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お題『ハロウィン』
深い闇に耳を塞がれたかのような静けさだった。1年で最も魔力が強まる夜。大きな家の玄関前に、ジャック・オー・ランタンだけが怪しく灯っている。
傍らのアプローチ階段の影で、何かが反射して光っていた。おもむろに拾い上げて、目を凝らす。ガラスの靴だ。
「馬鹿にしないで!!」
思わず、私は怒鳴った。地面に激しく打ちつけると、美しい靴は無残にも割れてしまった。
背後からフッと魔女が現れる。病人のように、彼女は窶れてしまっていた。疲れた様子で私に告げる。
「0時の鐘が鳴れば、悪霊は消えます。その時までは……、命を守ることだけ考えましょう」
——王を弑逆された日。大切な光の源を失った私は、ただ闇夜の中を逃げ惑うのだった。




