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11・とある英雄の伝説

 私はウェン公爵家の令嬢グイネ=ウェン。

 私の生まれたエフード王国には、王族とウェン公爵家だけに伝えられる伝説がある。


 英雄ランスロードの伝説。


 その物語は、世界史として語り継がれている、勇者アイザーの伝説とは似て非なるものである。


 300年の昔に神に背いた四人の大魔王がいた。

 【反逆の勇者】メテス

 【破滅の堕天使】ルシフル

 【酷薄なる悪魔】ディブロ

 【黒怒竜】ニーズヘイル


 この四大魔王達は、勇者アイザーを中心としたパーティーに討伐されたと言われている。

 だが、私の知る王国の伝説では、実際に大魔王を倒したのは英雄ランスロードただ一人だけで、他のパーティーメンバーはそのサポートをしただけだという。

 勇者アイザーでさえも同様である。


 勇者アイザーのパーティーメンバーは四人。

 勇者アイザー

 武闘家ランスロード

 魔法使いルフェイ

 そしてこのエフード王国を建国した、探索者モルドの四人である。


 ラシリア大陸の最西にある大国、スベルレイン王国の第一皇女として生まれたルフェイ。

 ルフェイは神の啓示を受けて、大魔王の討伐を志す事になる。


 同じスベルレイン王国の貴族であった、勇者アイザーを討伐パーティーのリーダーとして迎え、同じく王国の暗部で働いていたモルドを斥候役においた。

 最後に当時、最強の冒険者と謳われた、ランスロードを仲間に引き入れた。


 神、ゼースに贈られた四つの聖武器を手に、彼女達は大魔王討伐に赴く。


 最初の戦い、【反逆の勇者】メテスとの戦いにおいて、ランスロードは驚愕の強さを発揮する。その圧倒的な力に魅せられたルフェイはランスロードに惹かれていった。

 共に17歳と若い二人はすぐに恋人同士となった。


 しかし、この最初の戦いの時から既に、ランスロードは大魔王の討伐に疑問を持っていたようだ。

 信じがたい事だが、メテスとランスロードは馬が合ったらしい。


 他の大魔王達に対しても、ランスロードはそれ程悪い印象を持っていなかった。


 だが、神の啓示があり、恋人ルフェイの願いだった事もあり、ランスロードは迷いながらも大魔王達を次々と討伐していく。


 メテス、ルシフルと討伐した勇者アイザーの一行は【酷薄なる悪魔】ディブロの討伐に向かった。

 そこでランスロードはディブロ軍の幹部【麗美なる吸血姫】ヴィアと出会う。


 ヴィアもまた敵であるランスロードの強さに惹かれ、恋心を抱いてしまう。


 ディブロに対しても強い敵意を持てなかったランスロード。

 そしてディブロもまたランスロードを好ましく思っていた。


 結局はランスロードによって討伐されたディブロだが、彼は自らが消える間際にヴィアに対してランスロードを見守るように厳命した。


 そしてこの時、ディブロはヴィアに対して、もう一つの驚くべき事を語っている。


 それは神、ゼースでさえも知らなかった事実。自分を含めた四大魔王の復活である。

 四大魔王は全員、冥界神バルデスの加護を授かっているというのだ。その加護により、死して後の300年後に復活する。

 

