私が何を思ったのか、小説を書き始めた経緯とこれから
私、葵しずくはど素人作家だ。
どこからどうみても、ど素人臭が拭えない残念な作家だ。
誤字も多いし、拙い文章しか書けないどうしようもない作家だ。
そんな私が、11月20日に二年以上連載投稿を続けていた「29」という小説を書き終えた。
こうしている今でも、信じられない気分だ。
昔から読書が趣味だったわけではない。
記憶を辿っていくと、確か小学2年生くらいだったと思うが、その時学校の宿題で出された読書感想文の為に、何故か『忠犬ハチ公』の文庫小説を買って、生まれて初めて最後まで読んだ。
私が最後まで読んだ本なんて、後にも先にもこの一冊だけだった。
10代はうぇい!うぇい!と馬鹿みたいに遊び回り、20代は車にハマって気が付いたらサーキットでコンマ1秒を削るのに情熱を傾け、30代で長女が生まれたのを機に、速ければなんでもありだった愛機に別れを告げたにも関わらず、ファミリーカーとしても、使えるサーキットマシンを某メーカーが出してしまった為、まさかにカムバック!
現役と違い、あくまでファミリーカーの枠を出ずに、どこまでいけるかをテーマに再びサーキットを走り回る。
40代に入り、2人の娘の学費がかかるようになってきて、延長していたサーキットライフをキッパリと引退。
ただ、何か夢中になれる趣味がないと、自分の中で心のバランスが取れずに良い父親が出来ない私は、何かないかと新たな趣味を探し始める。
なるべくお金がかからない趣味を探していた所、たまたまブラついていた書店で、一冊の文庫小説を手に取る。
これまでハチ公以外読んだ事がない私が、小説なんて笑わせる。
その時は本気でそう思った。
だが、気が付くと何故かその小説をレジに通している自分がいた。
まぁいいかと、小説を持ち帰った私はやはり読まずに本棚に仕舞う。
それから暫く経ったある日、何もする事がなく暇を持て余していた私は、以前買った小説の事を思い出して、本棚から取り出してとりあえず読んでみた。
始めの数十ページは漫画のように絵がない文字に眩暈を覚えたが、百ページを超えた辺りから、気が付けばこの小説に没頭していた。
二巻構成の小説だった為、翌日仕事帰りに上巻を買った書店に向かい下巻を買って小走りで帰宅する。
家族が寝静まるのを見計らって、早速下巻を読みふけって寝不足全開で出社する。
仕事中、今日は絶対帰ったら速攻で寝るぞ!と意気込んでいたはずなのに、続きを一気に読み切って翌朝激しく後悔する。
だが、物語は凄く面白かった。
それからは、マメに書店に向かい『絶対号泣』とか、『これを読めば世界が変わる』等の謳い文句に惹かれて、買っては読んでの生活を送っていたが、殆どがハズレだった……。
だが、懲りずにいつものように深夜にテレビをつけたまま読書をしていると、深夜アニメが始まった。
私はアニメはワン〇―スくらいしか見ていなかったのだが、読書の休憩がてらそのアニメを見ていると、ものの見事にハマる。
そのアニメのタイトルは、なろうでもお馴染みのリゼロだった。
それから毎週欠かさず観るようになり、アニメが最終回を迎えてどうしても続きが知りたくなった私は、人生初のラノベに手を出した。
この年でアニメにハマり、ラノベにまで手を出すなんて思いもしなかった。
早速一巻から、最新刊まで時間と体力が許す限り読み倒して、次巻が発売するのをひたすら待つ生活を送る。
なろうで読んでしまってもよかったのだが、ここまで来たら小説版を読む前に内容を知ってしまうのは嫌だからと、我慢を繰り返した。
とはいえ、最新刊が発売されるまで暇だ。
そこである事を思い出す。
私は、例えばプロ野球を見ていて楽しいと感じたら、自分でやったらもっと楽しいと思うタイプだ。
サーキットを走っていたのも、この流れからなのは言うまでもない。
だから、今回もその流れで小説を読むのが楽しいと思えたのだし、リゼロの新刊が出るまで暇だったからって理由で「29」を書き始めた。
この「なろう」で活動を始めたきっかけは様々だと思う。
私は初めから書く為に、アカウントを作ったのだ。
アカウントを作って二年以上経つのに、皆の作品をまともに読んだ事がないのはその為だ。
本当にど素人で、文章を書くお約束すら知らずに書き始めた為、本当に酷い文章だった事を連載が終盤に差し掛かるまで気が付かなかった。
ここで活躍中の作家さんに色々教えていただく事が出来て、それらのアドバイスを意識して書いていると、凄く良くなったと褒めてくれた。
物凄く嬉しくなったと同時に、書き方を変えるまでの文章が凄く恥ずかしくなった。
だから、初めから全部書き直したくなるのは、自然な流れだったと思う。
その事をコメント等に書き残すと、これまで色々と教えてくれていた作家さん達が、気持ちは分かるが一旦最後まで書き切った方がいいと言われた為、執筆を続行して最終話を迎える事が出来た。
勿論、達成感や充実感は味わえた。
最後まで読んでくれた方々から、お祝いの言葉も沢山貰った。
その事は素直に嬉しいし、これからの励みにもなった。
だが、やはり私の中ではこの作品は未完成なのである。
書き終えた今でも、それは変わらなかった。
新作の構想は漠然とした物は頭にあるが、新作はこれからじっくりと煮詰めていくとして、まずはやはり「29」のリメイクを色々な作者の力作を読んで勉強させてもらいながら、少しづつでも執筆を始めようと思う。
私の文章がマシになれば、この作品は良くなるはずだから。
なんて事を書き終えてから考えていると、スマホを閉じた長女が声をかけてきた。
実は今まで言わなかったのだが、この「29」を私の娘が読んでいる。
書斎なんて立派なスペースが存在しない我が家の執筆場所は、リビングに鎮座しているPCで書いている。
当然、場所が場所だけに隠しようもなかった。
私が小説なんて似合わない物を書き始めた事を知った娘は、驚くよりも先に笑い転げていたのを覚えている。
そこでこの件は終わったと思っていたのだが、連載を始めて一か月程経ったある日、娘が突然「私、佐竹が嫌いなんやけど……」とPCと睨めっこしている私にそう話してきたのだ。
確かに娘は私と違って、物語限定ではあるが本をよく読む娘ではあった。
だが、実の父親が趣味で書いている作品を読むなんて、考えた事もなかった私は本当に驚いた。
しかも第一声がクレームとか……。
その日から大変な日々が始まった。
一日一回は必ず更新を催促するようになったからだ。
それどころか、まだ更新していないストック分を狙いだす始末……。
しかし、それは断固と死守したせいで催促が加速した。
そんな日々から最終話を更新して、ようやく解放された。
最終話を読み終えた娘から面白かったと言われて、読み始めた頃から面白いと思ってくれたから、更新を催促されていたのだから、喜ぶところだったかもしれないな。
執筆を終えた今だからこそ、そう思えたのだが……。
「29」を読み終えてスマホを閉じた娘の一言が、そんな甘い考えを根底から破壊された。
「リメイクは年内に書き終えて、新作は年明けから連載してや」
……もうヤダ!! この子!!
お付き合い下さって、ありがとうございました。