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13・アポリドンって本当に嫌だな

 参ったなぁ、アポリドンの奴、闘る気満々だよ。


 痛いの嫌だな〜。勘弁してくれよ〜。

 ヴィアが爪を伸ばし、自ら右の手首を切り裂く。

 流れ出した血液を止める事なく、右手を天に向かって振り上げる。

 挙げた右手で円を描く様に振り回すと、血液もまた円を描いて飛び散っていく。

 飛び散った血液は、そのまま渦を巻く様に上空に登っていった。


 ヴィアは右手を降ろし、入れ替える様に左手を挙げ、手の平を天に向ける。

 ヴィアは体内の魔素を魔力に変換する事なく、魔素のまま左の手の平から放出する。

 放出された魔素は血液を追う様に登っていき、血液と魔素は上空で混ざり合う。


 混ざり合った血液と魔素は黒い膜へと変質し、黒い半円形のドームとなって辺りを覆った。


 結界魔法とスキル《空間結界》を混ぜ合わせた、ヴィアのオリジナル結界術、[閉ざされた世界]クローズドワールドである。

 半径2キロにも及ぶ巨大なドームの中は、光を通さない完全な闇の世界と化していた。


「お前はたしか、ディブロの奴にくっ付いてた吸血鬼だろ。なんだ、お前も闘るのか?」


「勘違いしないで、あんたと闘うのはうちの旦那だけよ」


 アポリドンは驚いた顔で目を見開いた。

 そんなに驚くほどの事かな?


「えっ、おい、なんだよランスロード。お前こいつと一緒になったの?」


「ああ、美人だろ僕の嫁さん。羨ましい?」


「馬鹿言えよ。魔界の奴なんかと頼まれたって結婚なんかしねえよ」


「えっ、そういうもんなの?」


「そうね、元々は、堕天使は冥界の住人。私達吸血鬼やディブロ様のような悪魔は魔界の住人よ」

「冥界と魔界は隣合っていて、どちらも冥界神バルデス様の管理下だけど、元々仲は悪いのよ」

「私も頼まれても堕天使はお断りよ」


「へ~、そうなんだ。知らなかった」


 魔界と冥界なんておんなじだと思ってたよ。


「まあ、嫁さんには他に被害がいかないように結界張ってもらっただけで、闘うのは僕だけだよ」


「結界ねぇ、ご苦労なこったなあ」

「まあ、いいや。始めようぜ」


「しょうがないなあ、嫌だけど、いつでもいいよ」


 アポリドンが構える。

 呼応するように僕も構えをとって《思考加速》する。


 お互いの闘気がぶつかり、大気が震える。

 僕の仲間達も身動き一つせずに、見守っている、

 静寂な時間が流れる。その静寂を破ったのは同時だった。


ダンッ、ダシュッ


 互いに踏み込み右拳を振るう、互いの右腕が交差して接触する。


ブゥワン、


「痛っ!」


 押し勝ったのはアポリドン。絡んだ右腕を強引に振り切る。

 体制を崩した僕に向かって、アポリドンが右膝を回し蹴りのようにして蹴り込んでくる。

 右腕がまだ絡んだままの接近状態で、回避は不可能。左腕を畳んで膝の軌道にねじ込む。


メギイィィ


「痛ってえぇっ!」


 ガードした腕が軋む、かろうじて重力の向きを膝蹴りと同じ方向に変えることでダメージの軽減が出来たけど、間に合わなければ今ので腕の骨が砕かれてた。


 膝蹴りの衝撃で飛ばされたが、絡んだ右腕を振りほどく事も出来た。距離が開いたので体制を整えないと。


ズシャ


「マジかよ!」


 速い! 僕が体制を整えている間に、もう踏み込まれていて懐に潜り込まれた。

 僕の身体は180センチ。その懐に身体250センチのアポリドンが潜り込んだのだ。


 アポリドンの大きな体が極限まで丸く、小さく、低くなり、下から迫る。畳んだ右腕を振り上げ、上に向かって右拳が襲ってくる、軌道から見て狙いは僕のお腹だ。


 ガード、ダメ、間に合わない! 腹筋の身体強化、それと重力の向きを合わせて。


ズドオオン


「げはああぁっ」


 このやろう! 左手で僕の背中を押さえやがった! 僕のお腹に穴空いてないよな?


 今度は頭突きかよ! 速いって! ちょっと待てよ! 間に合わない。受けるしかない。

 身体強化、重力操作、ああ、もう、全部だ!