 その300年の間、ランスロードを見守るようにヴィアに命令したのだ。決して死なせてはならないと。


 敵であるランスロードに近づく手段を持たないヴィアはその後、【黒怒竜】ニーズヘイルの元に身を寄せて機会を待ったのである。


 最後の大魔王【黒怒竜】ニーズヘイルとの戦いに向かうこの頃、勇者のパーティーメンバー達は四大魔王討伐後の事についてよく話していた。


 野心家であった勇者アイザーは自分の国を建国すると公言していたし、スベルレイン王国国王からもその許しを受けていた。

 皇女ルフェイもまたスベルレイン王国の発展に貢献したいと言っていた。

 ルフェイはまた、自らが女王となって国を治めたいとも考えていたようである。


 庶民出身のランスロードはこの頃しきりと、のんびりしたい、もう戦いたくないと繰り返すようになっていた。

 どこかの田舎に家を建てて、のんびりとしたスローライフを送りたいと。


 アイザーやルフェイは、自分の力を生かそうとしないランスロードを否定していたが、彼を尊敬していたモルドだけは、その考えに賛同して協力を惜しまないと言ってくれた。


 そんな彼らが最後の大魔王【黒怒竜】ニーズヘイルの居城に足を踏み入れたのは、スベルレイン王国を出発して、僅か2年後の事だった。


 ランスロードとニーズヘイルの闘いは激闘だった。かろうじてニーズヘイルを倒したランスロードも傷つき、アイザーやルフェイの肩を借りて、やっと歩ける状態だった。


 帰り道の安全を確保するとの名目で、モルドを斥候に出したアイザーとルフェイは兼ねてから用意していた計画を実行した。

 ランスロードをヴィアに引き渡したのだ。


 この計画はヴィアから持ちかけられたものだったが、アイザーとルフェイはその後の自分達の地位を確固たるものにする為には、ランスロードの功績が邪魔だったのである。


 ランスロードを騙し、ニーズヘイルの居城に置き去りにしたアイザーとルフェイはモルドと合流した。

 そしてモルドには、ヴィアの待ち伏せに遭い、ランスロードは殺されたと嘘をついたのだ。


 吸血鬼には、一度だけ自分の眷属を作れる能力がある。自分の力を大きく減じる事になるが、自分の力を分け与えて、その者の種族を吸血鬼へと変えるのだ。

 【麗美なる吸血姫】ヴィアは、この能力でランスロードを吸血鬼へと変えたのである。


 スベルレイン王国に戻ったアイザー、ルフェイ、モルドの三人は英雄となった。

 勇者アイザーには王国の東部を与えられ、彼はそこに国を興した。

 しかしルフェイには、彼女が望んでいた地位は与えられなかった。


 ルフェイは、恋人を裏切ってまで望んだ地位を彼女に与えなかった王国を恨んだ。

 王国の目を盗み、人知れず国を脱した彼女は、アイザーの元に身を寄せる。


 アイザーとルフェイはその後に結婚したが、夫婦関係は僅か3年で破綻する。


 ルフェイはスベルレイン王国に戻されたが、その翌年には自らの父である国王を暗殺して王位を簒奪する。

 それが、その後に女王制に移制した現在のスベルレイン女王国である。


 話は戻って、大魔王討伐を終えて王国に戻ったモルドはランスロードの功績を一向に話そうとしないアイザーとルフェイに不満を持っていた。

 高い地位についたモルドではあったが、アイザーとルフェイへの不満は疑念へと変わっていった。


 ランスロードの功績の喧伝を始め、自分達の動向をも疑い始めたモルドが邪魔になったアイザーとルフェイはモルドの暗殺を試みる。

 自らも暗部出身のモルドはそれを察してスベルレイン王国を脱出する。


 彼はアルス山脈を越え、砂漠を南下してラシリア大陸の西南地に隠れ住んだ。

 その地に王国の土台となるアレサンド村を作り、その10年後にはエフード王国へと発展させた。


 モルドの所在を執拗に探していたアイザーとルフェイは、この時ばかりは協力して、2国の連合軍を組織し、エフード王国へと派遣する。

 だがこの連合軍はアルス山脈のアザマ山付近で突如として消えてしまう。


 これは定かではないのだが、この時にモルドとランスロードは再会したと言われている。

 そしてモルドはランスロードから、彼の弟を託されたというのだ。


 実際に、この8年前にスベルレイン王国から失踪していたランスロードの弟が突如としてエフード王国に現れているのだから、本当の事なのかもしれない。


 エフード王国の最初の王、モルド王はこのランスロードの弟に公爵の爵位を与えた。この公爵家こそが私の家。ウェン公爵家なのである。


 ランスロードの名は一般に語られる世界史にも登場する。だがそれは英雄としてではなく、大魔王との戦いで命を落とした一武闘家としてである。

 一般に英雄と言えばアイザーとルフェイ、そしてモルドを指して言う。


 そして今、新たな噂が囁かれている。


 吸血鬼となった英雄ランスロードは今も生きていて、アズマ山に魔物達を集めているという噂だ。


 私の名はグイネ=ウェン。


 ウェン公爵家に生まれた者として、この噂の真偽を確かめなくてはいけない。


 どこかで書かないとと思っていた、ランスロードの伝説です。

 ランスロードの過去話は、伝説という形で紹介する事は決まっていたのですが、どのタイミングで書くかは決めていませんでした。

 読者獲得の為に、2話目で書く事も考えましたが、僕としてはベストのタイミングだったと思っています。


 次回からはアポリドン復活編が本格的に始まります。

 ご期待下さい。







 【作者からのお願いです】


 読者様からの反応を何よりの励みとしています。

 ポイント評価、ブクマ登録、感想、レビュー、誤字報告を頂けますと、創作意欲のより一層の向上に繋がります。

 お手数だとは思いますが、何卒宜しくお願いします。




 連載中の[不幸続きで転生5回目・・・]です。

 この小説とリンクする作品となります。

 ↓

 https://ncode.syosetu.com/n7763fx/



 互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。

 こちらもよろしくお願いします。


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