1・面倒くさいのは嫌だな
新連載です。
連載中の[転生5回目]と途中でリンクする話ですが、どちらも独立した自己完結する小説に仕上げる予定です。
[転生5回目]共々よろしくお願いします。
「ちょっと〜、そんな所で横にならないでよ」
「掃除の邪魔よ!」
俺はあいもかわらず嫁さんに邪険にされている。
「マリン、ちょっとパパをお外まで連れ出してくれる?」
「りょうか〜い。パパ行こ。ママがじゃまだって」
「えっ、外まで行かないと駄目なの?」
「面倒くさいよ」
「今日は大掃除するって言ってあったでしょう。いいから早く出てってよ」
「あ〜もう、わかったよ」
「トンコちゃんも一緒に行くか?」
「いいんですか、旦那様?」
「コラッ、トンコは駄目よ。あたしの手伝いをして貰うのだから」
「・・・はい、奥様。お手伝いいたします」
トンコちゃんは一瞬だけ残念そうな顔をしたが、すぐに嫁さんの手伝いを始めた。
家で誰が一番偉いのか、トンコちゃんはよく理解しているね。
魔族オークメイドのトンコちゃん。
ハイオークから進化した、ぽっちゃり体型でピンクの髪色が可愛いらしい癒し系だ。
美少女とまではいかないが、愛嬌のある顔は充分に可愛いらしい。
美少女と言えば、僕の愛娘のマリンちゃんだ。今年でちょうど50歳になる。
種族的に成長が遅いので、見た目は5歳だ。
可愛い盛り満点の僕の天使ちゃんだ。
それでさっきから文句ばかり言ってるのが僕の嫁さん。
見た目は女盛りの30前半、美人で有名な自慢の嫁さんも、もう480を超えている姉さん女房だ。名前はヴィアさん。
年の割にまだ孫はいない。長男は出て行っちゃったし。
「パパ〜、早く行こうよ〜」
天使ちゃんに促されて僕も重い腰をあげる。
「ふああ〜あっ、久しぶりに麓の村まで行ってくるか〜」
「わ〜い、行く行く〜」
天使ちゃんが両手を広げて僕に駆け寄る。
僕は脇の下に手を差し入れて天使ちゃんを抱き上げた。
「うわっ、眩しい!」
洞窟から出ると、眩ゆい日差しが僕に襲い掛かってきた。
思えば洞窟から出たのはいつ以来だろう。
僕はアザマ山の中腹にある、洞窟の中に家を建てて生活している。生活といってもまあ、ほとんど引き篭もりだ。
洞窟での生活は快適だ。とても広い洞窟で、温泉の沸いている場所もある。
食べ物は、洞窟の奥から湧いてくる魔物を嫁さんがぶん殴って狩ってくるし、麓の村からも届けに来てくれる。
この洞窟に引き篭もってそろそろ300年になる。
300年っていえば、アイツらが復活してくる頃だな。
どうしよ〜、面倒な事になったら嫌だな〜。
「しかし遠いな〜、村ってこんなに遠かったっけ?」
「もうすぐだよ、パパ。がんばって」
僕の胸で愛娘がガッツポーズをつくって応援してくれる。正に天使だ。
「ほら、パパ。村の入り口が見えてきたよ」
「あ〜、ようやく着いたね。パパ疲れちゃったよ」
「よくがんばったよパパ。えらい、えらい」
娘が僕の頭を撫でてくれている。
くう〜、癒される〜。
「ラ、ランスロード様、ランスロード様がわざわざこんなところまで来てくださったのですか」
村の門番を務めていたブーザンが驚いた表情を浮かべる。そりゃあ驚くよな。普段はこんなとこまで来ないしな。
「まあ、偶には顔でも出そうかと思ってね」
「いつも差し入れありがとうね、ブーザン」
魔族オークジェネラルのブーザン。
トンコの兄で、この村の村長の息子だ。
この村には800体ものオークが住んでいる。僕がこの村のオーク達を守護するようになってからも290年も経つのかあ。
本当に時の経つのは早いなあ。
「それでオーグスの奴は家にいる?」
「実は今、この辺りにジャバウォックが現れまして、親父は逆側の門に警戒に出てます」
「そっか、んじゃあそっちに行ってみるよ」
