10・堕天使は性格悪いし嫌だな
オーガさん達を全員ぶん殴ったから、これで帰れるかな。
早くマリンちゃんに会いたいな。
昨夜はこのオーガの村に一泊して、今日から全員でアザマ山の麓の村に向かう事になった。
昨夜もマリンちゃんと《思念伝達》で会話しました。
オーガさん達が仲間になった事を伝えたら「オーガさんって、おにさんだよね。ツノとかかっこよさそう。はやくあいたいな」だって。
う~んマリンちゃん、マジ天使!
僕はマリンちゃんに早く会いたいです。
『ちょっとあんた、今、何処に居るの?』
おっと、嫁さんからの《思念伝達》だ。
『オーガの村でこれから帰るところだよ』
『何か急用? ヴィアさん』
『ちょっと、あんただけ《亜空間移動》で先に帰ってきてくれない?』
『相談したい事があるのよ』
『何かあったの?』
『復活しちゃたのよ、砂漠地帯で。アポリドンの奴がさ』
『え~、ルシフルんとこの幹部じゃん』
あちゃ~、よりによってアポリドンかよ。
アイツめちゃくちゃ強いんだよなぁ。
嫌だなぁ、会いたくないな~。
☆
エフード王国。
ラシリア大陸西南域の小国群の中で、一番北にある王国である。
勇者パーティーの一員であった初代モルド王によって290年前に建国されたこの国は揺れていた。
王都ゲイロの王城内では、現国王ドレード王と国の重鎮であるウェン公爵の間で、話し合いが続けられていた。
「西の大陸で四大魔王の一体【破滅の堕天使】ルシフル大魔王が復活した事は間違いない」
「このタイミングで我が王国の北にある砂漠地帯でルシフル大魔王の幹部、アポリドンまでが復活した」
「アポリドンがルシフル大魔王の居る西の大陸を目指せば、我が王国の北部を通過する事になる」
「どうにかならんのか、公爵よ」
「私の方でも情報は集めています。アポリドンが通過するのは、他でもなく私の領内ですからね」
「その中に一つ気になる情報があります」
「なんじゃ、良い知らせなんじゃろうな?」
「良いと言えるかはどうか、砂漠地帯の北の森に住む魔物達が活発になっているらしいのです」
「魔物達が活発化している? 悪い知らせではないか!」
「いえ、その動きが妙なのです」
「妙とは?」
「以前より噂のあったアザマ山の麓の魔物の村。その村に続々と集結しているらしいのです」
「アザマ山の村とは、あの噂のある村の事か?」
「はい、もし噂が確かであれば、ドレード王の王族、私の公爵家とも無関係ではありません」
「アザマ山の魔物達と協力関係を結べる可能性が出てきます」
「よし、ウェン公よ、噂の真偽を探ってくれ。ワシの方でも出来得る限りの情報を集めてみよう」
「はい、私は急ぎ領都に戻りましょう。もし噂が真実であれば、私の方で動いても構いませんか?」
「もちろんじゃ。真実であれば我が王国にとって、建国の恩人と言って過言ではない」
「頼むぞウェン公爵よ、そちの手腕に期待しておる」
「はい、必ずや王のお力となりましょう。吉報をお待ちください」
ドレード王は、退出するウェン公爵へ期待の眼差しを向けている。
大魔王ルシフルにとって、我が王国は仇敵の一部じゃ。必ずや攻め寄せてくるじゃろう。
しかし、噂が真実ならば、ルシフルにとっては仇敵の全てと言っても過言ではない存在が現れる事になる。
我が王族に伝わる伝説が真実ならば、かの英雄は我が王国の力となってくれる筈。
頼むぞ、ウェン公爵。今のワシには公爵からの吉報を待つより他にないのじゃ!
☆
「ただいまマリンちゃん。良い子にしてた」
「おかえりパパ、マリンはいつもよい子だよ」
リアルマリンちゃんだあ!
やっぱり本物のマリンちゃんは良いなあ。
声だけのマリンちゃんも天使だったけど、やっぱり本物のマリンちゃんはマジ天使だあ!
「それであんたはいつまで娘を抱きしめてるつもりよ」
「ただいまヴィア。それで復活したアポリドンはどうしてる?」
「まだ寝ぼけてるみたいね。見てきたけど一月くらいは時間ありそうね」
「見てきたの? ついでに倒しちゃえば良かったのに」
「つついたら覚醒しちゃうわよ。あたしとアポリドンで暴れたら、あんたの親友が興した国が半壊しちゃうわ。それでもいいの?」
「ああ、砂漠地帯ってモルドんとこの近くだっけ」
「だから今のうちに準備するわよ。忙しくなるから覚悟しなさい」
うへ~、嫌だなぁ。
僕はのんびりと引き篭もり生活を送りたいだけなんだけどなあ。
森の争いの仲裁編も終わり、間に1話挟んで、12話からはアポリドン復活編が始まります。お楽しみに。
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お手数だとは思いますが、何卒宜しくお願いします。
連載中の[不幸続きで転生5回目・・・]です。
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互いに独立した自己完結する作品に仕上げる予定です。
こちらもよろしくお願いします。




