10/49
お題『紅葉』
JRの駅で仲良く並んだ電車の中。ふいに視線を感じた。四角く区切られた隣り合う車窓の向こう側。まだ年端もいかない女の子が、窓ガラスに手をくっつけて私を見ている。
ご機嫌な女の子は愛想良く、ニコニコと笑っていた。いきなり右手を丸めたところで、じゃんけん大会が始まる。思わず、私も右手を出していた。
『じゃん・けん・ぽんっ!』
『じゃん・けん・ぽんっ!』
じゃんけんをしてもらえることが、嬉しくてたまらない様子の女の子。勝っても負けてもクシャッと笑っている。
それから。まるで思い出したかのように、ゆったりと電車が動いた。木の葉が色づき、秋の深まる景色を進む中。ひとひらの紅葉のような手は、いつまでも揺れ続けていた。




