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赤い靴
「あーした、てんきになあれ!」
家の外から聞こえてきた声に、瞬時に意識を引き戻される。閑散とした部屋の中、私は窓ガラス越しに外を眺めていた。
赤い夕日の中、溌剌とした掛け声に押されて、小さな靴は空を舞う。赤々と照らされた靴。それは、頰を同じく朱で染めた子どもの顔を綻ばせた。純粋無垢なその表情を見ていると、私はつまらないな、と思う。
——明日の降水確率は90%。それでも、子どもたちは天気予報より茜色に染まった片っぽの小さな靴を信じるというのに。
明日は晴れてほしいと思った。晴れたなら、私は少し小さな靴を信じることができるから。
もし雨が降っても、明日は赤い靴を履いて街へ繰り出そう。心地まで陰鬱な冷雨に、侵蝕されないように。