12・脳筋って短絡的で嫌だな
アポリドンのやつは、まだ寝ぼけているらしいです。
そのまま寝ぼけてていいんだけどな。
んでも、起きるまでに準備すると嫁さんに言われちゃったので、忙しいのは変わりないのです。
のんびりしたいなぁ。
「嫌だよ~。やりたくないよ~」
「いつまで泣き言、言ってんのよ。いい加減に覚悟しなさい」
「だってさ~ヴィアさん。アポリドンだよ。絶対強いよ。僕は痛いの嫌なんだよ~」
「散々話し合って決めたことでしょ、今更役割は変えないわよ」
「ほら、シャンとしなさい!」
バシンッ
「痛いよ、ヴィアさん」
ヴィアさんが僕の背中を思い切り叩いた。
厳しいなあ、僕の嫁さんは。
この1カ月間はとても忙しかった。疲れた。面倒くさくて大変だった。
最終的に、新しく仲間になった魔物の数は3万体を超えていた。その全ての魔物達に、僕と嫁さんで名付けを行なった。
3万もの名前を考えるのは大変だ。
僕は最初、ギガースなら、ギガイチ、ギガ二、ギガサン・・・、オーガならオガイチ、オガ二・・・って付けていこうとしていたのだが「それじゃあ、まものさんたちがかわいそう」とマリンちゃんに怒られてしまった。
マリンちゃん優しい。本当に優しい子。キングオブザ優しい子だ。優しい子オブザイアーを贈る事に決定した。
それでマリンちゃんとトンコちゃんにも名前を考えてもらった。ついでにオーグスとブーザンにも考えさせて、僕と嫁さんは付ける事に専念させてもらった。
マリンちゃんは一所懸命に名前を考えていた。マリンちゃん健気。健気の中の健気。ベスト健気で賞を獲得した。マリンちゃん2冠だ。
マリンちゃんの考えた名前は可愛いかった
「このおにさんはねえ、ツノサン。こっちのきょじんさんはぁ、う〜んと、ダイチャン」って感じだ。
マリンちゃんネーミングが可愛い。可愛い過ぎて可愛い過ぎる。世界ネーミングセンスが可愛い子協会の終身名誉会長に就任した。ついにマリンちゃんが3冠を達成した。
そんな感じで名付けをしていったのだが、魔物達は今も集まり続けている。
キリがないので、後々には庇護する約束をして、一旦打ち切らせてもらった。
アザマ山の麓の村も街へと発展させる事に決まった。丁度そこに、武器のメンテナンスを頼んでいたドワーフのゴリさんがやって来た。
ゴリさんとも相談してアルス山脈の北側にあるドワーフの国から職人の一団を派遣してもらった。
そのドワーフ職人団との打ち合わせも大変だった。工事の概要と進め方。材料費や人件費の支払い方法などなど。
お金については嫁さんのヘソクリで賄う事になった。319年も生きてるのに僕にはお金がなかった。引きこもってたから。
持つべきはしっかり者の姉さん女房だと再確認した出来事だった。
これからの広大な森の管理方法についても考えなければならなかったし、やるべき事が後を絶たなかった。
正直、1カ月では全然足りなかった。そして僕は働き過ぎた。疲れた。もう動きたくない。
しかしアポリドンの復活は待ってくれなかった。正直待って欲しかった。ケチケチしないでもう少し待ってくれてもいいと思った。
まあでもしょうがないので、討伐隊を組んで砂漠地帯に向かっている。
討伐隊といっても戦うのは僕一人だけと決まっている。
嫁さんの「あんたはまだまだ戦闘不足なんだから、あんたがやんなさい」の鶴の一言で、僕がやる事に決定してしまった。
今回の討伐隊のメンバーと役割は以下の通りだ。
先ずは討伐の実行を任されている僕。本当は嫌だけど。
次に結界担当の僕のお嫁さん、ヴィアさんだ。砂漠地帯以外へ被害を及ばせない役割を担っている。
そして、嫁さんの補佐兼《借力》要員のトンコちゃんと、僕の補佐兼《借力》要員のブーザン。
最後に、後処理やその他諸々を臨機応変に処理する為に、部隊の形式をとっているゾーンさん率いるギガース隊500体とトラさん率いるオーガ隊500体だ。
僕の戦闘中は《借力》要員になってもらう事になっている。
僕のスキル《借力》は協力を承諾している者達から、力を借りる能力である。
《絆の協和》で繋がっていれば、たとえ離れた場所にいる相手であっても、力を借りる事は出来る。
