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私の最も古い記憶
「のだ りなん」とシールの貼られたお椅子。
ちょこん、と私はお行儀よく座って、お友だちとテレビを見ているのです。
画面の中では、映画のセットのようなビルたちが、立ち並んでいます。俳優さんも女優さんもいません。音もありません。
しばらくして、ビルたちは震えながら、独りでに崩れていきました。ぺしゃん、と誰かの大きな足に踏みつぶされたようでした。
これはなんだろう、と不思議に思って、私は辺りを見渡しました。
お友だちは、おりこうさんです。じっと、静かにテレビを見つめたままでした。
先生が大事な話をする時の顔をして、何かを言いました。でも、私の頭にはちっとも、入ってこなかったのです。