 とにかく耐えろ!


ゴオォン、ベゴン


 い、意識は繋ぎ止めた。どこだここ? 

 ああ、地面か。倒れてんだ僕。

 何してたんだっけか?


「何だよ、随分と弱っちくなっちまってんなぁ、ランスロードよぉ」


 ああ、そうだ。アポリドンと闘ってたんだよな。


「始めたばっかりなんだから、ゆっくり闘ろうよ」


 いっぱい練習したから《借力》なしでも少しはやれると思ってたんだけどな。


「別にお前はゆっくり闘っててもいいけどよ、そんな事だと終わっちゃうぜ、ランスロード」


『ギガース達とオーガ達、それにブーザン、ゾーンさん、トラさんもちょっと借りるよ』


「終わっちゃうのは困るなあ、まあ、なんとか頑張ってみるよ」


『『『存分にお使い下さい』』』


「おう、頑張って楽しませてくれよな!」


 アポリドンが突っ込んでくる。

 僕も体制を整えて迎え打つ。


ビュン、ドン、ザシャ、ドカドカ、シュッ

ガン、ザシュ、ドン、ドン、ヒュン・・・


 マジか! こいつ!


ブワン、ガン、ドン、メキ、ビュン・・・


「ガハハハ、ちょっとはマシになったな」


ドカカカ、ズシャ、バン、ダン、バシャ・・・


 ギガースとオーガの1000体とブーザン、トラさん、ゾーンさんの7割も借りてんだぞ


バン、バン、バン、ザシュ、ドカン・・・


「いいぜぇ、やっぱり強ぇなランスロード!」


ダン、ズダン、ドシン、ヒュン、ガシャ・・・


 こんだけ借りてて互角かよ! 化け物だな、こいつ!


 ここでまた距離が開いた。このままだと互角。いや、最初に食らった分だけ僕が不利か。


「礼を言うぜランスロード、復活してすぐにこんだけの闘り合いが出来るとは思ってなかったぜ」


「礼を言うのは僕も同じだよ、このレベルの全力戦闘で昔の勘が戻ってきたよ」


「そりゃ良かったな。だが俺もルシフル様を待たせるわけにいかねぇ。次で決めさせてもらうぜ」


「奇遇だね。僕も次で終わりにするつもりだったんだ」


「ガハハハ、そりゃ良かった。それじゃあいくぜ!」


 アポリドンが更に魔力を練り上げる。高まる闘気に大気が震え出す。

 まだ、ここまで上がるのか、本当に凄えよアポリドン!


 僕の方も準備しないとな。

 ここにいるみんなからこれ以上借りるとみんな疲れて動けなくなるな。


『オーグス、聞こえる。村にいるマリンちゃん以外の全員から1割づつ借りるよ』


『準備は出来てますよ、いつでもどうぞ』


『んじゃいくよ』


 僕の身体に力が集まってくる。

 おお~、凄いな、これ。

 これだと思考が間に合わないし、身体も持たないかも。


 僕は《思考加速》を《思考加速・EX》に身体強化魔法のLvを2から6に上げる。最近の練習で魔法レベルも大分上がった。

 今回の戦闘中にも上がったしね。

 重力魔法は、まあ2のままでいいや。


「じゃあいくよ、アポリドン」


「おう、来いやぁ!」


 僕は思い切り踏み込む。自分で言うのもなんだけど速い! アポリドンは全く反応出来てないなぁ。これなら大振りでいいかな。

 僕は石を遠くにでも投げるかの様に思い切り右腕を振りかぶる。

 そして力任せに右拳でアポリドンの顔面を殴りつける。


ズドゴオオォォォォォォンンーー!


 マトモにアポリドンの顔面を打った僕の拳は、彼の意識を一撃で断ち切ることに成功した。ちょっと拳が痛いなぁ。



 ふう疲れた。


 僕は当分の間、仕事はしないと誓いました。


 アポリドン強かったですね。


 書いてみたら、作者の想定よりも強かったです。







 【作者からのお願いです】


 読者様からの反応を何よりの励みとしています。

 ポイント評価、ブクマ登録、感想、レビュー、誤字報告を頂けますと、創作意欲のより一層の向上に繋がります。

 お手数だとは思いますが、何卒宜しくお願いします。




 連載中の[不幸続きで転生5回目・・・]です。

 この小説とリンクする作品となります。

 ↓

 https://ncode.syosetu.com/n7763fx/



 互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。

 こちらもよろしくお願いします。

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