あ〜あ、また歩くのか。
僕らが村の中を横切ると、たくさんのオーク達が挨拶をしてくれる。僕らは人気ものだ。
いや、僕ではなくマリンちゃんの人気が凄いのだろう。
こんなに可愛い娘だからな、当然の反応だな。
「お〜、いたいた。お〜いオーグス」
「ラ、ランスロード様。すいません、今、手が離せなくて」
魔族オークキングのオーグス。この村の村長さんだ。僕とは古くからの付き合いで、トンコ、ブーザンのお父さんだ。
ガアアウゥゥン
鼓膜を裂くような咆哮が聞こえる。
どうやらジャバウォックと戦ってる最中に来ちゃったようだ。
ジャバウォックは知恵なき魔獣だけど、Sランクの巨大な魔物だ。
たくさんの村人を従えたオーグスといえども苦戦するだろうな。
嫌だな〜。面倒くさいな〜。
でもな〜、オーグスにはいつもお世話になってるし、ここで知らんぷりしたら嫁さんに怒られそうだしな〜。
しょうがない、やるか!
僕はマリンちゃんを、大きな岩の上に乗せる。
「マリンちゃんは、ちょっとここで座ってて」
「うん。パパがんばってね。あんなのやっつけちゃえ」
良し。ちょっとやる気出た。
愛娘の声援でやる気の出た僕は、オーグスに近づいていく。
それに気づいたジャバウォックは巨大な爪を振るって僕を攻撃してきた。
ガアアァ、ヴゥワォンッ
僕はそれを軽く躱してオーグスの肩を叩く。
「すいませんランスロード様、今すぐにコイツを始末しますんで」
「いいよ、オーグス。僕がやるから」
「いえ、ランスロード様の手を煩わせるなど・・・」
「気にすんなよ。オーグスにはいつもお世話になってるしな」
「んで、お前達の手は借りないが力は借りるぞ」
「どうぞ。いくらでもお好きなだけ」
「ありがとう、助かるよ」
僕はスキル《借力》を発動させる。
僕は300年前から、全く鍛えていない。
だけど昔は持ってなかったスキル《借力》が使えるようになった。
その代わりに、勇者パーティーにいた頃に使ってた《奪力》はもう使えないんだけどね。
スキル《借力》は、自分に協力してくれる者達の力を借り受ける事の出来るスキル。《奪力》程じゃないけど充分チートなスキルだ。
いちいち相手の了解をとらないと、借りられないのが、面倒っちゃ面倒なんだよな〜。
僕はオーグスとこの場にいる10体のハイオーク達からそれぞれ3割づつの力を借りた。
借りた力の全てを、両足と右の拳に集中させる。
両足に集中させた力で力強く踏み込み、一瞬で巨大なジャバウォックの懐に潜り込む。
「ガアアウアアウゥゥン」
うっさいなあ、コイツ。耳元で吠えるなよ。
僕は右拳を固めて、思い切りジャバウォックのお腹に叩きこんだ。
ガボウォンッ、ズドオオンッ
ジャバウォックは前のめりに倒れこんで動かなくなった。そのお腹には大穴が空いていた。
あ〜もう、しんどい。
「やった〜。パパすごい、つよい」
う〜ん、良い声だなぁ。将来は声まで美人さんになりそうだ。
僕の疲れなんかは、天使ちゃんの美声一発で吹き飛びました。
天使ちゃんが喜んでくれるなら、たまにはこういうのも良いのかな?
でもやっぱり嫌だな。面倒くさいし。
家でのんびり過ごすのが一番だよな。
第1話はいかがだったでしょうか。
本日中にもう1話投稿します。
ご覧になっていただければ光栄です。
では、これからもよろしくお願いします。
連載中の[不幸続きで転生5回目・・・]です。
この小説とリンクする作品となります。
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互いに独立した自己完結する作品ですが、こちらもよろしくお願いします。
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