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17・この娘、本物ね

 邪魔な男達は片付けた。


 同盟の話しを始めましょうか!

「それじゃあ座って話しましょうか、グィネさん」


「そうですわね、その前に少し失礼致します」


 グィネはそう言うと、テーブルの上の鈴を一つ鳴らした。「リーーーン」と綺麗な鈴の音を聞き、現れたメイドに対してお茶の用意を頼む。


 既に用意はしてあったのだろう、即座にティーセットを台車に載せて持ってきたメイドからそれを受け取り、グィネ自らあたしの横に立って紅茶を入れた。


 流れる様な美しい動作、見事な手際の良さ、本当に落ち着いている。


 この若さで大したものね、本物だわ、この娘。

 あたしが感心させられるとわね。


 グィネは一連の動きを終えて、あたしの向かいの席に静かに腰を降ろした。


「同盟の話しの前に、ヴィア様にいくつかわたくしの質問に答えていただきたいのですが?」


「いいわよ、何でも聞いて」


「わたくしが幼い頃から伝え聞いていた、伝説について何ですが・・・・・・」


 グィネは300年前の事を分かりやすく簡潔に話し始めた。


「わたくしが聞いていた伝説はこうだったのですが、事実と違うところはありましたか?」


「いえ、概ね間違いではないわ。まあ、モルドが話した事でしょうからね。彼はあのクソ勇者とは違うから」


「ではスペルレイン女王国とドルツラルド王国が、モルド様を追ってきた時に、ルフェイとアイザーはいたのですか?」


「ええ、いたわよ」


「何故その時に、二人を殺さなかったのですか?」


 本当にいい度胸してるわね、この娘。

 殺すべきだったと本気で思っている眼をしてる。


「先ず言っておくと、2国の軍が消えたというのは間違いよ。あの時に2国の軍はろくに戦いすらしていないわ」

「逃げたのよ、一目散にね。あたしの姿を見つけた瞬間の事だったわ」


「逃げた? 戦いもせずに?」


「ええ、あの二人は怖かったのよ、ランスロードの事がね」


「あの頃のランスロードは、戦いが本当に嫌になっていて、あの時も戦場に出てくる事すらしなかった。あの戦場にランスロードはいなかったのよ」


「ランスロードがいないことはアイツらも認識してたわ」「それでも恐れた。ランスロードの強さを誰よりも知っていたのはあの二人だからね。あたしの姿を見ただけでランスロードの影を感じ、逃げ出す程に怖かったのよ」


「実際に戦っていたら、あたしは危ないところだったわ。あたしは一人だったのだし、まだランスロードに与えた力も回復してはいなかった。あたしの力が回復するには100年もかかったのよ」


「そうですか、逃げたのですか、ザマアミロですね」


 グィネは楽しそうに小さく笑った。


「ええ、本当にザマアミロよ」


 あたしもつられて笑ってしまった。



「それでは同盟の話しに移らせていただきます」


「そうね、本題に入りましょう」


 さて、この娘はどうでてくるのかな?

 あたしはこの娘の話が楽しみになってきていた。


「まず確認しておきますが、ヴィア様は人間の国と敵対するつもりはありますか」


「それは相手次第ね、ただ、こちらから進んで敵対するつもりはないから安心して良いわよ」


「素晴らしいお答えをありがとうございます」

「それでしたらわたくしは。この同盟をでき得る限りの強固なものにするべきと考えます。その為にヴィア様には、ランスロード様を、王とした国を興していただきたいのです」


「国を、何故?」


「独立国家の国王が結ぶ同盟です。その相手がただの魔物の集団では、相互の不可侵条約以上の物は結べません。その程度の条約では弱いと考えます」


「まあそうでしょうね。・・・まあいいでしょう、貴女には話しておいた方が良いかも知れませんね」


「何をですか?」


「北のドワーフ王国からも条約締結の話しはきているのよ、あの国は何度か助けてもいるしね」

「ただね、貴女と同じで打診があったのは相互不可侵条約よ、でもね、あたしが望むのは、軍事協定と経済協力を含めた同盟国関係を築く事よ」

「その為にあたしは、建国の準備を始めているわ」


「その事はランスロード様は?」


「ご存知ないわよ、あの人はのんびりしたいだけですからね」


 あたしは苦笑いしてしまった。


「それで、あたし達が建国したとして、貴女はどんなものを用意してくれるのかしら?」


「ヴィア様、人間の国同士で結ぶ関係の中で一番強固なものって何だと思いますか?」


「人間の国同士ねぇ、それは貴女、え、いや、貴女まさか」


「ええ、婚姻関係を結ぶ事ですよ」


 この娘、本当にいい度胸してるわね、嫁を相手に。


「勿論、第1夫人はヴィア様です。一人、側室を認めて欲しいだけですわ。当然ですが国王が迎える側室ですから、こちらも国王の娘をご用意しますわ」


「その事をドレード王は?」


「ご承知してはいませんわね、話してませんし、でも手は打ってありますわ」


 グィネも苦笑いする、自国の王族相手にこの娘は。

 この娘になら乗っかってもいいかもね。


「いいでしょう、側室の事は認めましょう。ただ一つだけ条件を出してもいいかしら?」


「伺いますわ」


「あたし達が建国を宣言する際に、エフード王国の連名という形での承認を頂きたいわ」


「それならエフード王国にドワーフ王国も加えた連名の方が良いかと思います。その様に調整していただいて構いません」


「婚姻の話しもだけど、断言してしまったいいのかしら?」


「ええ、ドレード王には絶対に認めさせますし、署名もさせますので」


 この娘ならそれくらいやるわね。公爵の娘にしとくのがもったいないわ。


「交渉成立ね」


「はい、ヴィア様のお陰で良い交渉が出来ましたわ」



 あたしはこの娘が気に入った。あたしとグィネは、交渉後の談笑が止まらなかった。


!!


「ん、どうかなさいましたか、ヴィア様?」


「うちの旦那は極度の親馬鹿なのよ、その馬鹿がどうやら娘を連れてきたみたいね、気配を感じるわ」


「城外までお連れしていたのですか?」


「いえね、あの馬鹿はアザマ山まで一瞬で移動出来るのよ。その能力で連れてきたわね」


「そ、それは凄い能力ですね、さすがはランスロード様」


「無駄に優秀なのよ。ちょっと行ってくるわね。ついでに娘を連れてくるから会ってあげて、可愛い娘なのよ」


「それは楽しみです。是非お連れください、ヴィア様」


 さて、考えなしのあの馬鹿にはお説教が必要ね。

 



 賢い女性二人の心理戦って怖いですね。

 下手なバトルよりよっぽど書いてて疲れます。



 【お詫び】

 リアルの仕事が忙しく、しばらくの間は一日置きの投稿となります。なるべく早く毎日投稿に戻したいのですが、しばらくの間はご勘弁下さい。








 【作者からのお願いです】


 読者様からの反応を何よりの励みとしています。

 ポイント評価、ブクマ登録、感想、レビュー、誤字報告を頂けますと、創作意欲のより一層の向上に繋がります。

 お手数だとは思いますが、何卒宜しくお願いします。




 連載中の[不幸続きで転生5回目・・・]です。

 この小説とリンクする作品となります。

 ↓

 https://ncode.syosetu.com/n7763fx/



 互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。

 こちらもよろしくお願いします。

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