つまり、魔物の街にいる3万体の魔物達からも借りる事は出来るわけだ。
だけど、借りれる力の量は距離によって制限を受ける。近くにいる相手の方がより多くの力を借りられるのだ。
まあ、正直言って今回の討伐は全員を街に残して、僕と嫁の二人だけでも充分だと思う。
今回、ゾロゾロと1000体以上でやってきたのは、なんか不測の事態でも起こったら二人じゃ面倒くさいじゃん。って事なんだけどね。
砂漠地帯の真ん中に、大きな岩が重なり合って岩山となっている場所がある。あれが嫁さんの言っていた岩山だろう。
嫌だな~、着いちゃったよ。
今からでも帰っちゃ駄目かなぁ。
「ブーザン、ちょっと見てきてよ」
「嫌ですよ。大魔王の幹部なんでしょ」
「俺じゃあ勝てないですって」
「ほら、早く行きなさい!」
バシンッ
痛って~。厳しいなあ、僕の嫁さん。
僕は大きな岩の隙間から中に入る。
岩と岩の間を縫うように進んで行くと、それは居た。黒い靄のようなものの中で、3対6枚の黒い羽根に包まれ丸くなっている。
あれ、まだ寝てんじゃないの?
コンコン
「お~い、アポリドンさ~ん。起きてます?」
軽く羽根をノックしてみるが、反応はない。
コンコン
「NH○ですけど、受信料の支払いをお願いしま~す」
「・・・・・・」
留守みたいですね。留守じゃあ仕方ないですよね。
「また来ま~す」
在宅中にまた来ようね。ってかN○Kってなんだ? ぶっとばすのか?
ブワサアァァッ
あれ? ドア、もとい羽根開いちゃった。
ガシッ
立ち上がっちゃったね。在宅してたんだ。
しかし、相変わらずデカイなぁ、コイツ。
アポリドンの身長は250センチもある。その長身で羽根まで広げるもんだから、やたらとデカイ。
こんな狭い岩の隙間でよく羽根まで広げたなぁ、コイツ。
「あっ、ごめんね、起きちゃった?」
「ふわあぁぁっ、うん、おお、久しぶりだなぁランスロード」
「ああ、うん、久しぶり。起きたばかりで悪いんだけどさ。穏便にルシフルのとこまで行く気ある?」
「ん、ルシフル様の気配は・・・。そうか、西の大陸にいらっしゃるのか」
「無理だな。途中にある人間の街は潰して行くぞ」
「そんな事言わないでさぁ、穏便に行こうよ」
「だから無理だって。俺は堕天使・んっ?」
「何?」
「お前、人間じゃないじゃないか。だったら人間の街なんてどうでもいいだろうが」
「いやぁさ、その街ってモルドが作った街なんだよね」
「モルドってあれか、罠とか全く引っかかんなかったアイツか?」
「そうそれ、そのモルド」
「まあでも関係ねえな。お前が止めるってんなら闘り合うだけだ」
嫌だな~、相変わらず脳筋じゃんか、こいつ。
「どうすんだ、闘るのか? 闘らないのか?」
ゴキリ、ゴキリ
アポリドンが自分の厚い胸板の前で指を鳴らす。その度に腕と肩の筋肉が隆起する。
凄え身体してんなぁ【力の堕天使】の異名は伊達じゃねぇなあ。
まあ、しょ~がないかな、嫌だけど。
「わかったよ、やる、闘りますよ」
「ガハハハ、やっぱそうだよな、そういう方が分かりやすくて好きだぜ、俺は」
アポリドンが全身に力を込める。
力に特化したアポリドンは、全身から噴き出す魔力も力へと変換していく。
極限まで高められた力が黒い光と共に爆発した。
ドゴオオオオォォォォン!
僕達を覆っていた岩山は全て吹き飛び、更地となっていた。
「広くなったな、さあ闘り合おうぜ!」
結局はこうなるんだよなぁ。
嫌だな~。
アポリドンが覚醒しちゃいましたね。
さて、どうなりますやら。
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連載中の[不幸続きで転生5回目・・・]です。
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互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。
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