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そちら、更地につき
「向かって左手がお手洗い、右手がお風呂です」
背の高い不動産屋が、手際よく案内してくれた。
メゾネットタイプの角部屋で、一軒家のような佇まい。1人暮らしには贅沢だが、悪友と麻雀をするのにうってつけだ。
ほぼ、決まりか。したり顔で俺は、中を覗く。
ふと、便座の蓋の上に小さく寝そべる日本人形が、目に入った。
刹那。ぐりん、と女の首だけが向く。目が、合う。ざんばら髪を揺らし、真っ赤な唇の端を上げ、不気味に笑っている。
息を飲む。足が動かない。
地面がぐにゃりと揺れて、倒れこむ。
手がぬかるんだ土に触れた。恐る恐る俺は顔を上げる。
禿げかけた看板の『更地』の文字だけが、妙に、鮮明に映っていた。




