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ボックスティッシュの時代
ところで。机の上のボックスティッシュを引き出してしまった後には、いつも世界の移ろいを感じる——。
1枚め、白骨化した龍を撫でるエルフ。2枚め、ペンギンを釣るペンギン。3枚め、鹿に傘を渡す優しい王さま。
薄っぺらな紙のスクリーンに光と陰で描かれるのは、幼少期に見ていたような絵柄のテレビアニメだ。
ありふれたティッシュだが、引き出すたびにチャンネルは変わる。でも、元に戻せない。2度と同じ景色を見ることは叶わない。
きっと、いつかは私が今いる場所も見えなくなってしまうのだろう。
セメント色の世界には、ボックスティッシュを何気なく引き出してしまう私が大勢いるから。
小さなことに見向きもしない私と同じ人間が。