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お題『ホワイトデー』
終わらない夏休みの宿題を。
いつまでも抱えたような気分のまま。
3月14日の足音を聞いた。
そうして。
自分の背後まで迫りくるという段になって初めて。
慌てふためいて、地面を蹴る。
——あぁ。うかうかしていたら、過ぎてしまう。
とにかく、今は彼女のもとへ。
必死に走りながら、僕は考える。
——あの子の、好きなものは何だっけ?
猫とピアノ。青い空にジェットコースター。
って、そうじゃない。
ピーチティに抹茶ケーキ。かき氷とグラタン。
彼女の幸せそうな声とともに。
一緒に過ごしてきた日々が、僕の中をかけめぐる。
「なつかしい味がおいしいね」
——また、余計なことを思い出したもんだ。
苦笑しながら進路変更。
4駅先のパン屋へと向かう。




