラに誓えば、僕が殺される事はなくなるけど、嫌だなぁ。
ついでに、もう一人は《知の堕天使》グシロン。昔、モルドに暗殺された、ルシフルの幹部である。
「どうだよランスロード、やんのか、やんねぇのかはっきりしろや!」
「やんねぇ」
「っざけんな、こら、いいからサッサと誓えや」
どっちかはっきりしろって言ったのは、あんたでしょうが。まあ、死ぬことはないんだから、しょうがないかな。
僕とルシフルは【契約の堕天使】ゾラに、ユニークスキルを使わない事と殺さない事をお互いに誓った。
「おし、ゾラ、テメエが証人だからな」
「へい、ルシフル様。確かに手前が誓いの証人となりやす」
「んじゃ始めるぜ、ランスロード!」
「しょうがないね、僕も頑張るとするよ」
僕達は、互いに距離を置いて向かい合い構えた。
ザシュ、ドゴッ
くそっ、いきなりかよ。
ルシフルが踏み込んできて、鳩尾に右拳を放ってきた。
僕は辛うじて左腕でガードしたが、正直に言えば、偶然左腕がそこにあっただけで反応したわけじゃない。
シュッ、ザシュ、ゴン
ルシフルは右ボディーから間髪入れずに、左拳を僕の顔面に放つ。僕は距離をとろうと後ろに下がったが、それがバックステップの形になって、左拳を避けたが、ルシフルはそこから更に踏み込んで加速し、右拳で顔面を打ち抜いた。
ダゴン、ドゴオオン
「ぐほぉあぁぉ」
ルシフルの打ち抜いた右拳が上に跳ね上がるのが確認したが、反応までは出来なかった。そのまま振り下ろされる右拳に為すすべなく殴り落とされる。その後の記憶はないが、気づけばルシフルの左膝が僕の腹筋にめり込んでいた。
バシュッ
「ブラックアロー!」
ルシフルの5対10枚の黒い羽が広がり、大空へと舞い上がる。そこから10本の黒い矢が僕に向かって降り注ぐ。
殺さないって言っただろうが、この野郎。それはシャレにならんだろうが。
ドスドスドスドスドスドス・・・
ザシャアァァァ
僕は滑り込むように横っ飛びしてギリギリで回避した。
黒い矢は地面に突き刺さり、僕は地面を転げまわった。
「全然駄目じゃねぇかよ、ランスロード。これならテメエんとこに攻め込んでもいいかもなぁ。確か家族がいるんだよな? そいつらも全員殺してやろうか?」
あ、何言ったコイツ。もしかしたらマリンちゃんを殺すとか抜かしたのか?
この一瞬のこともよく覚えてないけど、僕はジャンプしてルシフルの元に肉薄していた、そこからはとにかく殴った。
シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ、シュッ・・・・・・
・・・・・・
マジかよ、この野郎!
僕はとにかく殴り続けた、途中から蹴りも交えて60発以上。ルシフルはその全てを躱してみせた。
「まあ、こんなもんかな」
ドゴッドガコオオォォン
僕はルシフルの蹴り一発で上空から叩き落とされ、地面に叩きつけられた。
ルシフルも復活したばかりのはずなのだが、強い、強すぎる。
重力魔法も身体強化魔法も多少は使えたが、殆ど間に合っていなかった。全く勝てる気がしない。
「おい、ランスロード。大体わかったから、やめにすんべや」
ルシフルのその言葉に、ホッとしたし、助かったと思った。だが、この後、ルシフルの奴がとんでもない事を言い出した。
「お前さぁ、一年くらいここで俺様と修行しろや」
へっ、普通に嫌なんですけど。何を言い出してんのコイツは。
大魔王ルシフル強し。
ランスロードが手も足も出ませんでした。
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連載中の[不幸続きで転生5回目・・・]です。
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互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。
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